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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

なぜソーシャル時代のバレンタインで「ところてん」が売れるのか

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(1)売れそうなモノを売るのではなく、「こんなのどう?」と接客する

ちょっとしたマーケティング調査をしても「チョコろてん」の需要は出てこないと思います。また、単に受け身な商売人であれば、「近頃はところてんが売れない」と嘆くだけで、およそ「バレンタインにところてんを売りたい」という発想は浮かんでこないはず。ちなみに、「チョコろてん」が生まれる以前はバレンタイン用の商品として「ところてんとチョコのセット」をつくっていましたが、あまり手応えはなかったといいます。ソーシャル時代は、「好き」のこもった濃いコンテンツや丁寧につくり込まれた商品を「こんなの面白くない?」と接客することで価値を伝達していくスタンスが共感や感動を呼び、広がっていきます。

(2)アイデアは実行してナンボ

おそらく、「チョコろてん」というアイデア(ダジャレ?)を思いつく人は少なからずいると思いますが、実際にやってみる人は多くありません。たとえば、大企業のビジネスパーソンが「チョコろてんでバレンタイン商戦に参入」と企画書をつくっても、上司に「遊んでないで仕事しろ」と言われて終わり、となりがちです。それに対して、「中小企業の経営者×ネットショップ」という組み合わせのよいところは、「面白いかも!」と思ったらすぐにやってみる、というのがやりやすいところです。売れなかったら、ページを引っ込めればよいだけだからです。

(3)「420円は安い!」と言われる理由

チョコろてんのページを講演で紹介すると、ページの下部に出てくる420円という価格を見たときに「安い!」と言う人が多くいます。それを栗原さんに伝えたら、「ところてん屋からすると、ところてんで420円って高いんだけどね」と笑っていました。

比較対象が「バレンタインのチョコ」になったことで、「近所のスーパーで義理チョコを買っても500円はかかる」という相場感で見られるので、「安い!」となるわけです。自社の商品が「何と比べられているのか」「何と比べてもらいたいか」という視点は、意外と見落とされがちかもしれません。重要なのは、「何と比べてもらいたいか」は接客のしかた次第で変えられる、と知っておくことです。

連載にあたって。「自動販売機にはできない売り方」を考える

私はネットショップ店長さんの応援を14年近くやっている仕事柄、「最近、面白いネタない?」とよく聞かれます。ここのところホットなのは「自動販売機にはできない売り方」です。

というのも、Eコマースのスタイルは、大きく二つの道に分かれつつあります。「究極の自動販売機」型と「究極の対面販売」型です。

「究極の自動販売機」型は、低価格・送料無料・スピード配送・品揃え・ビッグデータを活用した高精度のリコメンドなど、便利さの価値を追求するスタイル。規模のメリットを強みとする、大企業に向いています。

これに対して、「究極の対面販売」型は、接客コミュニケーション・店長の商品愛や専門性を活かした魅力的なコンテンツなど、楽しさの価値を追求するスタイル。オーナーシップがあり小回りの利く中小企業に向いています。

多くの人にとって「Eコマース(EC)」のイメージは、自動販売機型のほうではないかと思います。しかし、この1〜2年、大企業によるECが本格化するなかで、中小企業が自動販売機型の道を進んでも勝ち目がなくなりつつあります。

では、「究極の対面販売」型を得意とする人はどこにいるかというと、「ネットショップを干支ひとまわり(12年)近くやっているような「老舗」です。「ネットでなんかモノが売れるわけない」と言われながら、価格でも知名度でも優位性のないようなモノを「接客」や「企画」によって売れるように工夫してきた人たちです。

しかしながら、数年前に「EC成長期」が訪れ、そのような手のかかることをしなくても、「売れ筋商品」と「セール・ポイントn倍」と「広告」で大きく売上を伸ばすことができてしまうようになりました。その結果、「究極の対面販売型」のお店にスポットライトが当たることは減っていきました。しかしECの成熟化やSNSの普及によって流れが変わり、らせんが一周まわって原点回帰するがごとく、「お客さんとのコミュニケーション」や「コンテンツマーケティング」が重要視されるようになっています。

そこで、この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機にはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していこうと思っています。

【『楽天大学学長が語る「EC温故知新」』は火曜日更新です】