2014
11.25

インバウンドマーケティングの「役に立つ文章」とは何か?

マーケティング

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つい先日のことであるが、村上春樹氏の短編小説「女のいない男たち」にこんな文章があり、私はとても感動をした。

しかし僕らの人生を高みに押し上げ、谷底に突き落とし、心を戸惑わせ、美しい幻を見せ、時には死にまで追い込んでいくそのような器官の介入がなければ、僕らの人生はきっとずいぶん素っ気ないものになることだろう。あるいは単なる技巧の羅列に終わってしまうことだろう。

つまりは、素晴らしい人生とは平穏無事な毎日ではなく、よい事と悪い事が折り重なった毎日であると著者は言っているのだと私は解釈しているのだが、それにしても、なぜ私は上記の文章に感動するのか?とふと疑問に思うのである。私自身いろいろと考えてみるわけだが、こんなことしか思い浮かばない。

-共感するから
-今までの経験上なんとなくそう思うから
-言葉には出来なかった感情を言葉にしているから

この思いついた理由をながめていると、私の中にある何かと共鳴し合っているからなのではないかと感じるようになった。一体私は何に共感したのだろう?私の中の何と共鳴したことで感動したのだろう?私の答えはこうである。この文章(村上春樹の文章)に自分自身を重ね合わせているのだ。この文章によって自分自身を確かめているのだ。自分はこの生き方でいいんだと思いたいんだ。自分を肯定しているんだ。そう感じるのである。つまり、村上春樹氏の文章は、私自身の考え方を表現しているのであり、私の生き方や感じ方や価値観を上手に抽出して一つの文章に表現しているのだという事である。だから、この文章を読むことによって、私は「あ、自分と同じ考え方の人がいる」「自分と同じ感じ方をする人がいる」「私はこれでいいんだ。このままでもいいんだ。」と感じているのである。

いわば共感している時、それは自分を勇気づけ、今進んでいるこの道をさらに力強く進む力を与えられているのである。そしてまた同時に、自己変革の機会を失わせているともいえると私は思うのである。共感の力は、ある意味恐ろしい。いい意味でも悪い意味でも。共感によって自分を信じられるようになる一方、そこから抜け出せなくなるということでもあるからだ。人は共感の多いほう多いほうへと、いつの間にか道を進んでいるのである。そうやって人の価値観や考え方の方向性が決まり、強化されていき、年を取れば取るほど頑固になっていくのだと思うのである。

つまり、人は感じたいようにしか感じないし、考えたいようにしか考えないのだと私は思う。だから、誰が何を言おうと無駄ということだ。自分に都合のいいものに惹きつけられ、自分の都合のいいように考える。それが良くも悪くも人生に大きな影響を与えるのだと思うのである。

 

インバウンドマーケティングのコンテンツには「共感」が必要だ。

ところで、広告やマーケティングもどこまでも人が考えたいように考えさせる類のものであると私は思っている。人が今どのように考えたいと思っているのかを研究する。それをコンセプトにして人を共感させ人に行動を起こさせる。良い広告やマーケティングとは人に変化を求めない。良い広告やマーケティングは人を肯定するのである。

最近では、インバウンドマーケティングとか流行っていて、どうやってやればいいのだろうと言われているが、結局は広告もマーケティングもビジネスも人が考えたいように感じたいように導いてやるだけなんじゃないかと思うのである。「人が肯定して欲しいこと」や「何となく感じているけど言葉に出来ていないこと」や「苦しいけどそれは必要なことであると勇気付けてあげたりする」などして共感を引き起こすことなのではないだろうかと思うのである。

お客さんに寄り添うとはこんなことなのではないだろうかと思うのだ。人が考えたいように考えさせてあげて感じたいように感じさせてやること。どんなに自分たちの商品サービスを買ってほしいからといって振り向かせようとはしてはいけない。それは無駄なことである。いくら何をやっても振り向いてはくれない。振り向かせるのではなくその商品サービスに共感させるのである。その商品サービスが自分自身を肯定させ、勇気づけ、さらに今まさに歩もうとしている道をより明るく照らし出すものであると訴えることである。

そういう意味で広告もマーケティングも同じだと私は思う。特にインバウンドマーケティングに可能性を感じるのは振り向かせようとしないところである。興味関心が検索という行為に表現された時にインバウンドマーケティングが始まる。その検索は、まさに自分自身がどうしたいのかということの表現の一つであると私は思っている。興味・関心・疑問を満たそうとする行為は、まさに自分自身が考えたいように、感じたいようにするための行為である。検索結果の中からブックマークしたりイイネするのは自分が感じたいものだし、考えたいことである。検索結果の中から最も自分自身を表現しているものを探す行為が検索なのであると私は思うのである。自分の感じているものとは違う文章にブックマークはしないしイイネするはずもない。だから拡散するはずもないのである。拡散するコンテンツとは、多くの人にそのような共感させるもの、つまり、考えたいと思っていることや感じたいと思っていることを表現したものであると私は思うのである。

また、インバウンドマーケティングの本などを読んでいると「人に役立つ文章を書こう」と言っているものが多くあるが、それは少し違うのではないかと私は思っている。それは、役立つ文章であると同時に、共感を呼ぶ文章であり、つまり、考えたいように考えさてくれ、感じたいように感じさせてくれる文章でなければならないと思うからである。例えば、読者がこんなふうに解決したいとイメージしていた課題を、まさにその解決イメージそのままに解決してやる文章であり、読者の解決イメージに沿った文章表現されたものでなければならないと私は思うのである。どんなに正しい解決方法でも、結局は読者がイメージした解決方法でなければならないと私は思うのだ。お客様にそして読者に寄り添うとはそういうことを言うのではないかと私は思うのである。自分たちの論理で説明するのではなく、お客様や読者の考え方と感情に沿って解決策を提示させてやること。それがインバウンドマーケティングにおけるコンテンツ作成に大切なことではないだろうか。