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ソーシャルグッドからの進化、カンヌ2017は「メイク・カンバセーション」へ — カンヌライオンズ2017レポート

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はじめまして。電通CDCの嶋野@カンヌです。
PRメソッドでつくるキャンペーンを中心に、最近だと「PRIUS! IMPOSSIBLE GIRLS」「プリウス試乗味プロジェクト」「同棲解消ホケン」「フリー素材アイドルMIKA+RIKA」などを制作しています。

いま、僕がカンヌ入りして二日目(6月20日)です。昨日までにPR、HEALTH、PHARMA、OUTODOOR、PROMO&ACTIVATION、PRINT&PUBLISHING、GLASSの授賞式と発表がありました。

※授賞式の様子。バーガーキングが来ていました。

根がストイックなせいか、朝から晩までずっと地下でリールみております。 そのせいか、現段階でも今年のカンヌの傾向の1つを強く感じました。(後半で全然違ってくるかもですが・・・その時はすいません。)

一言でいうと、「メイク・カンバセーション(Make Conversation)」。会話や議論を巻き起こすことを意図したコミュニケーション手法が多数グランプリを受賞しています。

数年前に起きた「ソーシャルグッド」旋風と一見似ているので違いがわかりづらいのですが、キャンペーンの設計方法は明確に異なります。

まず今日は「メイク・カンバセーション」の事例と、その背景をご紹介します。

A.「Fearless Girl」by STATE STREET GLOBAL ADVISORS
※現段階でPR、OUTDOOR、GLASSのグランプリ

 

アメリカの投資会社が「国際女性デー」に行ったアンビエント広告。ウォールストリートの有名なBULLの前に、立ち向かう一人の勇敢な少女の像をおいたものです。

B.「#」by Twitter
※「Fearless Girl」とともにOUTDOORのグランプリを受賞

アメリカ大統領選(トランプとヒラリー)や銃、「HANDS UP」(黒人が警官に撃たれた事件で発せられた言葉)、「メキシコの壁」など、その時のアメリカのホットトピックスの写真を用いたキャンペーン。「#」とツイッターのアイコンだけで理解できるシンプルな強さが印象的です。

グランプリをとったこれらの事例から、

1)社会問題から発想して、自社ブランドとのリレバンシー(関係性)を設計、
2)SNSで自分の意見や意思を発信する仕掛けをキャンペーンに内合し、
3)ブランドとユーザーの関与度を高めた

と言えると思います。もう少し具体的に噛み砕くと、

A.「Fearless Girl」by STATE STREET GLOBAL ADVISORS

「Fearless Girl」キャンペーンのクライアントは「投資会社」です。なぜ彼らが女性問題を提起するキャンペーンを?と考えた時、いまの時代を意識した広告戦略の在り方が見えてきます。

彼らの課題を推測するに、

  • ・投資市場において彼らのシェアは決して高いものとは言えず、競合も激しい業界
  • ・普通の広告をしても物量で負ける
  • ・他の投資会社とは違う、独自のポジションが必要

という3つが考えられます。

だからこそ、誰もが賛否を言わざるを得ないトピックスの中に自社のブランドメッセージを組み込むことにした。

そこで生まれたアイデアが「これまでのウォールストリートの象徴であるBULLに対抗する、勇気ある少女像(を建てる)」というソリューション。

既得権益だらけのウォールストリートで戦う自社の姿を、男性社会を前にしても勇敢に立ち向かう少女の姿に重ねたのです。

この像はすぐに全米中の話題になり、この記事に対して女性から圧倒的な支持の表明が行われました。もちろん反対する人もいるものの、熱烈に賛成する人が一部でもこの投資会社の姿勢に興味をもてばマーケティング的にも効果があるという読みがあったのだと思います。(実際にキャンペーンの結果、投資会社のファンドが300%以上アップしたそうです。)

B.「#」by Twitter

Twitterの事例は非常にシンプルなもので、2015年のiPhoneのOUTDOOR部門グランプリ(内蔵カメラの性能をアピールするために、iPhone6で撮られた世界中の写真の中からクオリティの高いものをそのままグラフィック広告にしたキャンペーン)に引き続きシンプルでわかりやすいOOHのキャンペーンです。

いま話題になるトピックスを徹底的にリサーチし、ものすごいスピードでそれを制作。数ある素材のすべてが、「いま」「みんなが議論している」内容を可視化するプラットフォームとしてのTwitterのリレバンシーのなせる技です。

両者に言えることは単に社会的に話題になるものをつくるだけではなく、人々の好き嫌いが別れる社会的話題を選んだ上で、ユーザーがSNSで自分の意見を述べ・会話が生まれる余地を残したのです。それは単なる「いいね!」よりももっと深い関与をつくったと言えます。

そして、社会性や規模の差こそあれ、これらの手法は決して日本とは無縁のものだとは思いません。宝島社さんがベッキーさんを起用したり、LINEさんがのんさんを起用したキャンペーンで「立ち上がる女性」を応援する姿を見せたり、お笑い芸人の西野さんが「絵本の無料公開」という手法で炎上を起こし、結果的に絵本の売り上げがアマゾン1位となったのと根本は同じものだと考えます。

日本だからできない、ではなく、勇気があれば日本でもできるキャンペーンです。

カンヌはよく、広告業界の未来の指針と言われていますが、いくつかの領域をまたいで見ることで、業界全体の進んでいく姿を見ていければと思います。

(次を書く余力があれば・・・)続く。

※今年は会場の前にSnapchatの観覧車ができてました。まだ乗れていません。

嶋野 裕介
電通 CDC コミュニケーション・プランナー/CMプランナー

1980年生まれ、大阪市出身。東京大学卒業後、電通へ。マーケティング局、営業局、デジタル局、シンガポール勤務などを経て、クリエーティブ局へ。デジタル&PR を中心にした統合ディレクターとして、さまざまな「コラボ」施策を実現。最近の仕事として「PRIUS! IMPOSSIBLE GIRLS」「プリウス試乗味ガム」「同棲解消ホケン」「フリー素材アイドルMIKA+RIKA」など。