広報業界でも話題騒然となっている、日本大学のアメフット問題。
事件は世の中で報道されているとおりだ。
広報対応のまずさが露呈し出したのが、試合から約2週間後の5月21日だ。悪質なタックルで負傷した選手の父親が大阪府警池田署に傷害容疑で被害を届け出た。さらに同日大阪市内で記者会見を開き、メディアに思いを語った。
加害者とされたのは日大の選手1人。大学は訴えられていない。
19日の記者会見にピンクのネクタイで出席し、バッシングされた内田正人前監督を含む日大の一同はホッとしたに違いない。
だが、22日に日本記者クラブで宮川泰介選手が記者会見を行ったことはご存じの通り。
試合時のVTRも公開されており、宮川選手が危険行為をしたのは明らかである。観客が入っていたため目撃者も多数いる。ある意味、直接手を下したのは、彼で間違いない。傷害罪に問われるかどうか、今後の行方が気になる。
「あの選手が起訴されても我が社に入れたい」の声が続出
22日の会見以降、宮川選手を擁護する意見が広がり、さらに日大への批判は強くなっている。翌23日には内田前監督と井上奨コーチが前回に増してお粗末な会見を開き、さらに宮川選手の応援ムードが加速している。アクセル全開だ。
「実際に指示があったかどうか」については、密室での出来事で今のところ証拠もあるわけではないので、そこはこの場で言及するつもりはない。あとは関係当局が明らかにしてゆくのだろう。
ここでは、広報戦略の分析を行いたい。
先に述べたように、観客という証人やVTRがある以上、宮川選手が悪質なタックルをしたことは紛れもない事実。宮川選手本人もその行為自体を認めて謝罪している。
被害者の父親の会見が火をつけた。彼らには広報戦略があったとは思えない。
そんな中、日大の監督の発言。刑事告訴から宮川選手は不利な側面があった。
大学やアメフット部ではなく、事実上、選手個人が追及されることとなった。
それをひっくり返す戦略を考えた場合、いちばん大切なのは世論である。
実際に、22日の選手の会見以降、世論が大きく変わっている。あえて書かないが、彼がかわいそうな雰囲気で一致している。彼の真摯な会見や若さも共感を生んでいる。
ちょっと話がそれるが、僕ら大人は若い人を応援する傾向がある。特に真面目な若者を応援したいと、いう想いがある。そういった面では、僕の世代の中年男性がもっとも不利である。特にワイドショーを見る女性の敵だ。
というわけで、23日の日大の会見を受けて、さらに世論は宮川選手の味方となった。
僕の周りにも「あの若者がもし起訴されたとしても我が社に入れたい」という経営者が何人もいる。宮川選手は、一度の会見でそこまで心を捉えたのである。
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