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データを使い、限界を超える!

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消費者の行動履歴がデータとして蓄積されるオンラインのチャネルではデータ活用で進化を遂げ、マス広告や店舗接客などオフラインチャネルの活動との乖離は広がるばかりだ。しかし、今やデータの活用はこの溝をシームレスにつなごうとしている。毎回、1業界に焦点を当て、データを使い従来の不可能を可能にする取り組みを追う。

地場の食品スーパーがDMPで変わる!?

コンビニエンスストアなど生鮮を扱う他業種小売の進出で苦境に陥る食品スーパー。売上拡大のために集客しようにも、手段と言えば折込チラシが中心。新聞の購読率が減少傾向にあっても代替手段が見つからないため、効果の見えない販促活動を続けざるを得なくて…。

そんな課題を解決しようと立ち上がった企業がある。食品スーパーに対するコンサルティングなどを行うリレーションズだ。「効果の測定ができない折込チラシに食品スーパーは年間売上の1%程度を投下している。専門人材がいないので、デジタル施策が実現できないのが課題。そこで地域の食品スーパーでも手軽に導入できる集客支援のためのO2Oアプリを開発した」と話すのは同社の宮原忍氏(デジタルマーケティング事業部・事業部長)だ。

和歌山県を中心に40店舗を展開する、松源では全店舗でリレーションズのアプリを導入。地域密着のスーパーだけに、2カ月で約5万のダウンロードを獲得。現在はキャンペーンなど施策を行うたびに、数千万円単位で売上が伸びる好循環ができつつあるという。

チラシの代わりとなる集客ツールだけが、このアプリの利用目的ではない。インティメート・マージャーのDMPを活用しユーザーのCookieデータや閲覧履歴を基にした顧客分析が行われているのだ。「販促以前の段階で、スーパー業界では各店舗の顧客属性も理解できていなかった。DMPで性別や年代、年収などの基本属性を把握し、さらにアプリ内の閲覧履歴により、店舗ごとの商品開発に生かすことができる」(宮原氏)。すでにジオフェンスを使い、アプリ利用者の来店は把握できているが、「次はポイントカードと連携を図り、オンラインとオフラインの行動を統合して把握できるようにしていくつもりだ」と言う。

リレーションズのO2Oアプリのモデル。

お客さまの声なき声を理解する

データを取得できるようになっても、目的が明確でなければ結局業務が煩雑化して、結果的に混乱を招きかねない。小売業界のオムニチャネル施策で先進的な取り組みと評されるカメラのキタムラでその推進役を担ってきた逸見光次郎氏(執行役員オムニチャネル(人間力EC)推進担当)は「データを活用するのが目的ではない。小売においてはデータから顧客を知り、来店頻度と併売率を上げて、売上・利益を最大化するのが目的だ」と指摘する。同社ではすでにECだけでなく店舗も含めたDMP活用を実現させている。

「これまでバラバラだった受注DB、会員DB、WEBアクセスログを統合することで、いつ・誰が・どこから来て・どのページを見て・何を購入したかがわかり、お客さまごとにアプローチ方法もお勧め商品も変えることができるようになった。この実店舗では当たり前にできていることが、ネットでも可能になった。お客さまの“声なき声”が可視化できるようになった点は大きい」と山田周平氏(EC事業部・販売推進リーダー)は話す。

テクノロジーの進化は業界の「できなくて当然」の概念を着々と塗り替えている。一方で、自分たちはお客さまとどんな姿勢で接していこうと考えているのか、その方針があってこそ、データも生きてくると言えそうだ。

取材を終えて

従来、データの活用と言えばデジタルマーケティングに閉じた話が多かった。近年スマートフォンの浸透により、ユーザーのオフラインの行動も補足できるようになり、オンライン、オフラインのデータ融合も進んでいる。小売業の現場においても、オフラインの販促活動の成果向上にデータを活用する取り組みが進んでいきそうだ。

編集協力:株式会社インティメート・マージャー