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コラム

箭内さん!聞かせてください。今日このごろと、広告のこれから。

箭内さん!どうして「無茶振り」が好きなんですか?

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【前回コラム】「箭内さん!クリエイティブディレクターなのにチームづくりが苦手だったって本当ですか?」はこちら

—箭内さんは仕事の中で、相手に対して「無茶振り」をすることが多いと聞きました。無茶振りが好きなんですか?

基本的に、広告の世界の打ち合わせでよくある、「○○みたいな感じで」っていうのが好きじゃなくて。例えば僕が、「タワーレコードみたいなポスターを作ってください」って頼まれたら、タワーレコードのポスターよりも良いものができることはありません。

どういうゴールにたどり着くかわからない道を行くほうが、不安な分、それ以上のワクワクがあるというか。ゴールが想像できたら、それを追体験する必要はないんじゃないかと思うわけです。

自己模倣は退屈で、そこに初期衝動は生まれない。無茶振りっていうのは、できない人に無理矢理「やれ」って強要するということじゃないんです。高所恐怖症の人にバンジージャンプをやれっていうのは無茶振りじゃない。その人がやったことはないけど、できるかもしれないことだったり、その人がやったら、今までにやった人よりも面白いことになるかもしれないことに導くのが、無茶振りなんですよね。

—どういう嗅覚で、「この人、こんなことできるかも」と見極めているんですか?

まず、とにかくやったことないことをやってほしいっていうのがあるわけです。去年、自分で映画(2015年7月公開『ブラフマン』)を撮ったときも「最初で最後の」って言ったけど、やっぱり人って、“最初”と“最後”が好きなんですよ。「初めての恋」とか「最後の女」とか。

最初っていうのはものすごくトキメキがあるというか、ビギナーズラックもそうなんだけど、何かとんでもないものができるタイミングなんです。“慣れ”でものをつくらないから。だから、とにかく「そんなこと言われたの、初めてです」とか「こんなことするの、初めてです」と言わせたいっていうのがあるんです。それは結果にもつながるし、その人にとっても思いがけない体験になるし。

カメラマンに、「この前あなたが撮っていた、あの写真みたいな感じでこの商品を撮ってください」って発注したくないんです。「どうやったらいいかわかんない」と思われるような、相手が耳を疑うようなオファーをし続けたいっていうのがありますね。

—最初の無茶振り体験って、何ですか?怒髪天の増子直純さんを起用した桃屋のCMですか?

いや、90年代後半に、ミュージックビデオの監督たちに「CMを撮って」と依頼したのも、きっと無茶振りだったと思う(コラム第5回)。

東京メトロのCM撮影で、街でスカウトした女子高生に、“ちょっと好きかもしれない男子”を連れてきてもらって、本番で突然手をつなぐようにと女子高生にこっそり指示したのも、無茶振りかもしれない。「えっ!」ってなるからね。だから、想定のなかでものをつくることがつまらないって思うのかもしれないですね。

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