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コラム

ソーシャルメディア活用先進企業に聞く

【ソーシャルメディア活用(8)良品計画】「店頭での接客と何ら変わりません」

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良品計画のWEB事業部 コミュニティー担当の川名常海さん(右)、風間公太さん(左)

今回は、企業として早くにツイッターやフェイスブックに取り組み、独自のソーシャル企画も次々に展開している良品計画のWEB事業部 コミュニティー担当の川名常海さん、風間公太さんにお話を伺いました。同社の「無印良品」ブランドとお客さまとの接点づくりの多様な事例とその背後にある考え方を紹介いただきました。

タイムセールでフォロワー1日1000人増加

――ソーシャルメディアに注目したきっかけを教えてください。

川名 2009年秋頃に風間と話をしていたとき、彼が「ツイッターを使ってみたい」と言い出したのがそもそものきっかけですね。

風間 当時はちょうど米国のオバマ大統領がツイッターを活用したことが話題になっていた時期でした。その頃私が担当していたECは、取り扱う商品数はとても多いもののCMやチラシで紹介される商品はそのごく一部でしかなく、より多くの商品を知ってもらいたいと考えていたときに「ツイッターは使えるのではないか」と川名に相談したのが始まりです。

川名 テレビCMやチラシ、店頭での紹介など、大きくプロモーションしていく商品はどうしても最大公約数的になってしまいがちですが、無印良品のブランドには、さまざまなストーリーをもった商品がたくさんあります。我々としてもそうしたストーリーをお客さまへ伝えていくことがブランドを強固にしていくと考えていましたので、風間の提案に対して「じゃあやろうよ」と。

――ツイッターの運用はどのような体制で行われているのでしょうか。

川名 初めも今も風間1人なんですよ。

風間 当時はツイッターを運営している企業も少なくて、本当に手探り状態でしたね。少ないながらもツイッターを活用されていたモスバーガーさんやTSUTAYAさんをお手本にしながら、どんな口調がいいのか、どんな温度感が無印良品に向いているのかを試行錯誤しながら取り組んでいました。

――運営に手応えを感じたタイミングはありましたか?

風間 大きな告知をしたわけではないのですが、情報感度の高い方々がフォローしてくれたこともあって、フォロワー数は順調に伸びていましたね。2010年2月にはフォロワー数が1万5000人を超えたので、「これは何かやりたいね」ということでタイムセールを実施しました。あらかじめタイムセールの予告をしておいて、予定の時間にタイムセール専用のURLを投稿したのですが、予告してから終了するまでの約24時間で1000人以上もフォロワーが増えました。ツイッターのようにリアルタイム性の高いプラットフォームではタイムセールがうまく合う、と感じました。

――その後フェイスブックも始められましたね。

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川名 フェイスブックを始めたのは2010年10月頃ですが、こちらはツイッターよりももう少しストック型の運用を考えていました。具体的には無印良品が運営している「くらしの良品研究所」との連携です。

くらしの良品研究所では、お客さまからいただいた意見をもとに商品を開発したり、お客さまに向けて無印良品の情報を発信したりという活動を昔から行っていたのですが、無印良品に愛着を持っていただいているファンの方々とは交流できていたものの、そこまでの熱量は持っていない方々に情報を届けられていないことを課題に感じていました。

「握手するくらいの距離感」を意識

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もっと無印良品が日頃から行っている活動を伝えたい、という思いを持ちながらフェイスブックを調査していたところ、APIで連携することで「いいね!」が拡散していったり、フェイスブックページと連携することでコメントを共有できたりと、今まではオウンドメディアで閉じていた活動が連携できそうだということがわかりました。しかも運用にかかるシステムコストも格段に低い。漠然と感じていたものが、フェイスブックを「機能」として使うことで実現できるのでは、と感じました。

なぜ「機能」だったかと言えば、始めた当時はフェイスブックがそれほど盛り上がっていなかったからです。けれど肌感覚として「これは盛り上がりそうだ」という認識がありましたし、API連携でフェイスブックを機能として使うぶんには運営コストも低くお客さまとつながることができる。その後、映画「ソーシャル・ネットワーク」が公開されたり、ビジネス誌がこぞってフェイスブックを取り上げたりと盛り上がりはじめ、「これは来たな」と感じましたね。

――ツイッターは1人で運用されているとのことですが、フェイスブックはどのように運用されているのでしょうか。

川名 ツイッターもフェイスブックも風間1人で運用していて、それも他の業務との兼任で担当しているんですよ。ソーシャルメディア運用専門の担当者がいるという他社の話を聞くとうらやましく思いますね。

風間 とはいえ、周りから思われているほど大変ではないんですよ。無印良品はそもそもコンテンツが豊富で、ユニークな商品もあくさんあります。先ほどお話ししたくらしの良品研究所もそうですし、店舗も1つのコンテンツです。伝えたい情報が集まりやすい環境なんですよね。

川名 ただし、情報の出し方には注意を払っています。ツイッターもフェイスブックも、興味がなければ見なくていいものではなく、お客さまのタイムラインやウォールへ表示される情報になる、つまりはお客さまにとって近しい人だけがいていい場所に我々の情報が表示されるということを意識しなければいけない。風間はそのあたりをよくわかっているので、単に商品が発売されました、安くなりましたというだけではなく、ホームパーティーに出席するようなイメージで運用していますね。

風間 お客さまとの距離感は重要ですね。お客さまと近づきすぎず遠すぎず、「握手するくらいの距離感」ちょうどいいと考えています。

――ソーシャルメディアを運営していて「これはうまくいかなかった」という経験はあったでしょうか。

川名 2011年1月に、無印良品有楽町店の10周年を記念したクーポンキャンペーンを展開しました。ツイッターとフェイスブックの両方で、「無印良品といえば、○○○」という投稿に答えてくれた人にクーポンを発行する、という内容だったので、結果としてもとても多くのお客さまに来店していただき、ソーシャルメディアを利用した店舗送客施策として、大きな手ごたえを感じました。この成功を受け、4月に同様の企画を世界規模で実施したのですが、ツイッターでは問題なかったものの、フェイスブックはインセンティブを誘引することが利用規約に反するという理由でアプリが停止されてしまいました……。当時はフェイスブックのキャンペーンに対する利用規約などもあまり知られていなかったのですが、いい勉強になりました。

――運営は1人とのことですが、今後の引き継ぎや人数強化の際に運用ガイドラインなどは策定されるのでしょうか。

川名 ソーシャルメディアの運用ガイドラインに書くべきことというのは、結局のところ「当たり前」のことばかりなんですよ。お客さまと接するという点では店頭での接客と何ら変わりはないですし、ソーシャルメディアだから特別ということもありません。

風間 「お客さまに面と向かって言わないようなことはソーシャルでも言わない」というだけですね。自分でわかることはすぐ答えますし、わからないことはお客様窓口を紹介したり、こちらで問い合わせたりと、お客さまにとって「近くにいる店員」という位置付けで考えています。

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