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60回目のADC授賞式、記念すべきグランプリはホンダ企業広告「負けるもんか」

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東京アートディレクターズクラブ(以下 ADC)による2012年度ADC授賞式が、12月10日東京・帝国ホテルにて開催された。

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永井一正氏が記念スピーチで、ADC60年の歴史を振り返った。

アートディレクターの専門的職能を社会的に確立、推進することを目的に、ADCが設立され、今年で60年目。それを記念し、授賞式ではこれまでのADC賞を振り返る映像を上映後、東京ADC「HALL OF FAME」(殿堂入り)である永井一正氏(日本デザインセンター最高顧問)が記念スピーチを行った。永井氏は日本におけるグラフィックデザインの歴史を振り返りながら、「東京ADC発足以来、現在にいたるまでさまざまな変遷があったが、人間優先、つまり生活者優先の姿勢を崩さなかった。いい広告、いいデザインとは何かという良心を絶えず携えてきた。普遍的な美、だれもが美しいと思うものを常にセレクトし続けてきた」とスピーチした。

本年度の応募作品数は8423点。これらの作品の審査には、ADC全会員が参加している。副田高行審査委員長は審査経過を報告する中で、「人の幸福を設計すること、それが私たちアートディレクターの仕事。例年は審査テーマは設けていないが、本年度の審査にあたっては、震災から1年、日本の再生を機能するアートディレクション、デザインを意識してほしいと審査員にお願いした」と話した。

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厳正なる審査の結果選ばれたのは、本田技研工業の企業広告「負けるもんか」のポスターとコマーシャルフィルム。受賞したのは、アートディレクター 河合雄流氏、フィルムディレクター 牧鉄馬氏、コピーライター 藤本宗将氏、フォトグラファー 内田将二氏である。

受賞者を代表して、河合氏は次のようにコメントした。「『負けるもんか』の広告は本田宗一郎さんの言葉。当時、ライバル会社や体制など世の中に対する反骨心から使っていた言葉だと思う。それを、いまの世の中に対する反骨心など持っていない人たちに伝えるにはどうしたらいいのかと考えた。そして世の中に対してではなく、自分自身に負けないというメッセージを伝えた方がいいという仮説をチームで立てられたことで、この言葉といまの時代との接点を理解できた。淡々と自己を振り返り、自分自身を超えていこうと一歩踏み出す。そんな姿に共感してほしい、という気持ちで広告をつくった」。オンエア後、この広告のメッセージはSNSを中心に広がり、制作スタッフの想像を超える多くの人たちの共感を得ることができたという。

乾杯の音頭はADC賞を受賞した佐々木宏氏(シンガタ)。

グランプリ受賞企業である本田技研工業常務執行役員日本営業部長 峯川尚氏は、「かねてよりホンダが持っていた若々しい、やんちゃなイメージが薄れてきているという危機感から、このプロジェクトが始まった」ことを明かした。「改めて本田らしさを考えたとき、創業者に由来するチャレンジ、反骨心、好奇心が本田を構成する重要な要素としてあげられ、それらを多面的に持つことが本田らしさであるという結論に至った。『負けるもんか』は反骨心をテーマとしたもの。若い世代だけではなく、幅広い世代から共感を得られたのはアートディレクションとコピーの力。また世の中の声が聞こえる前に、社内、OBなどの関係者から久しぶりに元気が出たという声が多く寄せられた。インナーを元気づけられたことも『負けるもんか』の大きな成果となった」。

授賞式の後、「HALL OF FAME」表彰式が行われた。本年度の「HALL OF FAME」は、これまでの業績と永年にわたり、日本の広告、デザイン界に貢献した栄誉を讃え、故石岡瑛子氏、故青葉益輝氏に贈られた。