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旧来型の美容院を変えるヘアサロン「アルバム」のこれからのマーケティング

いま、飛ぶ鳥を落とす勢いのヘアサロンがある。

 

価格コム創業者&初代社長で現オニカム代表の槙野光昭が運営する、ヘアサロン「アルバム(ALBUM)」だ。

 

2014年にオープンしたが、東京の一等地に次々とお店を立ち上げ、ホットペッパービューティーアワード2018でBEST SALON SILVER Prizeを受賞したり、ホットペッパービューティーでのクチコミが日本で一番多いなど、今一番勢いがある。

 

「アルバム」のコンセプトは、最新のトレンドヘアーを、毎月通えるお手頃価格で提供するファスト・サロン

 

コンビニが全国に5.6万軒、歯科医院が6.8万軒という中、美容室は実はその数倍存在しており、全国に24万点以上のオーバーストア状態。

 

普通に考えるとレッドオーシャンな市場なのだが、あえてそこに切り込んでいき、数年で実績を上げたサロンビジネスからも学ぶべきマーケティングのノウハウがある。

 

 

業界研究で競合のウィークポイントを探し、ポジショニングをする

 

サロンのコンセプトを決めたあと、立ち上げる前に、競合である低価格サロンを徹底的に研究し、3点のウィークポイントを発見。

 

低価格サロンでは大体が、「商材が良くない」「店内美化がされていない」「挨拶がない」の3点セットがそろっている。

いわゆる、安かろう、悪かろうな状態だった。

 

一方で、ファッションもフードもあらゆるものが低価格で高品質なものがでてきている。

安いの高い機能という、物の価値が変化しており、NRIはそれを「消費者余剰」と呼んだりするのだが、その消費者余剰の最大化を目指し、安いけど高クオリティなサロンを目指した。

 

「ブランドサロンと同じ商材でカラーリング」「ごみひとつ落ちていない行き届いた清掃」「挨拶の徹底」を全店舗で厳守したことで、競合の価格帯サロンとは差別化を進めていった。

 

安いけど高クオリティとは口では簡単だが、高クオリティのサービスを提供するためには、ハイスペックなサロン人材の獲得が必須だ。

 

「アルバム」では、その仕組みとして、正社員と業務委託を融合したハイブリッド型ヘアサロンとしての運営を行う。

 

 

ハイスペック人材の獲得・育成で、リピート客増加の好循環を作る

 

「アルバム」の多くのスタッフが業務委託で、フリーランスの美容師で完全歩合制だ。

 

アルバムでは、本体ブランド(銀座)とセカンドブランド(中野)に分けて両輪で運営している。

 

セカンドブランドでは業務委託サロンで最新のノウハウを学びつつ、正社員へそのノウハウを注入し、教育へ活かすという循環作りを行っている。

 

「美容師は給料が低い」というイメージが強いのだが、その背景にこれまでの美容業界は、オーナーが大きく儲けて若手が薄給という構図が出来上がっており、ここ最近、働き盛りの若手が完全歩合制でガシガシ稼ぐというトレンドができていた。

 

「アルバム」では、業務委託スタッフは売上の40-50%を報酬として支払い、技術力が高ければアシスタントもつけられる好待遇にすることにした。

すると、やる気があってどんどん働きたい腕の良いスタッフが「アルバム」にサロンを移り、人材のクオリティが徐々に上がるという人材の好循環をつくりだした。

 

そのため、低価格のサロンではあるが、やる気のある業務委託スタッフは、ここでは十分に稼げることができる。

 

一方で、生活者からすると、低価格で高クオリティのトップスタイリストに担当してもらえるので、リピート客はバンバンつく。

 

フリーで完全歩合制というと、新客がつきづらいとか不安なイメージがあるが、この好循環ができてくると、その日では受けられないほど予約がくるため、常に繁盛している状況になる。

 

高収入によるハイスペック人材の獲得→業務委託から正社員へのノウハウ共有→低価格・高サービスのコスパサロンのポジション確立→リピート客が年々増加というサイクルが、「アルバム」の強さだ。

 

ただ、業務委託をベースとしたサロンが増えだすと、その先はブランディングで差別化をしなくてはならないので、「アルバム」は、Instagramにいち早く目を付ける。

 

 

メディアの変化と共にブランディング、集客の新・勝ちパターンをいち早く発見

 

サロン業界は、まだまだアナログな業界でデジタルで効率化されていない業界。

 

これまで、女性誌やホットペッパーなどの業界紙での集客が大半で、昔からの付き合いで雑誌に載るため新規サロンは掲載されにくい閉鎖的な状況だったが、メディアの変化をうまくとらえてビジネスに活用した。

 

生活者が雑誌を読まなくなり、それがデジタルに置き換わるチャンスをみつけ、Instagramを中心にブランディング~集客をするように舵をきった。

 

ブランドやタレント、人気美容師のInstagram投稿を毎日チェックし、どのような投稿をしたらフォロワーが増えるかを研究し、うまくいっているのをみたら、完コピする。

 

投稿内容も、ヘアスタイルや動画、ハッシュタグの種類や数、言語、…と徹底して分析し、まるっと真似をして反応を試し続けることで、勝ちパターンを蓄積

 

都内の競合美容院のSHACHUが10万フォロワー、nanukが5万フォロワーの中、「アルバム」のフォロワー数は36万人と圧倒的だ。

 

 

ターゲットインサイトを捉えたクリエーティブ

 

他にも、これまでの成功モデルを疑い、ターゲットインサイトをきちんと捉えたクリエーティブも検討。

 

これまでのサロンは、モデルや芸能人にサロンに来てもらって、それを雑誌や店頭で紹介することでブランディングするという王道パターンがあったが、今の若年層は「憧れ」よりも「身近」の方が大切で、敷居を低くすることがクリエーティブにも求められる。

 

カットしているモデルの動画コンテンツは、Instagramでは後ろ姿しか載せず、情報を与えすぎないように工夫している。

 

「アルバム」は全社員でブランディングを進めており、広報担当がアルバムの公式アカウントを、各スタイリストは個人アカウントを運用し、F1層に向けてInstagramでの情報発信を進めている。

 

スタイリスト向けの撮影講習があるほどだ。

 

あるスタイリストは、1日5回くらい投稿しているが、その裏のデータもきちんと理解している。

 

チラシや業界誌など色々なメディアがある中で、Instagramが一番新客の獲得単価が安い

 

また、サロンという場所柄、業務の延長で動画の一次生産が可能なメリットも大きい。

 

コンテンツの為に撮影の準備をしなくとも、普段の業務をしながら、ブランディング~集客を兼ねることができるのだ。

 

 

コツコツと泥臭く、でも大切な声掛けを怠らない

 

デジタルを活用したビジネスで大体と言っていいほど、上手くいっている成功ポイントに、泥臭いアナログ作業をコツコツやるというのがある。

 

「アルバム」の強みに、ホットペッパービューティーの圧倒的なクチコミ量がある。

 

渋谷店では、6000件以上のクチコミが蓄積され、おそらく日本一のクチコミ数を誇る。

 

この仕組みは極めてアナログだ。

 

来店してくれたお客様一人一人に、よければホットペッパービューティーに書いてね、とアナログなアプローチを地道に行っている。

 

クチコミはほっておいてもなかなかたまらないが、生活者からすると、ホットペッパービューティーは、新しいサロンを見つける中でとても重要なチャネルになる。

 

「書いてくれたらいいな」という祈りのマーケティングから、「できれば書いてね」という人力アプローチでクチコミを集め、設立数年で人気サロンに登りつめた。

 

そして、まだまだ進化はとまらない。

 

 

一方通行から双方向コミュニケーションで顧客との関係性強化

 

これまで、サロンから生活者へのコミュニケーションはメールマガジンが主で、サロンのWEB閲覧履歴や検索履歴で生活者のニーズを探ることが大半だったが、個人の悩みや嗜好を直接理解しようとアプリで繋がるようにしている。

 

「IKINA」というアプリをリリースしており、サロンでのビフォーとアフターの写真を撮影し提供することで、どのように変化したか、自宅でどのようにセットすれば良いかがわかるようにした。

 

手作業だったお客様カルテをデジタル化することで、カットデザインやカラーのスタイリングアドバイス、担当スタイリストとのチャットで悩みにすぐ答えてくれる1to1マーケティングもできるようになった。

 

スタイリストと顧客の関係性が深くなるほどロイヤル化が進み、サロンは儲かり、スタイリストの給与は上がり、更に低コスト高クオリティのサロンが日本で増えていくという循環が出来上がる。

 

 

アナログな業界こそデジタル化することで、既存ゲームから脱却し、新しいゲームを自分たちが作れるということ。

そして、新しいゲームは誰もやっていないので先に勝ちパターンを作ったもん勝ちということがサロン業界でも見て取れる。

 

 

この考え方、個人的には保育園、幼稚園でも同じようなやり方が持ち込める可能性があるんじゃないか。

 

保育園、幼稚園ってまだまだ閉鎖的な世界で、例えば通っている園のことをSNSやブログで書いたりすると通っている親御さんからクレームが入り、本人が特定され、先生から削除依頼がきたりする。(身近でそういう人がいた)

 

だからといって、保育園や幼稚園自身が情報発信に積極的なわけではなく、消極的な所が多い。

 

ホームページで公開されている情報が少なかったり、何年前のホームページ?と思うようなハリボテ感あるホームページを今でも運用しているところがある。

 

まぁ、だからこそ、園のことを知っている塾や掲示板にいまでも人が集まるし、ママ友の会話という形のないネットワークに価値があったりするんだけど。

 

幼稚園受験の時は、願書提出に早朝や前日の深夜から並び、時間内かつ枠内に入れるようにしないと、受験のエントリーすらさせてくれない。

 

受験時間も事前にはわからず、願書提出時に初めて「あなたの受験時間は、今日の○時です」「今日は締め切ったので明日の○時です」と分かり、想定していた園を時間的に受けられないということが発生する。

 

この世界は、極めてアナログで非効率な世界が今でも続いており面食らったことがある。

 

サロンの「アルバム」のように、園でのデジタル化が進み、保育園・幼稚園のイベントや催し物、教育をSNSなどで情報発信するだけで、ブランディングが進み、生活者としても適切な情報が入り、選択肢が増えるのになと思う。(子どもの顔を載せるとなると色々危ないのでそこは載せないようにして)

 

願書提出や受験日の日程調整、合否通知などをデジタルで提供するサービスがでてこれは、園も生活者も非常にありがたいのに。

 

古くからある既存ビジネスでも、一つひとつ疑い、ビジネス構造を分解し、課題をみつけて再定義することで、新しい儲け方が見つかるんだよな。

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
BI・デジタル・ストプラ

 

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