コラム

そのイノベーションが、未来社会の当たり前になる。

陳暁夏代×坂井直樹 対談 ~中国のサービスを世界が真似る日が来るとは思わなかった~

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遺伝子検査をしてみたら……

陳暁:2013年に日本に拠点を置いたんですが、一度日本でサラリーマンを経験してみようと思って、4年ほど広告会社に勤めていたんです。そこで、名刺を受け取るときのお辞儀の角度だとか、タクシーに乗る順番だとか、会社で教えられるビジネスマナーを知るのですが、ビジネスマナーというのは国によって大きく違うなと思いました。

ビジネスがグローバルになっていく今、お辞儀の角度のような「型」だけ教えていては通用しなくなります。だからもっと本質的なところを教育するべきなんだろうなと思いました。型だけを教わってもその背景や理由がわからないと日本を出た瞬間崩れます。なので私のセミナーや講演は世界にはいろんな型があることを知ってもらう目的でもやっています。

坂井:人から教えられた型だけをコピーするのではなく、その型がなぜ生まれたのか?を自分の頭で考えてくださいということですね。

陳暁:そうですね。日本はディベート文化も少ないし、教えられたことを守ることにはすごく強いんですけど、自分で考えて動くという教育をしていない。その結果学校でも、会社でも市場がグローバルになったとたんに戦えない若者が出てくると思います。会社の上司が、坂井さんのように海外でいろいろな景色を見てきた方ばかりならいいですが、そうではないですし。自分の頭で考えて、何が正しいのか見極めるようになれる人が増えるといいなと思います。

坂井:あと大きな単位で見ることも必要ですよね。文明研究家の村山節さんが、文明800年周期説というのを出されていますが、800年続いた西洋の時代が終わり、これから800年は中国をはじめとした東洋の時代になる、という説なんですよ。20、30年のトレンドの予測も経済においては重要だと思うけど、もっと長期の時間を考古学などから学び知識を得ることも大事ですね。そういえば僕、遺伝子検査をしてみたんです。その結果遺伝子のタイプがM8で4万年前は北方漢民族だということがわかったんです。大腿骨が細いのは馬に乗っていたからだとか。

陳暁:そんなことまでわかるんですか、私も漢民族です。

坂井:だから夏代さんと僕は、親戚だったかもしれない。

陳暁:占いより面白いですね。過去の歴史を勉強するのと未来を予測するのは等しいと思うんです。技術の進化に伴ってサービスや人の気持ちが変わっていくだけで、基本は同じだと思うので。ネット社会になってから、業界もミックスされてきて、メーカー×エンタメとか、インフラ×サービスとか、いろんな垣根がなくなっています。だから、ジャンルや型に固執すると新しいアイデアは生まれない。型を知りつつ、型を壊す、ということだと思います。

坂井:中国では、新しい医療系のサービスがたくさん生まれているそうですね。

陳暁:二人っ子政策が始まってから出産ブームですね。例えば妊活で病院に行きたくても、病院が足りないので新しい医療系のサービスが続々生まれています。

高齢出産はいままで中国にはなかった分野。結婚も早くて、だいたい20代前半でしているんですよ。これまでは結婚したら子どもを基本的に一人しか産めなかったけれど、二人産めるようになったので、まだ間に合う30~40代の女性の間で需要が生まれているんですね。

それに伴い国も法や制度を変えていきます。新しいサービスが生まれる背景には、いつの時代も急激な社会変化が伴っていると思います。日本でも問題意識を持ってる人はいるけれど、イノベーションが生まれにくいのは必要に迫られてないからだと思います。本当に迫られたら対応するはずなんです、誰かが。

坂井:国家がちゃんと意図的にデザインしているんですね。うまくいっていると思う?

陳暁:いまのところうまくいっていると思います。独裁型で。でもあの国土と人口だったら、独裁型が一番いいなと客観的に思いますけどね。逆にみんなの意見を聞いていたらキリがないかと。

坂井:企業も独裁型の方がうまくいっていません?

陳暁:決断のスピードが速いですからね。中国の企業はトップダウンとよく言われますが、トップダウンでいうと決裁権も各レイヤーで分かれていて現場の20代前半の子でも「この範囲までなら即日OK」とゴーサインを出せる。

私は、実は日本の企業のほうが、実質的には独裁だと感じていて、現場に決定権がないからボールを投げたときにすぐ跳ね返ってこないんですよ。中国は、独裁組織に見えるけど、大企業であっても、各レイヤーに決裁者がいるからボールを当てるところが合っていればすぐ返ってくる。その速度が今の中国と日本の成長スピードの差でもあるのかなと。

坂井:そうか、中国は規模が大きくなっても、ベンチャー体質なんですね。日本のマスメディアについて思うことはありますか?

陳暁:ニュース番組がバラエティ化しすぎている気がします。例えば中国の国営放送CCTVだと、ニュース、スポーツ、エンタメなどジャンルごとにチャンネルが分かれていたりと、必要な情報がいつも一定数あります。ですが日本のニュースはかなり報道の色がバラエティーに偏っていますよね。

坂井:それは僕も思うね。世界中旅行して帰ってきて日本のテレビを見るととてもドメスティックで、グローバルの重要なニュースが出てこない。

坂井 直樹 氏

陳暁:バラエティ番組はもちろんあっていいけれど、ニュースは脚色せずにニュースとして見せたほうがいい。そして日本のローカルニュースばかりでなく、世界のニュースももっと放映すべき。そもそもアナウンサーもかわいい女子である必要はなくて、その分野が得意な人をアサインすればいいと思うんです。メディアは国民を育てる一番の糧だから、そこから意識変革させていくの一番簡単なはずなんですよ。

国民を情弱化させるような、間違ったメディアの姿になっている。賢い人は自ら賢い情報を取りに行き、普通の人はどんどんダメになっていく。その格差が開くのが一番怖いですね。マスメディアの責任は大きいと思います。

私の場合は、主にTwitterでそういった問題提起をするようにしていますが、そうすると同じ意識を持った人がたくさん集まって来るのでとてもいいですね。

坂井:夏代さんのような人がガンガン発言して、新しいスタンダードを切り拓いてほしいと思います。とても期待しています。

陳暁夏代(ちんしょう なつよ)
DIGDOG代表/CHOCOLATE執行役員

内モンゴル自治区出身、上海育ち。幼少期から日本と中国を行き来する。上海・復旦大学在学中からイベント司会・通訳を行い、その後上海にて日本向け就職活動イベントの立ち上げや日系企業の中国進出支援に携わる。2011年より北京・上海・シンガポールにてエンターテインメントイベントを企画運営。2013年東京の広告会社に勤務。2017年、DIGDOG llc.を立ち上げ、日本と中国双方における企業の課外解決を行い、エンターテインメント分野や若年層マーケティングを多く手がける。2019年よりコンテンツスタジオCHOCOLATE Inc.で、オリジナルコンテンツの開発やグローバル展開の仕組みづくりなどを担当している。

 

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