需要が減っているビール市場で「興味関心」を創造するには
大松:この本は「インサイト」がテーマですが、まずはなぜインサイトが重要なのか、からお話しします。
その背景には、成熟した市場でヒット商品を生み出すことの難しさがあります。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分が欲しいものがわかりません。「こういうものが欲しかったんですよね?」と提示し、それを使ったり、体験したりすることで初めて、「あ、こういうものを前から欲しいと思っていました」と言うのです。
インサイトとは、皆が口にしないけれど欲しているものを見つけること。人を動かす隠れた心理です。
ここで似た言葉として挙げられる、顕在化された「ニーズ」と「インサイト」を対比してみましょう。商品が少ない時代はニーズの時代で、顕在化された問題をオペレーション力で解決していけばいい。でも今は多くの商品があり成熟している時代。「だいたい良いんじゃないですか時代」と私は呼んでいるのですが、あらゆるカテゴリーで商品に大差がない状態なので、隠れているインサイトを見つけることが上手か、下手かということがすごく大事になってきます。
ここでインサイトについて詳しいお話に入る前に、ゲストの稲垣さんから、ビールの「だいたい良いんじゃないですか時代」を解説していただければと思います。
稲垣:ヤッホーブルーイングで、ブランドマネジメントとマーケティングディレクションを担当しています。
ご存じのように、日本の1人当たりの酒類消費量はものすごく下がっています。国税庁の資料(「酒類販売(消費)数量の推移」)を見ても、成人人口の減少率よりお酒全体の消費量の低下が上回っている。ピークの90年代よりも、20%ぐらい下がっています。
ビール市場も毎年縮小を続けています。ただ、そんな中でも「クラフトビール」というカテゴリーだけは伸びています。とは言っても、まだ市場は小さくて日本のビール市場は大体2兆円ある中で、クラフトビールのカテゴリーの売り上げは大体そのうちの1%で、最近1.5%ぐらいになっています。
実はビールは生産に大規模な設備が必要な装置産業で1種類を作ったほうが効率よく、1996年まで市場への新規参入がなかったので、多様性がありませんでした。そのため、「ビールはどれを飲んでも同じだろう」という認識の層もいます。
現在はクラフトビールなどの種類も増え、ようやく商品に対する興味・関心が高まってきました。
ただ、日本のビールはどれを飲んでもおいしいです。そうなると、ほとんどの方はやはり、「これでだいたい良いよね」という感じになっています。一方で、興味・関心をこれから高めようという方向性もあるので、二極化しているところです。
我々としては「だいたい良いのではないですか」ではなく、「ビールはもっといろいろあるんだよ」という認識を広げていきたい。遅ればせながら、他の商品カテゴリーが歩んだ道を進んでいるのがビール市場の特徴です。
大松:そんな中で稲垣さんは、インサイトを発見することによって、新たな興味をつくってこられたのですね。
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