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コラム

熱狂を創りだすリレーコラム 「Advertising Week Asia 2016」開催記念

さとなおさん、広告業界で独立して仕事をつくっていくにはどうしたらいいですか?

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2016年にアジア初として東京で開催される「Advertising Week Asia 2016」を記念して、広告業界のタブーに挑戦する特別コラムを実施。同イベントのアドバイザーにAdverTimes編集部からの質問に答えてもらいました。第9回は、電通から独立してツナグを設立した佐藤尚之氏に「広告業界で独立して仕事をつくっていくにはどうしたらいいですか?」と聞きました。
Naoyuki_Sato

佐藤尚之(さとうなおゆき)コミュニケーション・ディレクター。
ツナグ代表。独立行政法人国際交流基金理事。復興庁政策参与。公益社団法人助けあいジャパン代表理事。
1961年東京生まれ。1985年 電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・ディレクターとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立しツナグ設立。「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。本名での著書に「明日の広告」「明日のコミュニケーション」(ともにアスキー新書)。「明日のプランニング」(講談社現代新書)。“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(光文社文庫)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

■質問
広告業界で独立して仕事をつくっていくにはどうしたらいいですか?

■回答者
佐藤尚之氏(ツナグ)

人生は思ったより変化がない

たいていの人にとって人生はわりと単調に過ぎていく。

もちろん変化はいくつか訪れる。入学、就職をはじめとして、転勤あり転職あり退職あり、そして、大事な出会いがあり、忘れられない恋があり、耐えがたい別れがある。結婚や子育て、離婚を経験する人もいるだろう(中には何度も)。大病や介護に苦しむこともあるかもしれない。

それらは本人にとっては大きな変化だ。

でも、ある意味、想像の範疇でもあったりする。だって、小説でも映画でも音楽でも、そういう人生の諸相は様々な切り口から膨大な量がすでに描かれていて、ボクたちは始終それらに触れている。その変化の最中にどういうことが起こるか、どんな気持ちになるか、何が本質かつ大切で何が枝葉末節か、あらかじめ疑似体験していると言ってもいいほどだ。

そのうえリアルライフにおいても「その経験をすでにした先人」がそこら中にいて、寄ってたかって教えてくれる。先輩や友人というのは本当にありがたいものだ。友人が少ない人だって、グーグル先生に訊けば一秒かからずに様々な「答え」が読み切れないほど示される。検索結果を熟読しつつおっかなびっくり前に進めば、たいていのことは無難に収まる。

あーつまらない! 予想がつく人生なんてイヤである!

そう嫌って、誰も経験したことがない状況に自らを置く人もいる。物理的・心理的に「冒険家」の人はいつの世にもいるものだ。そういう人は他人の経験値を当てにしないし活用もしないだろう。でも、それでも想像の範疇をそんなに出ないかな、と思う。グレゴール・ザムザのように急に毒虫になるわけでもないし、不動明のようにデーモンと合体してデビルマンになるわけでもない。

そう、人生は思ったより変化がない。

ボク自身も、2011年3月、25年勤めた広告会社から独立した。変化といえば変化である。偶然、東日本大震災とタイミングが重なって、思ってもみない方向に人生の舵を切ったりしたが、まぁでもそれも俯瞰して見ればたいした変化ではない。そのときは「大方向転換じゃ!経験値ゼロじゃ!」とあたふたするが、落ち着いて周りを見回すと、先人たちが生暖かく見守っていてくれたりする。

独立して5年。結局何が変わったかなぁと振り返ると、実は「無駄な会議がゼロになったこと」、「同調圧力がなくなったこと」、そして「収入が不安定になったこと」以外、そんなに変化という変化はないかもしれない。相変わらず人に助けられ、仲間たちと笑いころげながら生きている。

さて。
人生から仕事の話に移ろう。

次ページ 「人類が経験したことのない事態が起きている」へ続く