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言葉に対する真摯な姿勢/カンミ堂──いま企業に求められるクリエイティブ・ライティング(3)

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言葉を使って意図・思いを伝え、相手の心を動かし、行動を促す。その能力は、宣伝・マーケティング部門はもちろん、広報、営業、総務、経理…企業におけるあらゆる部門で求められています。本連載では、言葉を磨くことで自らの仕事の質をより高め、より大きな成果をめざして取り組む担当者を取材します。

※『宣伝会議』にて、宣伝会議主催のクリエイティブ・ライティング講座と連動して連載中の「いま企業に求められるクリエイティブ・ライティング」より抜粋。本記事は2013年12月号に掲載されたものです。

カンミ堂の事例

カンミ堂の専任広報担当として、PR業務を担う庄司美香さん。
最近では広報の枠を超え、社内のあらゆるツールにおける「言葉」「伝え方」に関わることが増えてきたという。


カンミ堂 広報 庄司美香さん

文具や事務用品、ノベルティの企画開発・製造・販売を手掛けるカンミ堂。

同社の広報業務を担うのが、入社2年目の庄司美香さんだ。

幼少の頃から「言葉」で表現することに強い関心を持ち、小説の創作や、さまざまな文章を読んでは自分なりの表現を考えることが好きだった。6歳から16年ほど書道を習い、「書く」この造形的な美も追求。大学では文芸コースを専攻した。長年、書くことが生活の中心にあった庄司さんだが、執筆業だけでなく広報・PRという仕事への興味も持っていたという。

「中学生の頃、好きなアーティストが、メディアへの露出が少ないため世間に認知されず、それが正しく評価されることをも阻む現実があると知りました。良いものを作っても知られないのでは、もったいない。その思いが、もともと好きだった書くことと結びついて、広報への興味が湧いたんです」(庄司さん)。

社長への直談判で広報専任に

とは言え、当時の庄司さんには広報の専門知識もスキルもなく、何もかも手探りの状態でスタートしたという。初めてのプレスリリースは、昨年11月頃から開発会議にも出席し、商品への理解を深めながら少しずつ書き始めた。今年2月の完成までに、作成したファイル数は150にのぼった。

「少しでも変更したら上書きせず、新しいファイルとして保存します。その時はダメだと思った文章が、何日か後の自分にとっては『良い』と思える可能性もありますから」。

初めてのリリース作成と同時期に、企業サイトのリニューアルにも関わった。デザインを検討する段階から参加し、社内デザイナーとの議論を重ね、作り上げていった。

「リリースやサイトなど成果物が出ていくことで、社内での信頼も少しずつ得られていると感じられるように。この頃から広報としても、積極的に意見を言えるようになりました」。

現在の主な広報業務は、プレスリリースの作成、メディア対応、WEBサイトの更新、SNSの更新など。SNSは週1回は更新しており、メディア掲載情報・WEBサイト更新情報が主な発信内容だ。

「表現に失礼や間違いがないかなど、文章を練って書くことが身体に染み付いているので、気軽な文章を書くのは少し苦手(笑)。危機管理や会社としてのイメージについても意識しながら、読み手に良いかたちで伝えること、不快にさせないことを大切に考えています」。


写真左は新製品のプレスリリース(全5枚の1枚目)、写真右は昨年8月に配信スタートした商品取扱店舗向けのFAXマガジン「カンミ堂だより」。紹介している商品は同じでも、対象・目的に応じて切り口・表現を変え、伝わりやすい内容を考える。

それは、メディアやライターなどに送るメールでも同様だ。「メールのみでやり取りする方も多いので、そこでの信頼関係構築は重要です。メディアの先にいる消費者に誤解を与えない表現をとの思いから、細かく修正依頼をすることもありますが、依頼のメールをお送りするときは、いつも深くお辞儀をするような心持ちでいます。一つひとつのやり取りを大切に、受け取る方への感謝を込めた文章を書きたい」。どんなシーンでも受け手、言葉そのものに対して真摯でいたいと話す。

良い文章だけでは不十分

最近は、商品名や商品パッケージ、営業が配信する小売店向けのFAXマガジンなど、社内のあらゆる制作物について、文章の作成・表現を議論する場に参加することも増えた。


パッケージのキャッチフレーズの作成に、庄司さんもメインで参加。右端は男性、ほか2つは女性に向けたデザインになっているので、各対象に響くような言葉をそれぞれ設定した。

「肩書きに捉われず、そうした部分に関わらせてもらえるのは光栄」と庄司さん。その際に心掛けているのが、自社商品を徹底的に客観視することだ。「メーカーがつい忘れがちな視点ですが、そうすることで『伝えたいこと』と『伝わること』、そして『お客さまが知りたいこと』が見えてきます」と話す。

今年変更をした企業ロゴ、企業理念の文章も庄司さんが起草したほか、サイト内の社員紹介は、一人ひとりに取材して記事化した。「何年か後にも残っていく文章に携わる機会も増え、嬉しい反面、大きな責任も感じています」。

一方で、良い文章が書けるだけでは不十分とも話す。「たとえばプレスリリースは、忙しいメディアの方に読んでもらうため、写真素材やレイアウトがいかに重要であるかを痛感しています」。文章と、その内容を直観的に伝えることができるビジュアル要素とを組み合わせ、全体を構成するクリエイティブディレクションの視点も必要だと言う。「クリエイティブ・ライティング講座で学んだことや、実務で身に付けたことを活かし、今後も“良く伝わる”発信をしていきたいです」。

【オンライン・ライブで開催】
「宣伝会議」創刊60周年記念事業の一環として開講。コピーライティングのノウハウを基に、日常のビジネスで「人を動かす言葉の使い方」を学ぶ。
※「クリエイティブ・ライティング」は宣伝会議の登録商標です

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