メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

「CES 2019」現地レポート②―なぜP&Gが初出展したのか?(森直樹)

share

CES 2019が、米国・ラスベガスで始まりました。CESは4500を超える出展企業、150以上の国から18万人以上の参加を見込む、世界最大規模を誇るテクノロジーの祭典です。CESは50年の歴史がありますが、今日ではかつての家電ショーの位置づけから、テクノロジーのイベントへと変貌を遂げています。

CESではスマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、AR/VRなど、これからのビジネス環境に大きく影響を与えるテクノロジーや先端的な取り組みに触れることができます。ここで触れることができるテクノロジーは、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても重要な示唆が多く発信されています。今年も、「アドタイ」視点で現地から森直樹が最新情報をお届けしていきます。

P&GがCESに初出展、FMCG企業がテクノロジーにどう向き合うのか?

CES2019現地レポート第2弾は、P&Gにフォーカス。私は、P&Gの記者発表会に参加をして興奮した。FMCG企業がCESで発表し、テクノロジーと向き合い、スタートアップの新しいエコシステムを取り入れ、本業事業のプロダクトやサービスに取り入れていたからだ。「アドタイ」読者に最も伝えたいコンテンツのひとつになるのでは?とまだ開催初日にも関わらず、感じてしまうほど、興味深く強くお伝えいしたいと思った記者発表会であった。

2019年のCESで私が驚きを持って、また最も関心を持っている発表がFMCG業界の巨人であるP&GのCESへの進出である。初日の記者発表会では、P&GのCDO(Chief Design Officer)であるPhil Duncan氏が登壇。Phil氏はCES出展に際して「我々は181年もの消費者向けイノベーションの歴史を誇り、イノベーションに関して新参者ではない」として、なぜP&GがCESへやって来たのか?またP&Gとテクノロジーの関係にCESで広く発信する意向を説明した。

また、Chief Brand OfficerのMarc Pritchard氏と、Chief Research, Development and Innovation OfficerのKathy Fish氏より、P&Gでの具体的な取り組みや事例についての解説があった。

Chief Brand OfficerのMarc Pritchard氏とChief Research, Development and Innovation OfficerのKathy Fish氏。

ようこそP&G コンシューマー・エクスペリエンス・ショーへ!

Marc氏は、CESをコンシューマー・エクスペリエンス・ショーと解釈して、「私たちは技術が飛躍的に変化し、社会的にも環境的にも大きな影響力を持った大量破壊の時代に生きており、消費者の体験を日々変えているから」とエクスペリエンス(体験)を強調した理由について述べた。Marc氏の説明によると、P&Gは、都市人口への集中問題、高齢化問題(2030年には50歳以上の人口は22億人を超える)、資源不足に対する問題について、新たな体験への事業機会や生活様式が大きく変わることへのイノベーション機会と捉えていた。

さらにMarc氏によると、デジタルテクノロジーのもとでデータ・分析・技術が、生活、仕事、遊び全てを支配しているとし、e コマース、ダイレクトコンシューマショッピング、ロボットサプライチェーン、バーチャルプロダクトイノベーション、プログラムメディア、機械学習、人工知能、ブロックチェーン、拡張現実、VR/AR、ボイス、など何もかもが関係すると語っていた。

またデータとテクノロジーは、先に述べた様々な問題の解決や、優れたカスタマイズを可能にすると期待を表した。「今日の市場で成功できるか?」という質問に対して、「答えはイエスだ。Disrupt(破壊)を積極的にP&Gはリードすることで対処している」と語っていた。

Irresistible Superiority (抗いようのない優位性)を獲得するためイノベーションを起こす方法を改革する

Kathy氏は、P&Gの181年に及ぶケイパビリティとリーン・スタートアップによる起業家精神を組み合わせることで、より早いイノベーションを起こしているという。Kathy氏によれば、130のリーンスタートアップ・ステージの実験があることを強調。さらにビジネスに対してはオープンな姿勢であるという。P&Gは、テクノロジー・商品・サービス/ソリューションにおいて新たなパートーナーシップを築き、P&Gのリソースを広く解放しているというのだ。

私はP&Gのオープンイノベーションの取り組みに、以前より注目していたのだが、CESでの記者発表ではその精神は発展し、彼らの事業の重要な要素となっていることを窺い知ることができた。

テクノロジーによりブランド構築の方法も刷新している

P&G記者発表で職業柄、強く興味を惹かれたのがブランド構築におけるテクノロジーの活用についてである。Marc氏によれば、これまで無駄があったマスマーケティングから広いスケールで高度にパーソナライズされたOne to Oneのブランド構築へ移行しているという。

従来のマスネットワークとデジタル企業による大規模発信から、1対1で正確になおかつ「マス・リーチ」するために、従来のネトワークとデジタル企業と協力してデータ分析とテクノロジーを活用しているようだ。Marc氏は「我々は広告でもイノベーションをしている。押し付けから引き寄せの宣伝に変えている」と説明していた。P&Gは従来型の広告から、AIを使った利便性のある体験へと変革しているのだ。

 

次ページ 「「P&G’s Life Lab」が問う「What if ? (もし〜なら)」へ続く