コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

新しい視聴計測で、テレビは「おばさん化スパイラル」から抜け出せるか?

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【前回記事】「テレビのおばさん化がもたらしたテレビ局の深刻な状況を心の底から訴えたい件」はこちら

今後の視聴率の方向性が見えた!

前回の記事「テレビのおばさん化を訴える」が妙にバズって、ひょっとして誰かから怒られたり怒鳴り込まれたりしたらどうしようと少しビクビクしていたのですが。むしろ、テレビ局のけっこうえらい人が「世帯視聴率でやってると番組がF3に向くのは当然だ」と、記事と同じようなことをある場で言っていたので、そりゃそうだ、テレビ局の人のほうがひしひし感じていることだよなと安心しました。

それで油断して、アドタイの徳力さんの連載記事を気楽な気持ちで読んでいたら、突然「おばさん化」の記事が出てきて、授業中にぼーっとしてたらいきなり先生に指されてしどろもどろになった気分になりました。徳力さんも読んでいるとなると、うかつなことは書けません。そこで今回は前回の続きを、緊張感を保ちながら書いてみたいと思います。

実は前回の原稿掲載から一カ月の間に、テレビにとって重要なイベントが行われました。しかも2つ。11月18〜20日のInterBEEと、12月8〜9日のVR Forum2015です。

先に後者の話からしますが、VR Forumとはビデオリサーチ社が3年ぶりに開催した大きな催しで、同社の最新の取組みを紹介したり、業界の最前線の方々によるパネルディスカッションが行われたり。多彩な企画が続く中、もっとも重要だったのが「これからの視聴測定」の発表でした。

前回の記事では、「世帯視聴率だけを指標にしているとテレビがおばさん化しちゃうよ」と心の底から訴えたわけですが、まるでその答えを用意してくれたかのような発表でした。つまり、視聴測定をリニューアルしていきます、という宣言だったのです。具体的にはこんな感じです。

この図は、発表を元に私のほうで独自に作成したものです。関東地区の調査についてですが、ポイントは①母数を600世帯から900世帯に②タイムシフト視聴もリアルタイムと同じ調査対象に③テレビ受像機以外のデバイスでの視聴も対象に④ネットでの見逃し視聴も計測対象に、の4点。

ただ、これは2016年10月からで、その時点で①と②は「提供をめざす」とありますが、③と④は「データのあり方を検討」となっています。わかりにくいなあ、と思ってしまいますが、乱暴にまとめると来年10月の段階でネットでの計測は“検討事項”だと、いうことでしょう。さらにこのあと、翌年は関西・名古屋地区、さらにその後に他の地区へと徐々に広げていくそうです。ちょっと時間がかかる気もしますが、着実に日本中でほぼ同様の計測体制を整える。

この図を見た時、私の連載を前々から読んでいただいている方は、何かに似てるぞと感じたはず。そう、この連載のほぼ一年前の記事「テレビがテレビの枠を越えはじめた。そこでは新しい視聴計測が必要になる」の中で紹介した、アメリカ・ニールセン社の視聴計測の考え方を示した図です。

同じような取り組みなので、図も同じようになるのは当たり前です。ニールセン社も、アメリカで何年間もかけてようやくこの体制が完成しようとしています。時間がかかるのです、やっぱり。

わりと新しい事柄が進みやすいアメリカでも何年もかかったのですから、日本では「あの人がこう言っている」とか「向こうからこんな意見が出た、どうしよう」とか、業界内を調整しまくりながらもっと時間をかけて進めるのだと思います。そもそもネット視聴の計測の前に、タイムシフト視聴を計測したとして果たしてそれをテレビ局はマネタイズできるのか。スポンサー企業の人々との間に誰かが挟まって冷や汗かいたり、死にたくなるような思いをしながら、調整していくのでしょう。

だけど流れ的には、こうなります。それは結局、広告を出す側にとっても、メディアを運営する側にとっても、こう考えるしかないしこれを形にするしかないからです。そこをだらだらのんびり進めてると、徳力さんに、ほらやっぱり日本のマスメディア業界はジレンマに陥ってイノベーションできないんだね、と書かれてしまいます。

そして、この方向付けこそが、テレビを「おばさん化」の呪縛から解放するのです。ネットでの視聴計測をちゃんと行い、そこでの広告がセールスできるようになれば、そしてテレビ局がそっちでのビジネスが将来的には必要なのだと企業としてちゃんと認識して力を入れれば、テレビというメディアの状況がぐんと変わるはずです。

テレビがネットに本気を出したら、若者はテレビ番組を見るようになります。テレビ放送で見るかどうかは置いといて。その証拠になるかもしれないデータを見せましょう。

次ページ 「フジテレビの番組を若者がネットで見ている」へ続く

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