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レスポンス広告の極意 第3回:レスポンス広告の役割②

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さまざまなレスポンス広告に携わってきた後藤一喜氏による連載の第3回。今回は、ダイレクトマーケティグの構造とレスポンス広告の役割、レスポンス広告におけるクリエーティブの位置づけと役割、そしてそれがいわゆる創造性ではなく、プロセス管理の考え方に支えられているといった事柄についてご説明します。

二つの販売施策

ダイレクトマーケティングは、図1に示したような、二つの領域、①Acquisition Program=新規顧客開発領域 と ②Retention Program=顧客維持領域(後者についてはLoyalty Programあるいは顧客育成領域とされる場合もあります)により構成されています。

実はダイレクトマーケティングに限らず、ビジネス(商い=商売)とは基本的に、この二つの領域により構成されているのですが、ダイレクトマーケティングの場合は、この二つを明確に分けて、別々の施策として実行可能なので、この強みを活かすことが有利な展開へと繋がります。

図1:ビジネス全体の仕組み
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①新規客開発施策(Acquisition Program)

不特定多数層の中から新規客を発見し、最初の取引(販売)に導くまでの施策のことで、レスポンス広告は、この中心的戦術であり、主にマスメディアやインターネットが活用されます。

②顧客維持施策(Retention Program)

顧客データベースに取り込んだ顧客との関係性を最適化させることにより、取引の量と期間、収益の最大化を実現させる施策(買い換え・買い増し・紹介販売等)で、主にメールや電話、DM等のパーソナルメディアが活用されます。

自動車販売の例で考えてみましょう。優秀なセールスパーソンは、月に何十台もの車を販売しますが、そのほとんどが買い替えや買い増し、そして紹介販売といった②顧客維持施策の成果だそうです。逆に新規客に一台一台売っていたのでは、いくら優秀なセールスパーソンでも、体は一つしかなく時間も24時間しかありませんから、月に何十台もの車を販売することはできません。
つまり優秀なセールスパーソンは一度買ってくれたお客様を一生のお客様に仕立て上げ、買い替えや買い増しだけでなく、さらに紹介販売まで引き出すのです。どちらの領域の施策の効率が良いかは改めて説明するまでもありませんが、一般的に➁顧客維持施策の効率は、①新規客獲得施策の5倍と言われています。そして本稿のテーマであるレスポンス広告が担うのは、残念ながら効率の良い②顧客維持施策の方ではなく、効率の悪い①新規客開発施策の方です。しかし、ここで憶えておいていただきたいのは、この二つの領域は「二つで一組!」であり、どちらか一方の選択はできないということです。なぜなら①だけをやっていては、ビジネスの黒字化は永久に望めません。しかし、逆に②ばかりやっていると、短期的には効率が上がりますが、次第に顧客ベースをやせ細らせてしまい、ビジネスはやがて消滅してしまうことになるからです。

図2:ビジネス全体の成果
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ビジネス全体の成果とは、図2に示したように、二つの領域の成果を掛け合わせたモノ(円柱の容積)になり、この最大化こそが、ビジネスの最終目的ということになります。

そして②顧客維持領域においては、MAやAIの導入により、今後の効率が高まることが期待できます・・・となると「二つで一組!」なので、②の領域の貢献により①の領域の相対的価値も引き上げられ、その中心的役割を担うレスポンス広告は従来よりも高いCPR(低いレスポンスレート)でも許容されるようになり、しかもより多くの投資が行われるはずです。

また、今日のダイレクトマーケティングにおいては、CPRやCPOだけでなく、LTV(生涯資産価値)も同時に管理されるようになってきているので、①②両領域の施策に対する投資配分の精緻化・最適化が可能になり、ビジネス全体の投資対効果や、売り上げや利益の最大化を実現させることができます。そして実はこの点こそがダイレクトマーケティングの最大の強みであり、それが、少し前に「この強みを活かすことが有利な展開に繋がります」と書いた理由です。

クリエーティブがレスポンスに与える影響?

次にレスポンスに対するクリエーティブの位置づけと役割についてお話します。一般広告におけるクリエーティブとは、作業全体の花、スターとも言えます。しかし一方のレスポンス広告におけるクリエーティブは、かなり地味な存在で、とくに全体の平均水準が上がった今日では、アイデア一発で劇的にレスポンスが改善されるといったことは、残念ながらめったにありません。

それは、リアル店舗の売り上げが、立地と品揃え、そして店舗面積で、ほぼ決まってしまうのと同様に、レスポンス広告の成果も、メディアと商品が決まれば、大体は決まってしまうからです。イメージ(態度形成)に対するクリエーティブの影響力はほぼ無限とも言えますが、レスポンス(行動促進)に対してクリエーティブだけで解決できる領域は意外に狭いのです。

ちなみに、レスポンス広告における業界の経験則では、レスポンスの4割は商品[*01]で決まり、次の4割がメディア、残りの2割の半分がタイミング、最後の1割がようやくクリエーティブによって決まるとされています。クリエーティブの影響力がたった1割と聞いて驚かれる読者も多いとは思いますが、私はタイミングとクリエーティブが同じ1割ということの方にむしろ驚きます。

なぜなら、たとえばUV化粧品のレスポンス広告を掲載するとします。そしてその掲載日が、梅雨入り前なのに、気温30℃超の真夏日!・・・に重なった場合、レスポンスは跳ね上がります。しかし、その掲載日が三日間の長雨、気温も20℃という梅雨入り当日に重なってしまったとしたら、レスポンスが期待を大きく下回ることは間違いありません。それは極端な例では!・・・と言う指摘もあると思いますが、この程度の幸不幸は日常的に起こるので、決して極端な例には当たりません。

また、タイミングがレスポンスに与える影響は、天候のように因果関係が誰にでも直ぐ分かる例ばかりではなく、競合の広告に足を引っ張られて下がる場合、逆に、影響力の大きな情報番組で、たまたま関連情報が取り上げられたことで引き上げられる場合さまざまで、事前に策を講じることは、もちろん不可能ですし、実際には、それらとの因果関係そのものが見逃されている場合の方が多いはずです。

さらに「レスポンス=衝動買いと同じ!」を思い出してください。衝動買いに理由はありません。つまり、UV化粧品のレスポンス広告に影響を与えるのは、そもそも合理的な理由、天候や競合の広告、情報番組だけでなく、あらゆるモノ・・・ダイエット食品やシェイプアップ器具、アパレル製品、旅行、あるいはがん保険等の金融商品、単に広告を見た時のターゲットの気分である可能性すらあります。つまり、総合的に考えれば、いわゆるクリエーティブがレスポンスに与える影響力は、実際は一割未満とするのが妥当(むしろ商品やメディアが過小評価され過ぎ)と、私は考えています。

レスポンス広告におけるクリエーティブの貢献?

あるとき担当していたクライアントの役員から「ニュークリエーティブのおかげで、CPRが20%も下がりました」とお礼を言われ、返答に困ったことがあります。レスポンス広告の成果はCPR(Cost Per Response=媒体費をレスポンス件数で割ったレスポンスの獲得単価)で評価するのが一般的で、この時CPRが20%下がったこと、そのタイミングにニュークリエーティブが投入されていたことはどちらも事実だったのですが、私が返答に困ったのは、CPRの引き下げに直接貢献したのは、実はニュークリエーティブではなく、粘り強い料金交渉により媒体社から大幅な値引きを勝ち取ったメディアチームの手柄ということを私が知っていたからです。

そして、このクライアントに対するクリエーティブチームの本当の貢献は、絶え間ない広告の見直し作業により、競合との激戦をしのぎ、その後も低い水準のままCPRを維持し続けたことの方にあります。

クリエイティビティではなく“改善”で作り上げる

レスポンス広告を制作することは、一般広告の場合に比べると、細かくて地味な作業の積み重ねです。しかし、何かをすると、必ずどこかに影響が現れるという、非常に手応えがあり、やりがいのある創造的な仕事とも言えます。

なので、レスポンス広告の制作にあたっては、過去の経験や知見だけでなく、店舗販売を含む競合先、その広告や販売方法など商品に直接関係のある事柄や世の中の流行や風俗など、間接的な影響を与えると考えられるターゲット周辺のあらゆる事柄に関心を払い、まずは、彼らの行動に影響を及ぼしそうな事柄に関する仮説を導き出します。

次にその仮説を証明するために、複数の広告案を制作し、そのうちの二案以上を実際に掲載します。そして掲載後に、それぞれの案のレスポンス比較だけでなく、それぞれのレスポンダー属性(性・年齢・職業・他)の偏りについての比較検証もします。

そしてそれらの結果が仮説通りであれば、さらにその仮説を進化させることで改善の可能性を検討し、もし仮説と異なる点があったり、レスポンスが期待を大きく下回るようなことがあったりすれば、原因の究明をし、その解決方法や改善方法(仮説の修正か、新しい別の仮説の構築)をします。

このように、レスポンス広告の制作作業というのは、クリエーティブというよりも、限りなく製品開発やその品質改善の作業に近く、それを突き動かしているのも、クリエイティビティではなく、PDCA、即ち「Plan」→「Do」→「Check」→「Action」に代表される改善プロセスの考え方です(図3)。

図3:PDCAの概念
image3また、一般広告のクリエーティブは広告を作り上げるまでが仕事で、完成し、掲載したクリエーティブに後から手を入れるということは滅多にありません。しかし、レスポンス広告の場合は、むしろ掲載された後の方が本番。抜本的リニューアルよりは、ファインチューニングの積み重ねの方がむしろ重要で、追加や修正を繰り返すことにより、初めて「レスポンス広告」は製品として完成します。

ダイレクトマーケティグにおけるレスポンス広告の役割、クリエーティブの位置づけと役割について、できるだけ分かり易く説明したつもりですが、なかなかわかりづらいはずなので、最後に、ここまで説明して来た事柄を前提に、両者の比較表(図4)を用意ましたのでお役立て下さい。

図4:一般広告とレスポンス広告の比較
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次回は「売る仕組みにおけるレスポンス広告の役割とレスポンスの意味」をご説明したいと思います。

*01 商品そのものの価値とする場合もありますが、レスポンス広告では実際の商品に触れられないので、広告から想像される商品価値ということになります。また、オファー(取引条件やプレゼント)も、商品の魅力に含まれるので、レスポンス広告においては商品価値の一部ということになります。

PROFILE

後藤 一喜(ゴトウ カズヨシ)

広告主、メディア、通販業、広告代理店等、さまざまな立場での実務経験と幅広い業種を担務した経験を持つ。㈱カタログハウス在職中は、商品開発や制作だけでなく、多様な通販実務を担当。その後、㈱電通ワンダーマン【現 電通ダイレクトソリューションズ】(企画推進部/クリエーティブ部・部長/執行役員)、㈱ユビキタス・コア(メディアマーケティング部長)、㈱電通イーマーケティングワン【現 電通デジタル】(ディレクター室・室長/クリエーティブ室・シニアマネージャー)を経て独立。現在は㈱B2B2Cにて、レスポンス周りのアドバイザーとして活躍中。

■ウェブサイトhttp://b2b2c.co.jp/

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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