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コラム

椎木里佳の「JCJKの生態と欲望」研究所

「モテクリエイター」誕生の裏に人知れぬ苦労あり。ゆうこすと椎木里佳が語るSNSのリアル

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【前回の記事】「「写ルンです」に「おじさんLINEごっこ」。おじさん文化が若者にウケている?」はこちら

「インフルエンサー」という言葉が広く知れ渡り、ウェブマーケティングと切っても切り離せない関係になって久しい昨今。10〜20代女性のトレンドや消費活動において、ひときわ存在を輝かせる「ゆうこす」こと、菅本裕子さん。元HKT48のメンバーで、現在はYouTubeの「ゆうこすモテチャンネル」やLINE LIVEなど、SNSを中心に数十万のフォロワーを抱えています。アイドルからインフルエンサーへ。活躍の舞台をマスメディアからウェブ上へ転身させたその舞台裏には、人知れない苦労と“SNS時代”に適応するための重要なヒントが隠されていました。

左)菅本裕子(ゆうこす)
右)椎木里佳

最初のイベントのお客さんはたった3人。ゆうこすも陥った、SNS時代の勘違いとは

椎木里佳(以下、椎木):ゆうこすさんは、JCJK調査隊(※1)のメンバーからも大人気で、メイク動画を参考にしている子が多いです。
元々は「HKT48」でアイドルとして活躍されていたゆうこすさんですが、活動の場をSNSに移した際、苦労はありましたか?

※1:椎木里佳の会社が運営する女子中高生マーケティングチーム

菅本裕子(以下、ゆうこす):脱退後、初めてイベントを開いた際のお客さんは、男性3人だけでした。HKT48時代は握手会には行列ができていて、テレビの撮影や取材が入っていました。

脱退の際も、すでにTwitterのフォロワーは4万人ほどいる状態でしたから、「イベントを開けば人は集まる」「自分にはやりたいことを実現できる力がある」と過信していたのかもしれません。それが、いざイベントを開くとお客さんはたった3人。ここで「フォロワー=影響力」ではないと気づかされました。

なんとなく自分のことを好きになってもらうのは難しくないかもしれませんが、会いたいと思わせるのは、相当な力。私も好きなタレントさんはいるけれど、その人にわざわざ会いにいくかどうかは別の問題です。

椎木:確かに!私も仕事で広告代理店の方からインフルエンサーのキャスティングを頼まれることがあるのですが、フォロワー数しか見ていない方は多いです。もちろんフォロワーも定量的な数字として大切な指標ではありますが、フォロワーが多いから影響力がある、という単純な図式ではないですよね。フォロワーを増やすだけなら購入だってできる時代ですし…。

ゆうこすさんは個人で発信をはじめたころにそういうことに気付いてから、どのように現在の発信力・集客力を獲得したのでしょう?

ゆうこす:私にしかない、他の人にはないものが何か考えてみたんです。でも、特になかった(笑)。
そこで自分が好きなことは何か?を考えたら「男性に可愛いと思われたい、モテたい」ということでした。これ、実は世の女の子みんなが思っていることですよね。でも、一方でそのためにメイクや可愛い洋服を着ているのに、「モテたい」と口に出したら叩かれる。そこに疑問を感じたんです。女の子の背中を押してあげられる存在になれたらなという思いで、肩書きを「モテクリエイター」と決めました。

椎木:「モテクリエイター」という肩書きを聞いたときは斬新すぎて驚きました。「モテる」ということが、世間の女の子たちの感情に刺さるワードだったからこそ、みんながゆうこすさんを真似したい!ってなったんだなと。

世間で大多数が感じていることけど口に出せていないことを発信するポジションを作る。マツコデラックスさんや有吉さんが世間で人気なのも、口に出せない不満を発信しているから人気を確立している。それは個人や芸能人だけではなく企業も参考になるかと思います。

現在ではTwitterやインスタなど合わせて70万人のフォロワーを持っているゆうこすさんですが、アイドル時代と現在で、フォロワーに変化はありましたか?

ゆうこす:アイドル時代のファンには男性が多かったですが、コスメやファッションなどで「モテたい!」という気持ちを発信し始めてからは、95%以上女性のフォロワーになりましたね。

ゆうこす「私自身を好きになってもらうのではなく、まずは私の情報を好きになってもらう」

椎木:具体的に、どうやってフォロワー層を変えていったのでしょうか?

ゆうこす:少し長くなってしまうかもしれないけど…(笑)

インスタで言えば、“私のファン”に向けての発信をしないようにしています。自撮りに「おはよう」みたいな投稿はしません。

というのも、私がアイドルだった時に、フォロワーはたくさんいたけど心の底から応援してくれる人は少なかった。“外側”ではなく、“内側”から支援される必要があると感じたんです。

ゼロの状態からファンを作ろうとした時に、何も知らない自分の「おはよう」を見たところで、誰もファンにはならないですよね。「美容」や「ファッション」を発信したい、そういうことに興味のある人にフォロワーになってもらいたいわけですから、発信する内容には気を配っています。

単純に文字量を多くしたり、新商品はすぐに共有したり。私自身のファンを集めるのではなく、私が発信する情報から、私を好きになってもらう流れを意識しました。内容の濃さでエンゲージメント率も全然違います。

椎木:アイドルや女優であれば、多少ファンとの間に距離感があることも大切かと思いますが、ゆうこすさんの場合、ファンの女の子たちは同じモテたいという目標を持つ「仲間」という感じがします。仲間だからこそ、リアルでも会いに来て応援したいし、コミュニティとして成り立っていくのではないかと。

ゆうこす:「可愛いだけ」「良い情報を発信するだけ」ではダメ。もっと、会いたい!という気持ちになってもらえるように、距離感を縮める投稿をしたり、エモーショナルな投稿をしたりするようにしています。SNSでは、言葉というものをもっと大事にしないといけないなと。

椎木:SNSでは外側をキレイに見せることは簡単ですが、内側の思いや悩みなどを見せるのはなかなか難しいことのようにも思います。だからこそ、ファンの女の子にとっては「モテたい気持ちをゆうこすが代弁してくれてる!」と思って、より距離感が縮んでいくのかもしれません。

それぞれのSNSは使い分けもされているんですか?

ゆうこす:最初にTwitterをやっていて、徐々に他のものを初めていく中で、同じ内容を発信する必要がないとは思いました。全部同じような内容を発信していたら、「どれか一つでいいや」となってしまいますよね。

なので、それぞれのSNSをどんな場にするかは、きちんと決めました。Twitterで投稿をリツイートする時の女の子は「共感」によって行動を起こしています。だから私の「おはよう」なんてリツイートされないし、仮にされたところで、それを見た人に広がっていくことはないですよね。なるべく共感してくれて、拡散される情報を意識していました。

インスタの場合は「#(ハッシュタグ)」で掘り下げる人が多いので、ハッシュタグを増やして、私を知ってもらう機会を増やす。YouTubeは年齢層が低いので、わかりやすいもの。ブログは少し閉鎖的な、距離感の近い場所にしようと考えて、熱量のある言葉を。LINE LIVEは“生感”を意識しています。SNSのフォロワーとは違う層にアプローチしたいので、美容情報に固執していません。お酒を飲みながら配信したり、渋谷の街中で配信したり。変わったことをして面白いな〜と思ってもらいたいです。

椎木:なるほど!それぞれのSNSで別のターゲティングができているから、発信力がますます広がっていったんですね。

<後編へ続く>

モテクリエイター・菅本裕子(ゆうこす)
すがもと・ゆうこ

1994年福岡県出身。
通称「モテタレント」。元アイドルという経歴を持ちながら、そのモテるための貪欲な自己プロデュース能力の高さがSNSを中心に話題になり再デビュー。
全国的に開催しているイベント「ゆうこすモテ教室」は常にチケットが入手困難になっている。また、YouTubeチャンネル「ゆうこすモテちゃんねる」も話題沸騰中。Twitterフォロワー数:約20万人
https://twitter.com/yukos_kawaii