コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

24年前の電通はこんなところだった(ゲスト:田中泰延)【中編】

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『白い巨塔』のシーンのように佐々木宏さんが歩いていた

田中:みんなめっちゃ働いてましたよね。僕が一番衝撃的だった事件は、新入社員の頃に佐々木さんが後ろに「佐々木軍団」と言われるコピーライター、プランナーたちを引き連れて、ドラマ『白い巨塔』の回診みたいに。

一同:(笑)

田中:電通の廊下を歩いてるの。横にいる人に「次の打ち合わせ何時からだ?」と言ったら、「えー28時からです」って。『25時の時計台、早稲田予備校』は知ってますよ。でも、28時は聞いたことないですよ。

そういう猛烈な人達がいっぱいいて、TVを点けたら、その人達がつくった広告がバンバン流れてくるから、こんなの俺何もしなくて食えるわと思って。

権八:ちょっとそこはわからない(笑)。飛躍してるよね。

田中:そこで偉い人に「バウバウ」ってやっとけば、絶対に食えると思ったんですよ。そうこうしてるうちに2年経過して、1995年に大阪転勤になったんです。配属された部署の局長が堀井博次さんで、堀井組。

僕の入れられた部が石井達矢さん。その後、専務になった田井中邦彦さん、中治信博さん、山崎隆明さん。こういう人のいる部にポンと入れられて、またTV点けたらその人達がつくったものが毎日流れてる。

権八:すごい人達ばかりですね。

田中:これは俺が東京で発見したメソッドは間違いないと。

権八:メソッドじゃねーし(笑)。

田中:絶対この人達と飲みに行って、「バウバウ!その企画バウ!最高です!」と言ってれば、次の日も会社行けるし、毎月20日に給料もらえるなと確信したんですよ。それで24年間来たので、間違いなかったです。

一同:(笑)

権八:本当ですか? 面白すぎるけど。

田中:今、原稿書いてインタビューされるじゃないですか。「田中さんは24年も電通のクリエイティブにいて、どういうCMをおつくりになったんですか?」と聞かれたら、「あまり記憶にない」と。

糸井さんが最初に声を掛けてくれたときも、東京コピーライターズクラブのコラムを読まれたんですね。「この人の書く文章は面白い。でもこの人がつくった広告は1つも知らない」と言われて。

中村:僕らからすると急にツイッターをガンガンやられるようになった印象ですね。電通や広告に関する質問をコピーライター田中泰延がお受けしますというもので、そこにガンガン質問が来るけど、全部すんでのところで面白く誤魔化して、結局のところ何の質問にも答えてないというのをやっていて。それが面白くて、NAVERまとめになって。

権八:今日も僕と澤本さんは5分ぐらい遅刻しちゃったんだけど、泰延さんは遅刻がお約束で、遅刻の理由のまとめもされてますよね。

田中:そう、これだけでも1つ持って帰ってください。

今日、権八さんと澤本さんは少々遅く来られましたよね。結構遅く。いえ、責めてるわけじゃないんですよ。かなり遅刻されましたけど(笑)

たとえば7時が待ち合わせだとします。会社を6時50分に出たら、出る時点で焦るじゃないですか? それは全くの無駄だということを覚えておいてください。

中村:どういうことですか?

田中:6時50分に出る時点で全く余裕なんですよ。まだ遅刻になってないですから。つまり、7時が来た時点で移動中に急に焦ればいいんですよ。

澤本:じゃあ焦る時間を短くすると。

田中:そうです。5時が待ち合わせでも、遠くにいて、2時間前から出ても間に合わない人いるじゃないですか。でも、2時間前から焦る必要は全くないです。とりあえずそこへ向かって、時計がポーンと5時になった瞬間に、「これやばい」と思えば焦りは最小限で済むわけです。

なぜかというと、5時にならない限り人は怒らないからです。

中村:これ完全にダメな人の発想ですね(笑)。

権八:要は世界に対する受容の仕方ですよね。延々何十件も屁理屈・・・屁理屈と言ったら失礼だけど(笑)、もっと難しい文章で言い訳しているときとかありますよね。

田中:えぇ、とにかく屁理屈で何とかしようと。でも、屁理屈を超えた言い訳というのもあるんですよ。笑福亭鶴瓶さんがおっしゃってたんですけど、5時から会議で到着が5時30分になってしまいました。大変な遅刻じゃないですか。そこをドアを後ろからソーッと開けて、すみません、渋滞で・・・とか言うと、けしからんなぁ、あいつ何なんだと。「5時半ですよ!」と言う人までいる。ところが5時半にドアをバーンと力強く開けて、アババウワー!って、声にならない声をあげて、とにかく焦ってるということを伝えれば大丈夫と。「ここ座って」「まだ大丈夫」「そんなに心配しなくても」と優しくしてもらえるというね。大事なテクニックです。

今日はこれだけでも持って帰っていただいて。

権八:あと、あれもありましたよね。遅刻の理由を言う前にもっとみんなが興味ある話題を言って、戸田恵梨香の足が・・・あ、今日はすみませんと。

田中:「そんな遅刻なんてどうでもいいよ、戸田恵梨香がどうしたの?」と言ってもらえるという。

あと、哲学に振るというのもありますね。ガチャっと入ってきて、「みなさん、この世界が5分前にできたということを証明できる人はいないんですよ。つまり、この世界はひょっとしたら、5分前に初めて生まれた世界かもしれません。ですよね、誰も証明できないですよね。みんなの心も、『マトリックス』という映画見ましたか? ここに肉体があると思ってるけど、違うかもしれないんです。どこかで線に繋がれて、みんなで夢を見てるだけかもしれないんですよ。そういうことを考え始めると、僕が会議に遅刻したというのが何だっていうんですか?」

一同:(笑)

次ページ 「田井中さんの「機嫌ようやっとるか?」」へ続く

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