コラム

100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。

R25式モバイルの失敗で学んだ「編集部」の限界

share

R25式モバイルの失敗

僕が在籍していたR25式モバイルは、月間1億PV、100万UUと規模的には決して小さくはないメディアでしたが、4年足らずであっさり潰れてしまいました。それにはいろんな原因がありますが、今思えば、時代が大きく変化しているにもかかわらず、旧来の編集手法にこだわりすぎたことが大きな敗因だったと感じています。

R25式モバイルは「ケータイポータルNo.1」の座を取るべく、ニュースや検索はもちろん、当時有料サービスの多かった着メロや電車の乗り換え案内なども、すべて無料で提供するサービスとしてスタートしました。いまでは考えられませんが、Yahoo!モバイルで「焼肉」と検索しても十数件しか出て来なかったような時代です。その後伸びていくと予想されるモバイル市場に、いち早く取り組んだメディアだったと、今でも思っています。

提供する情報の「質」にもかなりこだわりました。例えばニュース部門は、各新聞社、通信社から配信されるニュース記事すべてに目を通し、すべてにわかりやすく見出しをつけていました。他のニュースサイトでは「トピックス」と呼ばれるような、サイトトップに掲載する「目立つニュース」にしか見出しをつけません。1日数百本と送られてくるニュースすべてに対応するには、リソース的にもスキル的にもそれなりの体制が必要だからです。でも僕らはそれをやった。結果、難しいニュースや見逃していたニュースにも、興味を持てるようになったという評価を受けることになりました。

ケータイの進化によって、誰もが気軽に情報を得られるようになり、そのニーズを上手く捉えて成長を遂げようとしていたR25式モバイルですが、ダークホースの登場により、モバイル市場での勢力図は一気に塗り替えられていきます。モバゲーやグリーを始めとする、モバイルSNSという怪物です。

情報単価のデフレ

R25式モバイルは無料サービスですので、ビジネスモデルは当然「広告」となります。バナー広告なら、どれだけ露出(インプレッション)されたかに対して、広告主からお金をいただくモデルです。サービスがスタートした2005年当初、1インプレッション単価の想定は1円程度でした。これがモバゲーやグリーなどのモバイルSNSが台頭するようになって構造が激変します。

モバイルSNSのようなCGM型のサービスは、生み出すページ数の規模感がこれまでと圧倒的に違います。個人のつぶやきが毎日投稿され、ユーザーが増えるほどにその数は膨大なものになっていく。広告費はそんなに変わらないのに広告が載るページ数は増え続けるわけですから、情報単価は当然デフレになっていきます。表示されるメディアやページ、デバイスによっても違いますが、インプレッション単価は一気に10分の1以下の水準に落ちてしまいました。1インプレッション当たり1円で計算していたメディアが持つはずもありません。まさに量が質を超える瞬間でした。「限られた人数での編集部」でメディアを続けることに、限界を感じされられた苦い経験です。

NAVERまとめの目指す「編集の民主化」

メディアの機能は情報を編集して流通させることですが、情報爆発のこの時代、すでに「限られた人数での編集部」の手だけでは間に合わなくなっています。その一方で、個人のつぶやきのように、人々は「インスタントな情報」をそのまま摂取する状況に陥っている。情報を取捨選択して届ける役割を「編集部」が果たせないのであれば、「編集」そのものを人々に開放してもいいのではないでしょうか。

NAVERまとめは「編集の民主化」を目指すべく、まだまだ改善の余地はあるものの、編集のしやすいUI設計や、「ユーザーの仕事」に応じたインセンティブ制度などを提供してきました。サービス開始から3年経って、ようやくその兆しも見え始めています。そこで、次回からはNAVERまとめでの事例を踏まえながら、「編集の民主化」について考えていきたいと思います。

桜川和樹「100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。」バックナンバー

Follow Us