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お土産品ではなく、日常で使えるいいものつくる — 「琉Q(ルキュー)」

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。第8号が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

地域に根差す企業とクリエイターがパートナーとなり、新しい価値を生み出した事例を、手がけたクリエイターが自ら解説。今回は沖縄の事例です。

2013年にスタートした「琉Q(ルキュ ー)」は、沖縄県産の素材を使った食品を中心に展開する沖縄発のブランドです。“長寿の島”沖縄の食材や食べ方を生かしながら、現代のライフスタイルに合う商品ーー例えば、フルーツを使ったバターやジャム、沖縄の家庭に伝わる伝統的な調味料、それらの容器として使用するガラス瓶や陶器などを販売しています。

コンセプトは「沖縄の恵みと知恵を、日々の生活に。」。南国沖縄のお土産物としてイベント的に消費されるのではなく、日常の生活に良いもの、使いやすいものを心がけて商品を企画しています。そのために、ブランドで大切にしている3つのことがあります。それは「沖縄県産であること」「無添加のものであること」「製品として無理のないもの」。商品の差別化、ブランドの独自性を守るためにも必要なことです。

最大のライバルは、同じ沖縄の商品。「青い海、まぶしい太陽」といった南国感あふれるコントラストと差別化するために、自然そのものではなく、自然と共に生きてきた沖縄の人の暮らしにフォーカスしています。沖縄の人が持つマインドを商品を通じて表していけば、結果的にオンリーワンのブランドに成長すると考えています。その考えのもと、パッケージには、その商品に関係する食材の食べ方などを解説するQ&Aを掲載しています。

また、「沖縄の価値は、沖縄の人よりも県外の人のほうが知っている」と考え、プロジェクトメンバーには、全国的にも知名度の高い方々にも参加を呼びかけました。ブランドのネーミングからコンセプトメイキングまでをKIGI、ライティングを伊藤総研、 WebをPARTYにそれぞれ担当いただきました。

当初はオンラインストアや県内のホテル、観光土産店などで販売してきましたが、現在では都内でも販路を拡大しています。

社会福祉も継続的に利益を生み出せる

クライアントは、沖縄県内の福祉施設と連携する「沖縄県セルプセンター」という団体です。最初のオリエンテーションの時点では、各福祉施設の障がい者の皆さんがつくる製品の販売のサポートという依頼でした。つくられた商品をまとめて、県内の産業まつりなどのイベントに出展するという内容でしたが、つくられた製品のカテゴリやクオリティが各施設によってさまざまで、それらをひとまとめにして販売することに 疑問を感じました。

そしてこのプロジェクトの根幹にあった目的は、「障がい者が生活するのに必要な生活費(工賃)」を向上させることだったので す。現状のまま販売しても一過性で終わってしまう。継続的に利益を生むシステムが必要だと考え、一つのブランドを立ち上げ、そこからクオリティが担保された商品を生み出しましょう!と提案させていただきました。

各社会福祉施設は、障がい者の賃金向上 のためにさまざまな商品を制作しているものの、売上は思うように伸びず課題を抱えています。それを、デザインの観点からお手伝いできればと、ブランド立ち上げに至りました。以来、琉Qの製品に関わるすべてに携わっています。素材選びに農家さんへ、つくりたい商品のため生産工場へ、形にするための相談を作家さんへ。味はどうだ、デザインはどうだ、サイズはどうだ。できあがった商品をどのように売ればよいか、価格帯はどうか、競合商品はどうか。 商品が生まれるところから、それが育っていくところまで(死ぬこともある)を体験できていることが、他のすべての仕事において生 かされています。
福祉や農業など、デザイン発想で変化を与えられる領域は多くあると思いますし、 必要だとも思います。やりがいでいえば、都会と違って、クライアントも、プロジェクトの規模も小さい一方、決裁者が近い距離にいるため、跳ねた企画が通りやすいということもあります。

仲本 ヒロユキ  Hiroyuki Nakamoto
クリエイティブディレクター、プランナー

生まれも育ちも沖縄県。10年間の東京生活を経て帰郷。CM、Web 企画、コピーライティング、商品開発、企業ブランディングなどのコミュニケーション開発を中心に広告会社で活動している。沖縄は都市に比べると小さなクライアントが多いため、枝葉の 先の、先まで届くような心のこもったクリエイティ ブを心がけている。

 

CLIENT’S VOICE

商品を手に取り買ってもらうために、デザインの力が不可欠

授産施設(福祉施設)で障がい者の方が一生懸命つくるものには想いが詰 まっていますが、一つの商品として世の中に出た後は、それはあまり関係なくなります。商品を手に取り、買ってもらうにはデザインの力が欠かせません。仲本さんは、福祉という特殊な業界を理解し、障がい者の世界と、世の中の距離感をつかんで企画をしてくれます。制約が多い中で、何ができるのか。そこに光を当てることができるパートナーを求めています。

萱原景子 Keiko Kayahara
一般社団法人 沖縄県セルプセンター

 


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