2018
04.16

起業成功のカギとは? スタートアップ企業140社を支援してきた「サムライインキュベート」代表が話す、成功する起業家像

世界の社窓から

ITを使ったサービスの領域にはビジネスチャンスが多く、起業する方も増えています。

さまざまなスタートアップ企業を目にして、自分も起業しようと思っている、あるいはいずれ起業したいと考えている方も多いのではないでしょうか。なかには社内で新規事業の提案を求められている方や、新規事業の立ち上げを任された方もいるかもしれません。

そこで今回は、事業立ち上げの段階から起業家を支援している株式会社サムライインキュベートの代表取締役・榊原健太郎さんに、起業成功のポイントや起業ネタの考え方などを伺いました。

成功する起業家に欠かせないことは一つ

―働き方が多様化している現代で、起業しようと考えている方も多いかと思いますが、ずばり成功する起業家に欠かせないことは何でしょうか。

―榊原
ストレスに強いこと。これに尽きると思います。

なんと、成功する起業家にもっとも必要なのは、アイディアでも人付き合いの良さでもなく、ストレス耐性とのこと。その理由は?

―榊原
起業をするときには、家族に反対されたり、そんなサービスは流行らないと言われたり、お金に困ったりとさまざまな困難にぶつかります。ただ、それに負けてしまえば起業は絶対に成功できない。

誰に何を言われても自分がやりたいことを信じ、ビジネスを成功させることを念頭に置いて諦めずにやり続ける力が必要です。

困難を乗り越えるには、その状況をいかにポジティブに捉え、いかに楽しめるかが勝負なのだとか。

とはいえ、困難が続けば自信をなくしてしまうこともありますよね。起業家にも誰か頼れる人がいればいいと思うのですが……。

―榊原
それには、起業家同士の交流が一番ですね。同じ経験をしている人でなければ分からないことも多いので、そういったことを相談できる起業家仲間をつくることが大事です。

当社でも、これから起業する方やIPOを間近に控えた起業家などを混ぜ合わせ、さまざまなフェーズの相談ができるコミュニティをつくっています。

新サービスの考案やサービス育成の手法はシンプル

―では、起業したビジネスを続けていくためにはどのような視点を持つべきなのでしょうか。

―榊原
世の中の課題に気づくことです。課題に対してソリューションを提供すれば、必ずマネタイズできます。

榊原さん自身も、「スタートアップを支援する」という思いで10年前にサムライインキュベートを立ち上げてからは、起業家の働く場所がない、住む場所がない、事業立ち上げの資金がないといった課題に対し、ソリューションを提供することの繰り返しで今があると言います。

ただ、どうすれば課題に気づけるのか分からないという人もいるかもしれません。

榊原さんによれば、課題に気づくことはそんなに難しくないのだとか。

―榊原
常にニュースで話題になっているような問題は、だいたいビジネスで解決できます。

たとえば交通事故や山での遭難、いじめ。交通事故は自動運転技術の開発開発がありますね。

山での遭難やいじめに関しては私たちも手掛けている支援がありますが、山での遭難は山の登り方をシェアするツールによって大幅に減らせるでしょうし、いじめはLINEなどのチャットアプリから発生することが多いため、テキストデータの分析を行って、いじめが発生しそうになったらアラートを鳴らすといったことができます。

なかなか良いアイディアが浮かばない場合は、たくさんの職種を書き出し、その職種の人たちが悩んでいることを列挙していくと、何かしらのサービスを思いつきやすいそう。

では、生み出したサービスを育てていくためのポイントは何なのでしょうか。

―榊原
ポイントはただ一つ、PDCAをいかに高速で回せるか。たとえば、前日の行動を毎朝振り返ってから1日をスタートする人と振り返らずにスタートする人では、大きな違いが生まれます。

それができない人はできないのだとか。反対にPDCAさえきちんと回せれば、成功の可能性は高まるそう。

それには、モチベーションを維持することも大切。榊原さんには、モチベーションを維持する独自の考え方がありました。

―榊原
戦争をしていた73年前と比べて、今がどれだけ恵まれているかを考えるんです。出征した僕の祖父は、当時僕の祖母のお腹にいた父に会うことなく、戦地で亡くなりました。

戦時中は夢や希望を持っていたにも関わらず、叶えられずに亡くなった方がたくさんいた。東日本大震災にしてもそうです。

そういった過去のことを考えると自分なんてちっぽけだなと感じて、もっとがんばろうと思えるんです。

世界を席巻するサービスを生み出すイスラエル人に学ぶこと

―サムライインキュベートはイスラエルの起業家も支援されていますが、イスラエルと日本の起業家の違いはありますか。

―榊原
イスラエルでは幼稚園のころからプログラミングを学ぶ機会があるので、高校を卒業した段階で全員がエンジニア状態になっています。

その後兵役に行き、世界でもっとも高度な技術を教えてくれるR&Dセンターでサイバーセキュリティのほか、リーダーシップやチームワークを学びます。

日本では文系と理系が分かれていて、理系のエンジニアはリーダーシップをとることやチームワークが苦手というイメージがある。

一方、イスラエルでは何でもひとりでできるように育てられるんです。

また、イスラエルは周囲を敵国に囲まれており、いつ攻撃されるか分からない状況にあることから、イスラエル人は1日を一生のように捉えているのだとか。

―榊原
もしかしたら明日が来ないかもしれないと考えているので、今やっておかなければという意識が強く、物事を進めるスピードがとにかく速いですね。
ミーティングを提案すると、今日の夜はどう、明日の午前中はどうと聞かれます。

そういう状況にあっても、イスラエル人はとてもポジティブなんだそう。
そして5時には必ず仕事を終えて家に帰り、奥さんや子どもとの時間を過ごすそうです。

―榊原
イスラエルの道端に、「Enjoy your problems, it’s life.」という言葉が書いてあるんです。
イスラエル人は問題があること自体が人生、問題があること自体を楽しんじゃえという感覚なんですね。

なるほど。前向きな精神、教育で備わったリーダーシップやIT技術。イスラエル人はとても起業家向きなのですね。

とはいえ、生活環境も教育も異なる日本人がイスラエル人の精神に倣うことはなかなか難しそう……。そう考えていると、実は日本にも古くから似た考え方があるのだと榊原さん。

―榊原
日本語の「ありがとう」は、漢字で書くと「有難う」。難が有ると書くんです。これは、難をクリアしてくれてありがとうということ。もっとももらって嬉しい、日本人みんなに共通する言葉は「ありがとう」ですよね。

つまり、難をクリアすることが人生を最大に喜ばせることだと言っているんです。難がない人生は無難な人生。難が有る人生が人生をより楽しめるようにする。

すごくつらい思いをしている起業家がいれば、「それは有難い人生。すごく人生を生きてるじゃない」と話します。そうするとポジティブになれるんです。

人生は難が有るからこそおもしろいんですね。
そう思うと難を楽しめるし、「ありがとう」という言うたびにその言葉の深みが増すように感じられます。

最後に、今後の展望を伺いました。

―榊原
ひとりひとりの幸福が実現できるような世界をつくりたいと考えています。

それには、教育が一番重要です。たとえば、さまざまな国にアントレプレナーシップ(起業家精神)を育てる教育を提供し、どんな困難にも打ち勝てる人や、新しい物事を生み出す能力を育てたいですね。

同じ困難でも、考え方一つで起業を成功に近づけることができる。
どんなサービスをつくるか、どう事業を回していくかという手法も大切ですが、自分を信じて挑み続けることが何より重要なのだと学びました。

榊原さん、お忙しいなかありがとうございました。


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三ツ井 香菜

三ツ井 香菜

長野県出身、東京都在住。大学では化学を専攻し、新卒で入社した会社では医薬品分析を行っていた。その後、ライターに転身。マーケティング分野を中心に演劇、医薬、グルメなど幅広く執筆している。