テナントに依存しない、駅ビルの価値をどうつくる?

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第6号(2016年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

地域に根差す企業とクリエイターがパートナーとなり、新しい価値を生み出した事例を、手がけたクリエイターが自ら解説。今回は四国エリアの事例です。

2015年10月23日にグランドオープンした「瓦町FLAG」は、地上11階のビルに約80のテナントが入った駅直結の商業施設です。僕らPARKは、この駅ビルのブランディングをお手伝いすることになりました。このビルには過去に2度、大手百貨店が入っていましたが、いずれも撤退。そこで“三度目の正直” とばかり、同ビルのオーナーである高松琴平電気鉄道(ことでん)さんが、いよいよ自ら運営主体となって、駅ビルを盛り上げていこうというプロジェクトです。

開業前に実施した「走る駅ビルFLAG号」は、代表的な出店テナントとコラボレーションしたポップアップショップ。

瓦町は、東京で言えば渋谷のような、かつての若者の青春時代とともにあった街。でも、クルマ社会の浸透も背景に、周辺の商店街が少し元気をなくしてきているのが現状です。ことでんの真鍋康正社長も、「このビルの成功には周辺地域の未来がかかっている」と強くおっしゃっていましたから、ある意味で街の未来も背負って、ビルのあり方について考えなければと思いました。いかに街全体を賑わせていくのか、ビルを訪れた人たちが、どのように街へと出ていくのかを念頭において、ブランディングを考えたいと思ったのです。

商業施設としてのハードやテナントによってもたらされる価値ももちろんありますが、それとは別の部分で、地元の方々のなかに、新しい駅ビルに対する期待感を醸成したい-そう考え、「かわる、をはこぶ」をコンセプトに据えました。ここに来るたびに、新しい発見がある。地元地域が、人々の暮らしがより良いものに変わり続けていく、先頭に立ってその変化を起こしていく。「旗印」になりたいとの思いから、施設名称に「FLAG(旗)」を冠し、VI も旗をモチーフにしたものに統一しました。赤い旗を3つ並べることで、ずっと動き続けている、変化し続けている様子を表現しています。新しい駅ビルの心意気をストレートに伝えるビジュアルです。

「乗っかりたくなる」プロジェクト

商業施設のコミュニケーションというと、一方通行のテーマを打ち出し、強制的に「巻き込もう」とするのが一般的だと思います。しかし瓦町FLAG では、地元の人に面白がってもらい、自ら「巻き込まれたい」「乗っかりたい」と思ってもらいたいと考えました。瓦町FLAGが面白くなることが、自分の日々の暮らしを面白くしていく。そんなふうに関心を持ってもらいたい。開業に向けて行ったキャンペーンは、地元の人に無理なく気軽に参加してもらえるような施策を散りばめました。

地元の方向けの撮影会を実施、その写真を組み合わせて開業告知ポスターをつくったり、商店街と駅ビルとで連動する広告を掲出したり。また、告知メディアの選択肢としてはテレビ・ラジオもありますが、運営主体が鉄道会社という特性を活かし、電車・駅を有効活用しようと考えました。例えば「走る駅ビルFLAG号」。特別車両と臨時ダイヤを組み、代表的な出店テナントとコラボレーションしたポップアップショップを展開、地元の方に先行体験してもらいました。ことでんらしい、ユニークなコミュニケーションにチャレンジし、その行為自体で注目を集め、地元メディアで紹介されることを狙いました。

外部の僕らができることは、うんと限られていますから、地元の方が自発的・継続的に動いてくれる状態をデザインしていく必要があると考えています。例えば商店街の方々が「商店街もがんばるけん!」というキャッチフレーズのもと自発的に歓迎キャンペーンを開催してくれたり、さらにはロゴをモチーフに地元のお子さんたちがアニメーション作品を作ってくれたり。「ブランディング」の作法からすると、むやみに自由度を高めるのは“アウト” かもしれませんが、それを許容することで、新たな広がりが次々と生まれていくのを感じています。

PARK パーク

企業理念は『愛はあるか?』。CI やネーミング、理念開発からプロモーションまで、ブランディングを軸に展開するデジタルクリエイティブエージェンシー。2015年1月、「面白法人カヤック」出身の3名により設立。

CLIENT’S VOICE

インフラ×クリエイティブは今がチャンスのとき

鉄道業界はコミュニケーション下手で、クリエイティブとは縁遠い業界。電車や駅という資産があって、日々たくさんのお客さまと接触しているのに、それを生かしきれていません。だからこそ、やればやっただけ反応が得られる、大きなチャンスがあると思います。「プラットフォーム」というと堅いですが、ものを売ること以上に、誰もが参加して何か新しいことを生み出せる場をつくることに、鉄道会社として引き続き挑戦していきます。

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真鍋康正 Yasumasa Manabe
高松琴平電気鉄道
代表取締役 社長

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