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マーケティング予算の2割をデジタルに――ヤフー・友澤大輔氏に聞く

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ヤフーは、7月1日付で「マーケティングイノベーション室」を新設し、リクルートや楽天でデジタルマーケティング部門を率いてきた友澤大輔氏が室長に就任した。新部署では情報発信を積極的に行い、日本のデジタルマーケティング全体の底上げをミッションに掲げているという。友澤氏に今後のビジョンを聞いた。

業界にイノベーションを起こす

Yahoo_友澤

ヤフー マーケティングイノベーション室 室長 友澤大輔氏

自社への貢献にとどまらず、日本のデジタルマーケティング市場の拡大に貢献すること、つまり業界全体を大きくしていくことを新組織のミッションとしています。具体的には、講演や取材対応、社内外の勉強会や個々のプロジェクトなどを通じて情報のインプット、アウトプットの双方を活発にしていきます。そのためには、これまで以上に積極的に顧客の声を聞いたり、さまざまなプレイヤーの参画を促したりしたいと考えています。

「マーケティングイノベーション室」は、ヤフー・ジャパンの広告業務などを担う「マーケティングソリューションカンパニー」内の一部門です。その中で、リスティング広告やディスプレイ広告などを担当する現業組織内ではなく、カンパニーを統括する志立正嗣・執行役員の直轄下にあります。すでにクライアント業務も含め、主に広告系のさまざまなプロジェクトにも参加していますが、現業組織ではどうしても目先の目標を追いかけてしまうことになりかねません。中長期を見据えた動きができるよう、あえて独立した立ち位置を与えられています。

ミッションについては具体的な目標があります。5年後の2017年までに、日本の広告宣伝費に占めるデジタルの割合を20%にするというものです。市場拡大によってヤフー・ジャパンの受け皿である広告商品を拡充していくことも私の務めですが、あくまでも業界にイノベーションを起こすことを第一に活動していきます。

ヤフーは「世界最大のオウンドメディア」

アメリカではすでに、マーケティング予算の約20%をデジタルが占めています。これは大手企業も新興企業でもさほど変わりません。一方日本のインターネット広告費は、制作費込みで14.1%(電通「日本の広告費」2011年)と言われていますが、広告宣伝費の上位を占める広告主のほとんどはテレビが中心で、実際はこの数字よりもっと少ないはず。マス広告を出せないベンチャーなどが積極的にデジタル広告を使っているに過ぎないのです。

国内トップクラスの企業は年間数百億円を広告宣伝費として使っていますが、その20%がデジタルに向けられるようになれば相当な規模になります。マーケティング戦略の中でデジタルが重要なポジションとなるはずですし、間違いなく専門の組織がつくられるでしょう。

前職のリクルートや楽天ではデジタル広告の比率がもとから高かったので、最適化などの新しい提案を次々に取り入れてくれる環境がありましたが、そんな企業はまだ少数派です。伝統的な上位企業がデジタルへシフトしていかないと、日本のデジタルマーケティング市場が大きくなりませんし、広告市場自体が活性化しないでしょう。このことはヤフーに入社するずっと前から課題に感じていました。

具体的には、ヤフー・ジャパンという「場」を最大限生かしていきたいと思います。一般的にはヤフーは「メディア」ですが、私たちを広告主ととらえれば、ヤフー・ジャパンは世界最大のオウンドメディアということができます。目標とするPVやUUを達成するためにディスプレイ広告枠を買うこともあるかもしれません。我々が試してうまく行ったことは、他の広告主にとっても何らかの役に立てることもあるはずです。具体的なインプット、アウトプットを回すために、自分たちで実験を進めていきます。また、広告主と共同でプロジェクトを進めるようなこともしていきたいと思います。

対話の場を増やすことが重要

これまでも海外、特にアメリカの情報を積極的に収集したり発信してきましたが、日本が目指すのは必ずしも同じような発展の仕方ではないと最近感じています。広告主があらゆるテクノロジーを使いこなして、独立して運営していくのがアメリカ流とすれば、広告会社やメディアとのパートナーシップが重要な日本はまた別のやり方が適しているかもしれません。

トラディショナルな広告主の中にもイノベーションを起こそうと取り組んでいる方がいらっしゃいますが、なかなか社内への説得材料が見当たらないと聞きます。その時にお互いどんな議論ができるのか、メディアや代理店は何ができるのか。それを互いがぶつけていくことが重要です。

私自身は第三者配信やO2O、アトリビューションといったキーワードを紹介してきましたが、言葉が一人歩きしてしまったようなところもあると感じています。勉強会などリアルな場で丁寧に伝えていくことがもっと必要かも知れません。正しく理解してもらったうえで選択できる状態にしていきたいと考えています。

ヤフーは4月からの新体制で「爆速」を掲げています。私の周りでもさまざまなプロジェクトが目まぐるしく動いています。以前は外からヤフーを見て、「もっとスピードを速めていくべき」「ヤフーが変わらなければ日本は変わらない」といったことを言ってきました。あらためて思うのは、この会社が持っているさまざまなものや、広告主のことを考えて取り組んできたことが十分に伝わっていないということです。

それがナンバーワンの美学だったのかも知れません。ただ、インターネットではナンバーワンかもしれませんが、マーケティング全体で見ればテレビがあります。新聞や雑誌もずっと歴史があり、別の面で訴求力を持っています。そのように考えれば、我々はチャレンジャーに過ぎないのです。

マーケティングがデジタルで完結することはほとんどありません。私自身もテレビや新聞などのマスメディアや店頭なども横断的にとらえながら、デジタルの果たすべき役割を考えていきたいと思います。(談)

(プロフィール)
友澤 大輔(ともざわ だいすけ)
1994年ベネッセコーポレーション入社、新規事業の立ち上げや商品開発に携わる。ニフティ、リクルート、楽天にて一貫してデータを活用したマーケティングを実践。2012年7月、ヤフーに入社しマーケティングイノベーション室 室長。デジタル技術を活用した新しいマーケティングを推進するLab的組織を担当する。講演や勉強会講師としての活動多数。日本のマーケティング業界全体の発展を目指す。