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若手に喝!ヤングカンヌPR部門の挑戦者に期待すること

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カンヌライオンズ内で実施される、ヤングライオンズコンペティション(通称:ヤングカンヌ)のPR部門日本代表のエントリー締め切りが、3月11日に迫っている。3月1日に開催された事前勉強会は、定員300人が事前申し込みだけで満席に。会場は熱気にあふれ、審査員や昨年の日本代表チームの話に耳を傾けていた。

左から、2016年ヤングカンヌPR部門 日本代表選考審査委員の遠藤祐さん(オズマピーアール)、尾上玲円奈さん(井之上パブリックリレーションズ)、鷲尾恒平さん(電通)

今回のヤングカンヌPR部門の参加資格は、2人1チームの両名が30歳以下であることに加え、「日本国内のPR会社、広告代理店・制作会社等のPR部門に在籍するか、PR関連業務に従事していること。PR関連業務に従事するフリーランスは可」とある。Cannes Lions 本部の応募要項では、参加資格はPR会社に限られているが、日本では業界特性を考慮し、広告会社などからもPR関連業務に従事する人であれば参加は可能だ。広告主は不可だが、対象者はかなり広い。

しかしながら、目の前の業務に追われ、エントリーする余裕などないと感じている若者や、カンヌはマーケティングPRを担当する人のための祭典だと思って、エントリーを躊躇している若手もいるかもしれない。

そこで今回は、ヤングカンヌPR部門の日本代表選考審査委員、遠藤祐さん(オズマピーアール)、尾上玲円奈さん(井之上パブリックリレーションズ)、鷲尾恒平さん(電通)の3人に、どんな若者のエントリーを期待しているか聞くと共に、熱いエールをもらった。

コーポレート・コミュニケーションの視座は絶対に必要

—カンヌライオンズと聞くと、アイデア勝負の印象が強いためか、マーケティング・コミュニケーションの祭典と思っている若者もいるようで、リスク対応やM&A、IR、調査といった、いわゆるコーポレート・コミュニケーションを担当している若手は、自分には「関係ない」と思いがちだと聞きました。

手段に溺れない! 「型」をぶち破る! (遠藤祐)

遠藤さん、以下、遠藤:たとえば、記者発表会をやってみたくてPR会社に入ったのに、配属されたコーポレート・コミュニケーション系の部署では毎日、論調分析ばかりで「地味でつまらない」と感じている若者がいるとしたら、残念ですね。その地味な作業の積み重ねが広い視野を培うので、コーポレート・コミュニケーション系の部署の若手も自分を試すチャンスとして、ぜひカンヌに挑戦してほしいです。特にヤングカンヌは、企画の勝負で、事例の勝負ではないので、手がけた事例をオープンにしにくいコーポレート・コミュニケーション系の部署の人でも、参加しやすいです。

—ヤングカンヌPR部門の課題は、社会的ですしね。

遠藤:そのとおりです。国連やNGO、NPOがクライアントとなり、世界が抱える社会課題がテーマになることが多いので、ヤングカンヌを制するためには、マーケティングだけじゃない、コーポレート・コミュニケーションの視座は絶対に必要です。

—コーポレート系の視点を鍛えられている人のほうが、実は有利かもしれないですね。

遠藤:コーポレート系の人は生真面目な発想をしないといけない、というバイアスがあるとしたら、それを取り払ってほしいですね。ヤングカンヌは、コーポレート系の視点を生かしつつ、発想力を鍛えるいい場になると思います。しかも、コーポレート事案は、ものすごくスピーディ。リスク発生時の動きなんて、必死で、悠長なことを言っている暇などまったくありません。そういう普段の業務で自然と培われる力も、時間制限の厳しいヤングカンヌに通じると思います。

メニューは企画じゃない!

—マーケティング・コミュニケーション系の若手にもアドバイスをお願いします。

遠藤:普段、マーケティング系のことをやっている人には「手段に溺れるな」と忠告したいですね。今の若手は、日々、たくさんの新興メディアが生まれ、新しいテクノロジーが開発され、という環境におかれている上、なにか面白い提案を、と求められるので、目新しい手段を「並べる」だけのメニュー表のような企画書をつくりがちです。しかも、その手段を使ったことのないクライアントに対して、それが売れると、「企画が売れた」と勘違いする可能性があります。これはダメですね。メニューは企画ではありません。手段や手法を体系的、複合的、構造的に組み合わせて使うことで、初めて「企画」が生まれるからです。自分のつくっているものが「企画」かどうか、ハタと足を止めて考えてほしいですね。

—ヤングカンヌは、普段の仕事を見直すきっかけにもなりそうですね。

遠藤:大切なのは、メニューの目新しさではなくて、本当に人に伝えたい根幹のメッセージです。それをプランニングの段階で突き詰めたのか、と問いたいです。仕組みもテクノロジーもあっていい。けれど、もっと「人」を見ないとダメだと思います。だって、私たちは、「人」に働きかけるわけですからね。その上で「その手があったか」という手法論がプラスされるわけです。メニューを使っている時点では、まだそういう発想に至ってないと思いますね。

PRパーソンの「型(あたりまえ)」をぶち破れ!

—企画を伝えるテクニック、という意味ではなにかありますか?

遠藤:つい、PR畑の人って書き込みすぎる傾向にあります。私もそうだったのでよくわかりますが、みんな「余白恐怖症」なんですよ。書いてあるとやった気になるし、データやファクトを示したいがために、つい、文字で表現したがります(笑)。でも、メディアって、たった一枚の写真で、現場で起きていることをわからせるという技量を持っていますよね。あらゆる読者に一発で伝わる、一枚の写真の力。それと同じことを目指すべきだと思います。

—1ページで、企画をわかりやすく伝える必要があるということですね。

遠藤:審査員の出身国やバックボーンが違っても、誰もがそうだよねってうなずけるアイコンやビジュアルをつかって、より多くの人に伝わりやすい企画書を目指してほしいです。そのためには「越境」も必要。PRパーソンであっても、アートディレクターのようなビジュアライズする能力は鍛えておきたいところです。

—PRパーソンの業務範囲や可能性を決めつけない、ということですね。

遠藤:PRパーソンはこれまで、メディアの報道切り口をいくつも想定して提示し、それをメディアの人に選んでもらう、という仕事をしてきました。つまり、ピントを広げるというやり方です。でもそれって、ある意味でピントがぼけているということでもありますよね。編集権も編成権もないので、最終決定権を人にゆだねるという、普段「あたりまえ」となっている仕事のスタンダードが、自らの意思で「これをわからせよう」と企画をビジュアライズする力や、「これがいい」と言い切る力を弱めている可能性があります。でも、意思がないメニューの羅列になってしまっては、世界はおろか、日本予選でも勝てません。

—ヤングカンヌで勝つには、日常の「あたりまえ」をぶち破る必要があるということですね。

遠藤:日常的に使っているメソッドが「型」だとしたら、それをどう破るか。一年に一回、普段の業務から離れて、「型破り