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HEROZ が AI で挑戦する世界〜将棋ウォーズからBtoBへ〜

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2018年4月に上場し、公開価格の10.9倍もの値がついたHEROZ。2009年に設立された同社は、AIを活用した「将棋ウォーズ」という将棋アプリで有名だが、今後はそこで培ったAIテクノロジーを活用して様々な領域に挑戦していくという。HEROZの今後の狙いについて、代表取締役CEO・林隆弘氏にお話をお聞きした。

将棋ウォーズから、BtoB にも参入する狙い

薮崎 「上場おめでとうございます。ちょうど御社が創業されたくらいの頃に、ベンチャーキャピタルの担当者から御社の話を聞いたことがあって、面白い企業だなと思った記憶があります。」

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林 隆弘
HEROZ株式会社 代表取締役
1999年早稲田大学卒業。アマチュア一般棋戦等、個人での全国優勝は7回経験。羽生永世七冠との席上対局実績もあり。日本電気株式会社(NEC)技術開発職として入社し、IT戦略部や経営企画部に在籍。2009年4月に高橋知裕と共にHEROZ株式会社設立。将棋AIに着目し、AIを活用した「将棋ウォーズ」というオンライン対戦アプリを展開。現在は名人に勝利した将棋AIの技術を活用した「HEROZ Kishin」で各種産業にAI革命を起こし、世界を驚かすサービスを創出していくことを目指している。

 「ありがとうございます。HEROZは2009年4月に創業したのですが、当時はリーマンショックで景気としては最悪の状況でした。しかし一方で、スマートフォンが到来して様々な新しいウェブサービスが生まれつつある“夜明け前”といった感じだったんです。そういった状況の中で、同じNECの同期だった高橋知裕を誘って、HEROZを立ち上げました。」

薮崎 「HEROZと言えば将棋アプリ『将棋ウォーズ』の印象が強いですが、創業時から将棋×AIを狙っていたのでしょうか。」

 「おかげさまで将棋ウォーズは、累計460万人くらいの方にご利用いただいています。ただ実はサービスの開始は2012年からで、2009年の創業当時は様々なソーシャルアプリを出していました。個人的には将棋が好きなのですが、HEROZとしては将棋という領域にこだわっているわけではないのです。また、今後は将棋AIで培った技術のノウハウを、どんどんBtoB領域にも活かしていきたいと考えています。」

薮崎 「今後は、BtoCだけでなく、BtoBにも力を入れていくのですね。」

 「棋譜データを企業データに置き換えることで、BtoB領域にも十分活用できると考えています。実は、将棋ウォーズでBtoC事業がメインだった時から、多くの人に『BtoBに活かしたら面白いのに』とは言われていたんです。たとえば、囲碁AIの『AlphaGO』なども、ディープマインド社が最終的にはBtoBで売る目的で、プロ棋士との対決イベントを行なっていましたし。そこで、まず金融の分野で市場予測を試してみたら、結構いい検証結果が出たので、BtoB領域でもいけるという手応えを感じましたね。」

薮崎 「今、BtoB領域で注力している業界はどこですか?」

 「今取り組んでいるのは、建設や金融、品質管理(ソフトウエアに不具合がないか確認するデバッグサービスの領域等)、エンタメなどの分野です。BtoB向けのMLaaS(Machine Learning as a Service)として、“HEROZ Kishin(棋神)”というサービスを提供していて、そこには頭脳ゲーム、ゲーム開発、経路最適化、配置最適化、予測、最適解探索、分類、異常検知、文章処理、画像認識などいろいろなエンジンが搭載されています。それを、各企業の課題に合わせてカスタマイズしているのです。」

薮崎 「いろいろな企業と提携を進めていらっしゃいますよね。」

 「そうですね。建設市場だと、竹中工務店様と資本業務提携して、構造設計といった領域で、竹中工務店様のノウハウをHEROZ Kishinで学習することで、構造設計者の方の業務をサポートするような取り組みを行なっています。また、エンタメ市場ではHEROZは2016年にバンダイナムコエンターテインメント様、昨年にはコーエーテクモゲームス様、デジタルハーツホールディングス様と資本業務提携をしました。エンタメ市場でもそうなのですが、テストの領域が、需要に対して供給が追いついていないんです。だからこそ分類・異常検知・画像認識などのエンジンを組み合わせることで、そういった人手不足問題を解決していきたいと考えています。」

薮崎 「テスト市場は、ITに関わる全ての領域に必須ですよね。そこがAIで解決できるようになれば非常にインパクトは大きいです。また、エンタメ市場はAIと相性が良さそうだと感じます。」

 「おっしゃる通りです。今のゲームアプリって、ゲームバランスが崩れてユーザーが減ってしまうことが多いんです。チームを組んだり相性があったりとどんどん複雑化していて、ゲームバランスを取らないと、すぐにキャラクターのレベルにインフレが起こったり、無双のアイテムが出現してしまったりするのです。そうならないように、全ての対戦結果を分析したりして、バランスを壊さないようにするためのAIが必要になってきます。現在エンタメ領域では、バンダイナムコエンターテインメント様やコーエーテクモゲームス様やポケモン様、ネットマーブルジャパン様など多くの企業と組んでいます。」

薮崎 「HEROZ Kishinは、あらゆる領域に活用できそうですね。」

 「目先の利益ではなく、3年後、5年後に自分たちが未来を作っていると言えるかどうかを重視していて、そういった分野に積極的に取り組みたいと考えています。」

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HEROZはなぜ代表取締役が2人なのか

薮崎 「林さんと高橋さんのどちらも代表取締役という2人体制を取られていますが、どういう役割分担をされているのでしょうか。」

 「今は、僕がCEOで高橋がCOOという形にしていますが、対等な立場で2人で議論して進めています。お互いの考えがしっかりとシンクロすると、暴走を食い止められますし、かつ意思決定も早くしつつ集合知で戦えるので、今の時代にはあっているやり方じゃないかなと思っています。」

薮崎 「以前は、2人以上の代表を置くことについては、それぞれの成長の度合いや目指すところが異なってきたりするので反対だったのです。ただ、最近はちょっと考えを改めようかなと思い始めています(笑)」

 「他社でも代表取締役複数の体制もございますし、今後はむしろそういう企業が増えるんじゃないでしょうか。」

薮崎 「カヤックさんなどもそういう体制ですよね。ちなみに、意思決定で食い違うことはないですか?」

 「高橋がすごく大人なんですよ(笑)HEROZには、『AI革命を起こし、未来を創っていく』という志があるのですが、そうした観点から、長期的に見てどれが一番価値がありそうかを考えると、優先順位がわかるケースが多いです。」

薮崎 「お二人は非常に仲が良さそうですよね。大学の同級生で、NECでも同期で、こうして一緒に起業して、性格や考え方が合っているのだと感じます。」

 「入社して同期のみんなが仕事後や休日に飲みに行っている間も、僕らはずっと一緒にサービスを作っていましたね。彼女と一緒にいるときでも、会いに行ったりしましたから。『今彼女といるけど大丈夫?』『いいよ、気にしないで』みたいなやりとりをしていましたが、今思うと“いや、お前は気にしろよ”って感じですよね(笑)お互いに非常に信頼関係があるので、議論もしやすいというのもあります。」

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HEROZという組織の人材

薮崎 「現在、社員は何名くらいいらっしゃるのですか。」

 「今は40名程度です。どんどん大きくなっている最中ですね。」

薮崎 「エンジニアの方は、もともとAIに携わってきた人が多いのでしょうか。それともAIに挑戦したい人も結構いるのでしょうか。」

 「やはりもともとAIに携わっていたメンバーが多いですね。エンジニアは全体の3分の2くらいなのですが、博士課程のメンバーがその中でも35%くらいです。」

薮崎 「HEROZには、Ponanza(ポナンザ)の開発者である、山本一成さんもいらっしゃいますよね。やはりみなさん将棋経験者ですか?」

 「いえいえ、そんなことはないです。将棋カンパニーっぽく思われている方もいらっしゃいますが、最近は特に、BtoB領域に興味を持って入社してくれる人もいます。昨年はBtoBの領域で対前年比約4.7倍の成長をしているんですよ。今年も倍増する予定なので、BtoBにシフトしています。でも将棋で初段以上の人が10人以上いる、というのは珍しいかもしれないですね。」

薮崎 「数年後のAIの世界を見ていらっしゃるなと感じます。『今、AIで稼ぐ』ということだけを重視するなら、HEROZもエンジニアも自動車産業に関わったほうがいいじゃないですか。まさに今来ている分野で人も足りていないので。」

 「そうですね。少し俯瞰して見るようにはしていて、一過性の儲けではなくてHEROZが覇権を握るというか、しっかりと未来で価値を出せる分野で、『AI革命で、未来を創る』という志に共感してくれる社員とともに様々な挑戦をしている最中です。」

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※インタビュアー:薮崎 敬祐(やぶさきたかひろ) 株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、通販、自動車販売など様々な事業を展開してきた。現在は、今まで培ったテクノロジーを組み合わせて、小売企業の課題解決を行うリテールテックカンパニーとして躍進。「あったらいいな」ではなく「なければならない」領域に、新しい仕組みを提案している。