コラム

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チームラボ代表 猪子寿之×坂井直樹 対談 ~脳を拡張するものに、人間の興味はシフトする

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自分を超越したものを、求めだす

坂井:猪子さんは、これから企業はどうなっていく、と考えていますか。

猪子:企業のことを考える前提として、社会はいわゆる国民国家からグローバルなものになっていくでしょう。もちろん地域によっては、より強固な国家主義をとる場所も短期的には出てくると思うんですけれども、大きな社会の流れの中では、大昔、封建社会から産業革命が起こって国民国家に変わったように、インターネットの情報社会が到来して、国民国家からグローバルという新しい社会にシフトして、情報革命によってグローバルになっていくと思うんですね。そうなってくると企業は、ある分野に対してグローバルなものしか残らない。

坂井:業種的なジャンルはある程度残っていく、それとも残らない?

猪子:ジャンルはぐちゃぐちゃになるでしょうね。むしろマーケットサイズに差が出ると思います。ニッチなマーケットなら、小回りのきく小さな企業でも、グローバルのトップになるといったことが出てくると思いますが、やはりグローバルな企業しか残らない。

一方で、個人間のやりとりっていうのが急激に増えていくと思うんですよね。例えば僕が仮にニューヨークに行ったとして、誰か泊まらせてほしいとソーシャルに書くと、人間関係がある人が、「その日だったら家おいでよ」と泊まらせてくれる。でもネット以前は人間関係も狭かったのでホテルに泊まっていた。

坂井:友人関係なら、お金が動いたとしても、表に出にくいですね。

猪子:はい。手渡しでいくらか渡しているかもしれないけれど、それは、表にでないお金。つまり企業ではない。ゆるやかな人間関係をもとに生まれたやりとりです。

坂井:昔からあるヒッチハイクなんかもそうですもんね。

猪子:昔からあるんですけど、いますごい勢いで個人間がつながって、お金のやりとりが発生しているので、企業のある範囲の事業は、そこに奪われていきます。この個人間のやりとりというのは、メルカリやAirbnbのようなC2Cサービスも含まれるけど、友達の誕生日会の料理をつくってもらう、のような表に見えないものすべてです。

そうしたやりとりが、今まで企業が提供していたサービスみたいなものを奪っていて、一方でハイクオリティの領域は、グローバルのトップ企業しか残らなくなっていって、ローカル、ドメスティックな企業っていうのはたぶん消えるんだと思います。

坂井:例えば自動車業界はどうなると思う?自動運転とかEVとかいろんな波が来ているけれど。

猪子:歴史から素直に学ぶならば、Uberみたいな会社が車を作る時代にだんだんシフトしていくのかもしれないですね。サービス側が乗り物まで用意するようになって、メーカーにOEMで作らせるとか。メーカーとサービス事業者の重要としているところが違いすぎて、いつの間にかサービス側が重要だと思って集中していたところが強くなって、今までメーカーが重要だと思っていたことがコモディティ化するみたいな日がくるかもしれないですね。

坂井:僕もその考えに近いですね。

猪子:グローバルな社会になっていったとき、どんなグローバルコンテンツが伸びていくのかと考えると、アートとサッカーとダンスミュージックなんじゃないかなと思っていて。

坂井:どれも言語がないですよね。

猪子:そう、言語がなくてグローバルなものです。大きな話をすると、産業革命は、燃やすとエネルギーが生まれる、みたいな物理現象から法則を見つけて、テクノロジーにして蒸気機関車や車を動かしたりしてきました。で、情報社会になると、そういう物理世界の話じゃなくて人間の脳の話になってきたと思うんですね。

ツイッターにしろ、フェイスブックにしろ、グーグルやiPhoneにしろ、脳を拡張しています。以前は物理的な世界が動く、みたいなことが産業の神様で、そして車を買うとか船を買うとかがお金持ちのステータスにもなった。でも今は脳を拡張し始めた時代なので、脳を拡張するものに人々は圧倒的に興味がある。

その一つがアートだと思います。もっと言うと、人間は脳によってなにか意味を見出したいという特性を持っています。昔はそれよりも「ごはんが食べられない」とか「遠くに行きたい」とか、必要に迫られることが多かったので、あまりフォーカスがあたらなかったけど、これからの時代は意味を見出すことにフォーカスがあたって、自分の存在を超越したような絶景だったり、自分の存在よりも長い歴史によって形づくられた文化遺産であったり、アーティストが人生をかけたアート作品であったり、そういうなにか自分を超越した自然だったり時間だったり、アーティストが意味を見出したものだったりを、人々はより求め出すんだと思うんです。

坂井:それはメディアにはのりにくいものですね。あるいは他者には表現が伝わりにくいものかもしれない。

猪子:伝わりにくいんだけれども、個人間のコミュニケーションが爆発しているので体験した人が薦めるんだと思うんですよ。実際、「チームラボボーダレス」の来場者は、首都圏在住の方が3割で、地方が3割、欧米を中心とした海外の方が4割です。そして半分の方がチームラボボーダレスを目的として東京に来ています。どうやってチームラボボーダレスを知ったのかアンケートをとると、1番多いのが対面で薦められた、なんです。WEB広告で知るよりも、対面で薦められて知った人のほうが多い。人に薦められて人は動くのです。

坂井:「おもしろかったから行ってきたらどう?」みたいに薦めるわけですね。そういえば、僕も言ってた。

猪子:なんらかの意味を体験しにアートに触れて、意味を感じた人が、うまく言葉にはできないけど、強く強く「行ったほうがいいよ」と言うことによって、新しい来場者が来るという。

坂井:対面のほうが信用できますもんね。この対談も対面で良かった。熱が伝わってきました。

対談者

猪子寿之 チームラボ代表

1977年生まれ。2001年東京大学計数工学科卒業時にチームラボ設立。チームラボは、アートコレクティブであり、集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、デザイン、そして自然界の交差点を模索している、学際的なウルトラテクノロジスト集団。アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、様々な分野のスペシャリストから構成されている。
https://www.teamlab.art/jp/

 

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