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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

2018年、テレビ視聴計測が変わる。それは、広告業界の「平成」が終わる準備かもしれない。

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【前回の記事】「ビデオリサーチのAbemaTVリリース取り下げを題材に、「視聴率」と「視聴数」の違いをはっきりさせよう。」はこちら

必読!テレビ視聴計測が大きく変わる

2017年も、押し迫ってまいりました。今年、最後の記事をお届けします。来年は、けっこう大変化の年になりそうです。何しろ、平成がもうすぐ終わってしまいますからね。

いろんな分野で変化が起こると思いますが、「テレビ視聴計測」についても変化がありそうです。そんなの狭い分野の話じゃないか、と思う人も多いでしょうし、実際そうなのですが、いろんな分野に影響を与えそうです。メディアやコミュニケーションに起こりつつある大きな流れを象徴する話でもあります。

だからテレビ関係者だけでなく、メディア関係者みんなに読んでもらえればと思います。

まず、テレビ視聴計測のど真ん中、ビデオリサーチが出す視聴率が来年4月から変わります。最初は関東圏だけでスポットCMのみの話だそうですが、いずれ全国に広がります。

どう変わるか?上のように変わります。

まず、これまで視聴率は「世帯視聴率」でした。各世帯でどの局のどの番組を見ているかを計測していた。これを「個人全体視聴率」に変えるそうです。

と言われても、具体的にはわかりにくいですね。仮にこれまで10世帯25人(日本の平均世帯人数は2016年で2.47人だそうです)を対象に調査をしていたとすると、世帯視聴率だと10の世帯のうち何%見ているかを調べていたのが、個人視聴率だと25人のうち何%見ているかを調べるわけです。

いまは一家そろって同じ番組を見ることは少ないので、想像するとわかる通り、世帯より個人のほうが数字は低くなっちゃうそうです。

それでも、個人にするのはなぜでしょう?そもそも世帯で測っているのは日本だけだったらしいですが、やはりいま「個人」のデータが重視されています。とくにスマートフォンが生活に入り込んでいる中で、個人がどの番組を見てどのサイトを見るのかが重要になりますよね。他にもいろんな理由があるようですが、世帯から個人に変える基本はそこにあります。

そして「P+C7」とは何でしょう?

Pは「Program」つまり番組です。Cは「Commercial」つまりCM。番組のリアルタイム視聴率に、CMのタイムシフト視聴率を放送後7日間調べますよ、という意味です。

タイムシフト視聴率の計測は、2016年から本格的に始まっていました。このクールも「ドクターX」の第9話がリアルタイム21.2%、タイムシフト11.4%で総合視聴率30.6%、「すごい!」と話題になっていましたね(重複分を消すので、足したそのままの数値にはなりません)。でもこれまでは計測して、数字は発表されても、ビジネス的には反映されなかった。

それが、ようやく来春から本当にビジネスに使われることになった。タイムシフト視聴はドラマと一部のバラエティじゃないと、くっきり数字に表れないようですが、でも数としては大きい。これまで「このドラマは見応えがあるから録画してじっくり見よう」と、良い番組だからこそ録画で見られていたかもしれないのに、ビジネスにならなかったのが、これからは生きるわけです。逆にタイムシフトが加わる分、値上げになりそうですが、そうならないように“調整”するそうです。そうじゃないと、スポンサー企業が納得しませんよね。

それは置いといても、番組のつくり方に影響が出そうですし、見応えのある番組が増えるかもしれない。

そういう視聴者にとって良い変化が期待できそうなのはいいですが、正直言って、これからテレビ業界に、あるいは視聴者にどんな変化をもたらすのか、よくわかりません。しかも関東圏だけというのも中途半端に思えます。もちろん徐々に全国に広げる計画になっているわけですが。どうなるか、見守っていきたいですね。

ビデオリサーチ社の視聴計測の変化は、これにとどまらないそうです。同社の常務取締役・尾関光司氏の講演では、「VR新視聴率計画」として「1.分散されるテレビ視聴を集約」「2.多様化する生活者を表す」「3.テレビ視聴データのデジタル対応」の3つを掲げていました。ビデオリサーチというと既存の制度を守る保守的な会社のように思っている人も多いかもしれませんが、むしろこれから視聴率を進化させる意欲を感じます。視聴計測の“本丸”が次世代へ進もうとしているのだと思います。

一方で、スポンサー企業側からも新しい動きがあります。流通企業との取組みにおけるテレビとデジタルの共通指標をつくろうというものです。

次ページ 「テレビとデジタルを同じ指標で表現する必要性が生まれる背景とは?」へ続く