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プロトタイプをどうビジネスにつなげるのか?博報堂アイ・スタジオ、PARTYとライゾマがゲストのセミナーで新概念「P2B」を発表

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右から須田和博氏(博報堂エグゼクティブクリエイティブディレクター)、中村洋基氏(PARTY クリエイティブディレクター)、齋藤精一氏(ライゾマティクス 代表取締役)、沖本哲哉氏(博報堂アイ・スタジオ 取締役常務執行役員兼ビジネスプロデューサー)、望月重太朗氏(博報堂アイ・スタジオ クリエイティブディレクター)

AI(人工知能)やVR(バーチャルリアリティ)、IoT(Internet of Things)――。こうした新しいテクノロジーを広告領域にどう活用していくのか、さまざまな取り組みを各社が始めている。ただ一方で、最先端のテクノロジーをどう活用したらいいかわからない、また、試作となる「プロトタイプ」をつくったものの、ビジネスとして成立するまで成長させられずに頓挫してしまうプロジェクトも多い。そこで博報堂アイ・スタジオでは、プロトタイプをビジネスとして育てる「P2B(Prototype to Business)」という概念を打ち出し、新組織「広告新商品開発室」を立ち上げた。その設立を記念して、PARTYの中村洋基氏とライゾマティクスの齋藤精一氏を招いて、8月6日に開催されたセミナー「Future Create Session」の模様をレポートする。

なぜいまP2Bという概念が重要なのか

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須田:今回のセミナーのモデレーターを務める博報堂の須田和博です。私も関わっている「広告新商品開発室」は、最先端テクノロジーをビジネスにすることを目的に立ち上げられました。そのお披露目セミナーとなる今回のテーマは「P2B(Prototype to Business)」、いかにしてプロトタイプをビジネスにつなげていくかになります。

沖本:今回立ち上げた「広告新商品開発室」は、簡潔に言うとビジネスプロデュースを行うチームです。博報堂のマーケティングノウハウと、我われ博報堂アイ・スタジオのクリエイティブのノウハウを組み合わせて、生活者に使ってもらえる体験装置を提供し、ビジネス化することが目的です。

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この組織の前身として、2014年に「フューチャークリエイトラボ」という研究開発チームを立ち上げました。このチームが中心となり、これまで90以上のプロトタイプを制作しましたが、これを次の段階へ進める新たなコンセプトが「P2B(Prototype to Business)」です。プロトタイプをビジネスに着地させる、これは単に新しいテクノロジーを使うことで生活者に「すごい!」と言わせるだけではなく、実際に使ってもらうことで企業に利益を生み出すことを示しています。

例えば、クライアントが持つ用途が定まっていない技術を広告クリエイティブの考え方で、生活者の課題解決につなげるプロトタイプ化を図ることを想定しています。ただ、プロトタイプをつくったらそこでプロジェクトが終わってしまったという課題をよく聞きます。では、プロトタイプをどうやって次のステップに進めばいいのでしょうか?

その一例を当社の望月より紹介します。

望月:須田さん率いる「スダラボ」と共同開発した「トーカブル・ベジタブル」を紹介します。このプロトタイプは、生活者とスーパーマーケット、そして生産者の間に横たわる課題へのソリューションとして開発しました。

生活者がスーパーで野菜を選ぶ際に、その外見だけから誰がどのようにつくったのかという生産履歴を判別することはできません。また一方で、生産者の側も苦労して育てた野菜についての情報をきちんと伝える手段を持っていません。

この「トーカブル・ベジタブル」は、お客さまが野菜に触れると野菜自らしゃべり出したように感じる新しいPOPです。タッチセンサーとマイクロコンピューターを野菜箱に入れることで実現しています。

実際に、スーパーマーケットで試すたびに改善ポイントが次々と見つかり、現在の「バージョン5」では、どのような箱や野菜であっても、お客さまが野菜を持つとしゃべり出すというところまで改良が進みました。

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現場での経験を繰り返しプロトタイプにフィードバックしていくことで、ビジネスの強度を少しずつ向上させていきます。こうして一つのテクノロジーをマネタイズできる商品へと成長させていきます。

「トーカブル・ベジタブル」は今年、イギリスで開催された食品に関するアワードで銀賞を獲得しました。そして現在、某国のNo1スーパーと商談を進めているところです。

次ページ 「プロトタイプのマネタイズには何が必要なのか」へ続く