生活者とクライアント企業の接点
創業70周年を迎えるコーセー。周年を記念してコーセーの歴史を約170種類におよぶ製品とともに振り返るスペシャルサイトをオープンした。そのコンテンツ制作にあたり、博報堂アイ・スタジオのCD佐野勝彦さんは、企業の歴史を見つめ直すだけでなく、プラスαの要素が必要と感じていた。
「年表をまとめるだけでは生活者とインナー(社員)、どちらにも深く興味を持ってもらえないのではないか、という危惧がありました。本質を突き詰めていく中で、クライアントと生活者を繋ぐ原点が製品にあると感じたことが今回の企画を立てるきっかけになりました」。
撮影とデザインを担当した同社 馬瀬戸薫さんも創業当時の製品からヒントを得ていた。
「コーセーの製品はどれも表情が豊か。昔のデザインも本当に素敵で、メンバーからも可愛いという声が多数あがりました。ものづくりの情熱が伝わる製品パッケージを切り口にすれば、見てもらえるコンテンツになると実感しました」。
2人が注目したのは、コーセーが世に送り出してきた製品は、高度経済成長など変化する女性の生活スタイルに寄り添ったものだということ。「この生活者が最も身近に接してきた製品を語り部にすべきだと確信しました」と佐野さん。
最終的に、2つの軸を持つサイト構造に決定した。各時代の代表製品のパッケージを美術館に並ぶ作品のように表現し、その背景を知ることができるピックアップ型コンテンツをメインに、企業のあゆみと時代背景を一覧で把握できる年表型コンテンツをつくる。
そこに至った理由を佐野さんは「70年間接点を担ってきた製品の歴史を質と量で表現したいと思いました。また、企画の初期段階で『Share my KOSÉ』、つまり70年間で出た製品1個1個との思い出や新たな発見をさまざまな年代の人がシェアできるといいねと話していたんです」と振り返る。
それを実現するために、サイト上に約170種類におよぶ製品パッケージを美術館のアーカイブのようにディスプレイし、それぞれの製品を個別でSNSにシェアできるという仕組みにしている。
サイトのビジュアル面では統一性にこだわった。「製品が並んだ時の、世界観を大事にしたかったので、70年前の一点物も含め、全て撮り直しをしました。製品の存在感を出すため、あくまでリアルな影にこだわり、全ての影を別撮りで撮影するなど、様々な時代の製品を一つの世界観にまとめることを意識しました」と馬瀬戸さん。
レイアウトも統一感を出すために、コーダーがスペシャルサイトの独自ルールをつくり、地道にクオリティを上げていった。
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