コラム

そのイノベーションが、未来社会の当たり前になる。

ウンナナクール塚本昇社長×坂井直樹 ~ブランドの独自性はどうつくる?

share

女の子の人生を応援する、接客・ホームページ

坂井直樹氏

坂井:ところで、ウンナナクールの従業員の方は、ほとんどが女性と聞きましたが、働き方改革などは意識されていますか。 

塚本:働き方改革とまで言えるかどうかはわかりませんけど、販売員教育については意識しています。「ウンナナクール」というブランドは、“商品”と“売場”と“販売スタッフ”、あと“プロモーション”で構成されていますが、リブランディングをしていくうえで、一番時間がかかると思ったのは、販売スタッフにかかわる部分でした。販売スタッフは、採寸をして、フィッティングするといったスキルを身につけるだけでなく、気持ちの部分でもウンナナクールらしさを出せないかと考えたんです。

販売スタッフが「下着を提案することで、女の子の人生を応援してます」と言えるには、どんなことをすればいいんだろうと。ほかにも、例えば、デザイナーは下着をデザインすることによって女の子の人生を応援してますと、僕も、会社を経営することによって女の子の人生を応援していると言うにはどうすればいいのか。それを考えるようにしましょうと全ての従業員に話しています。

それから、ウンナナクールの商品は、ワコールがもっとも得意としているところからは、ちょっと外れたような下着を中心に扱っています。例えば、「すごく盛れるブラが欲しい」とか「ガードルやボディスーツみたいなものが欲しい」「セクシーな勝負下着がほしい」とお客さまに言われた場合は、お客さまのために他のお店をすすめましょうと販売スタッフに言っています。リブランディングで商品配置を再度設定する時、よくポジショニングは、漏れなくダブりなく、と言われますが、僕は、「ダブりはダメだけれど漏れはあってもいい」と言いました。

要するに、ウンナナらしさとして抜けていてもいいと。無理矢理空いているところを埋めて行くようなMD構成はしないでおこうということです。販売スタッフの教育にも同じようなことが言えるのかなと思っていて、他のブランドの商品なのに気持ち良く紹介して貰えたと、お客様からもお褒めの言葉をもらったりします。

坂井:ウンナナクールは、ワコールブランドの中でも独特な存在なんでしょうか。

塚本:ワコールの中で言うと、抜けてるところに入ったのがウンナナだったのかなと。ワコールでは、今までこういう売り方はなかなかできなかったと思うので。

坂井:なぜそういうことを言ったかというと、トヨタ自動車が「WILL」というトヨタのマークのない商品を出した時、一定の意味はもちろんあったんだけれども、だんだんと「小さなトヨタ」になっていったなと思っていて、ブランドを打ち消すというのは、意外と難しいことだと思います。

塚本:そうですね。僕の中で、ここ2年ぐらいで「独自性」についての考え方が変わりました。ブランドである以上「独自性」=「他にないもの」を追求しようとすると、「他になければいいのか」とかえって変な方向へ行ってしまったりする。そういうことで独自性を持たせようとするのではなく、ペルソナやブランドのステートメントなど、社員全員が共通してもてるブランドらしさのフィルターがあれば、他と同じ物はできないのではないかと考えるようになりました。結果としてデザインや機能が似ていても、ウンナナクールらしさが凝縮して独自性がでるんじゃないのかと。

さっきの「364ブラ」にしても、ノンワイヤーで軽いつけ心地の、アウターに響かないというコンセプトのブラは、世の中にいっぱいあります。でも「特別な1日以外のためのブラ」という切り口でアプローチしているのは、ウンナナクールしかないと思うんです。その『らしさ』が結果として独自性になったのではないかと。

坂井:千原さんとは今後どんな挑戦を?

塚本:千原さんにお願いしてから、いま3年ぐらい経つんですけど、もう少し先までマイルストーンを置いていこうと考えています。将来的には、「千原さんって、あのウンナナクールの千原さんですよね」と言われるようになっていてほしいなと思っています。

坂井:ワコールとは異なるコンセプトと発想でつくっているんですね。そうじゃないと別会社の意味がないですし、やるべきチャレンジですよね。

塚本:僕らが別会社である意味は、経営者と社員が近いからこその機動力にもあるかなと思っています。変えようと決めたらすぐにできてしまう。コラボレーション商品も高い機動力で実現してきました。

今は、ホームページのリニューアルに取り組んでいます。ある時、千原さんから「このホームページは、女の子の人生を応援することになっていますか」と指摘されました。今のホームページは、商品と開発秘話が載っていて、良くも悪くも普通の作りになっているなって。より多くの女の子と深くつながるホームページにするために、トークショーを始め、その内容をホームページに掲載しています。

坂井:誰かと対談するのですか。

塚本:はい。千原さんとゲストが対談する形式です。1回目には、川上未映子さんにいらして頂き、ウンナナクールのステイトメントのことや、女性の生き方みたいなところを話してもらいました。

坂井:川上さんは、小説家ですし、いろいろな言葉で送ってくれた女の子への応援メッセージは、女の子にとってきっと心強いですよね。

塚本:トークショーの最後に、聞きに来ていただいた方とのセッションの時間も作っています。女優のMEGUMIさんがゲストの回で、ある女性から「自分は飲食店でアルバイトをしているのだけれど、本当は下着屋さんで働きたいんです」という話がありました。その女性は、普段、なかなかそういう場所で手を挙げる勇気がなかったらしいんです。でも、MEGUMIさんのお話自体が、「失敗してもいいから、思ったことはどんどんやっていこうよ」というような内容だったので、勇気を出して手を挙げてくれたんですよ。

そしたら、千原さんが「このイベントは下着屋さんがやってるんだから、後ろにいるスタッフにそのことを言ってみたら」って言って。実はいま、彼女はウンナナクールの吉祥寺店で働いてるんですよ。トークショーに参加したことをきっかけに、うちで働きはじめたんです。20人から50人ぐらいしか入れないようなこじんまりとしたトークショーなんですけど、ライブならではの手応えが生まれています。

トークショーの内容をウンナナクールのホームページ上に載せているのですが、一見、下着ブランドのホームページか分からないくらい、下着だけではなく、お客さま(女の子)たちの欲しい情報がある場所という認識をしてもらえるような、メディアに近いものにしていきたいと思っています。

坂井:対談相手としてのんちゃんにも出てもらったらいかがですか?

塚本:ぜひお願いしたいですね。

坂井:サロンのような場になって、商品以外でも女の子の人生を応援するというメッセージが伝わるといいですよね。

塚本:「女の子の人生を応援する」ために、会社でできることをもっとどんどん考えていこうと思っています。ありがたいことに、ブランドのスタート時からファンでいてくださる方もいらっしゃるんですね。当然、お客さまも年齢を重ねていきます。ウンナナクールは、もともと20代半ばの女性をターゲットとしていましたから、15年ぐらい経ってくると、30代後半とか40代のお客さまが出てくるわけです。

そういう方たちのライフステージに合わせて商品を考えて行くと、ブランドらしさというものがどんどん薄まってきたことがあって。これはまずいなと思いました。ウンナナクールは、ペルソナの年齢は設定しているのですが、同時に非常に幅広い女性に支持していただいているブランドでもあります。そこで、誰々向けみたいな決めつけのようなことをするのはもうやめようと考えました。例えば、パジャマなんかだと、70代、80代の方でもファンになって着ていただいている方がいるんです。

「このパジャマのこのポケットが最高なのよ」って。本当にありがたいと思っていますし、それでいいと思っています。でも、80代の方へ向けて商品を作ろうとしてしまうと、ブランドらしさがおかしくなって来てしまいます。以前は、商品を企画する時にウンナナクールらしい雑誌をプロットしてデザインを作っていました。この雑誌を読む人は、こういうものが好きだよねとか、こういう雑誌ではこういうモチーフが取り上げられているねとか。でも、それって結局、マス・マーケティングなんじゃないかと。

今は、「ナナちゃん」というペルソナを設定していますが、そのひとりのペルソナを全部通そうということでやっています。それと、ブランドは企業がやっているものなので、年月が経つと人員も変わって行ってしまう。それでブランドの方針が変わってしまうと困るので、千原さんには長期に密接にかかわってもらいたいです。

坂井:企業の中の人が変わるのは、どのブランドでも抱えている課題ですね。

塚本:トークイベントは、ブランドらしさを確認する場でもあるんです。お客さまがウンナナクールの何を好きだと思ってくれているのか、こんなことをするウンナナクールは嫌いだとか、生の声も聞かせてもらえる。それは僕らもとても勉強になり励みになります。

坂井:従来の下着ブランドとは異なる着眼点が、ファンを広げることになりそうですね。

塚本昇氏

2003年ワコール入社。2011年ワコールアメリカ出向、2015年よりウンナナクールの販売部長を務め、2017年4月にウンナナクール代表取締役社長に就任。同年から「ウンナナクール(une nana cool)」のリブランディングを実施。

 

Follow Us