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Apple、Nike、Starbucksにパーパス・ドリブンな変革を行う専門家3名が答える、経営者が向き合う4つの悩みと処方箋【前編】

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世界を襲うコロナショックを契機に、人々の生活や価値観、ビジネス慣習が大きく変わり、これまでの延長線の事業戦略では立ち行かなくなりつつあります。そこで注目されているのが、その企業の存在意義、つまりはパーパスを見つめ直すこと。自らの存在意義に立ち返れば、変えるべきところ、そして変るべきではないところも明確に見えてくるからです。
 
では、パーパス・ドリブンな組織変革とはいかにして実現すればよいのでしょうか。現在、多くの企業が直面しているであろうこの課題を解決するため、宣伝会議では、より実践的な企業変革のアプローチ方法を学べるオンライン特別講座『Becoming a purpose-driven organization』を9/25(金)に開催します。
 
特にパーパスを軸とした企業変革は、欧米の企業が進んでいるため、本講座ではStarbucks、IBM、Apple、Nike、Facebook、オバマ財団といった世界的に影響力のある企業や組織にパーパス・ドリブンな組織変革を行うSYPartners(米国・サンフランシスコ/ニューヨーク)の3名が講師として登壇。4回にわたる本連載では、講師を務める3名が講義内容を一部紹介する形で、パーパス・ドリブンな組織となるための本質を解説。
1回目となる本記事では、パーパスに関して企業経営者から寄せられた4つの悩みにお答えします。

SYPartnersとは?

過去25年以上にわたり、パーパス・ドリブンなトランスフォーメーション(組織変革)の実現を支援するリーディングカンパニーとしてStarbucks、IBM、Apple、Nike、Facebook、オバマ財団といった世界的に影響力のある企業や組織との取り組みを行う。

Jarin Tabata, Principal

イギリスで自身のスタジオを経営したのちニューヨークに移り、クリエイティブディレクターとしてSYPartnersに参画。IBMとのグローバルな組織文化と行動変容のためのプロジェクト、“高齢化”を新たな視点で捉え直すIDEOとの取り組み、Aoyama Treehouseとのマインドフルネスやイノベーション、空間設計のプロジェクト等をリードしてきている。

 

Aki Shelton, Principal, Brand Design

Moving Brandsでエグゼクティブ・クリエイティブディレクターを、Apple(米国本社と東京支社)でクリエイティブディレクターを務めたのち、SYPartnersへ参画 。多様な専門家が集まるチームを率いて、Uniqlo, Nike, Google,Weight Watchersといったクライアントのためにパワフルな体験や戦略を生み出してきた。

 

Takuo Fukuda, Senior Designer

スタンフォード大学で組織文化デザインの修士号を、京都工芸繊維大学でインタラクション・デザインとエスノグラフィー・リサーチの修士号を取得。softdevice(京都)やIDEO(パロアルト)を経て、SYPartnersへ参画。Google、IBM、GE、Starbucksといったクライアントと共に組織変革に取り組んできている。

 

※本記事の下部には、英語版の質問と回答も掲載しています。

Q1:パーパス・ドリブンな企業に進化する、本当の価値は何でしょうか?
またアメリカにおけるパーパスに関する最新動向を教えてください。

Jarin Tabata氏(以下JT):アメリカでは、企業にパーパスが必要だという考えが、ここ5~10年で主流になってきました。その背景としては、行き過ぎた資本主義経済への反動から、企業は、自社だけでなく社会をより良くする存在であることが求められるようになっていることがあります。

しかし、企業が掲げるパーパスの中には、問題のある組織文化や行動を隠すためのカモフラージュとして、間違った使い方をしている事例もあります。

私たちは25年以上、グローバル企業と、その企業のパーパスを見つけ出し、それをビジネスの中心に据える取り組みを行ってきました。そうすることで企業文化やブランド価値、経営戦略を変革することができるからです。その企業のすべての活動に組み込まれ、従業員に実践されることによって、パーパスは効果を発揮します。

Aki Shelton氏(以下AS):前述のケースの他にも間違った活用として、スローガンやキャッチコピーなどの表層だけを良くするリブランディングの手段として使用されることがあります。これらの方法は、ソーシャルメディアがない時代では有効であったかもしれませんが、企業活動の透明性が高まった現代において、有効とは言えません。例えば、従業員の方が、タグラインで謳っていることと、自社の実態が乖離していると声を上げれば、それを偽り続けることはできないからです。

日本でも話題になったと聞いている事例では、Uberの前CEOが支配的な体制を取り、セクシャルハラスメントが横行したスキャンダルがあります。その後、新CEOの体制となったタイミングで、新しいスローガンと共にリブランディングが表面的になされました。しかし、どれだけ良いことを言っても、実態としての企業文化は未だ改善されていないことで、かえって炎上が大きくなってしまいました。

他にも、スターバックスの店員が数年前に人種差別をして、来店客を店から追い出すように警察に通報することがありました。なお、その後同社では、SYPartnersとともに、全従業員を対象に、人種差別を防ぐ研修を手厚く行い、レピュテーションを取り戻しています。

パーパスにあった企業の実態を実現することに成功した事例のひとつにウェイトウオッチャーという、ヘルスケア企業があります。以前は、その企業名の通り、「体重を管理し、ダイエットにつながる」価値を提供する企業でした。それが、新CEOに交代したタイミングで、このCEOは「あらゆるウェルネスの機会を提供するヘルスケア企業」になるという思いを持っていました。

しかし、以前から知名度が高かった企業ゆえに、なかなか自社の存在意義が刷新されたことについて顧客や市場の理解を得るのは難しいことでした。同時に、従業員自身も、なかなかその変化を体感することができず、各サービスに、そのパーパスが実装されないことが悩みとなっていました。

そこで私たちは、パーパスに対する理解を促し、日々の実務に反映させるための複数の施策を実施。結果として、パーパスに見合った価値提供が可能となり、そこからは好循環が続き、具体的な数値は申し上げられないのですが、株価も驚くほど高まることになりました。

Q2:パーパス・ドリブン(な組織)とは、どんな状態ですか? その定義が知りたいです。

JT:パーパス・ドリブンな組織とは、以下のような組織です。

・自社がなぜこの世の中に存在しているのか、ということを俯瞰する視座のある組織

・パーパスが常に企業の中心にある組織。企業文化、経営戦略、業務システム、業務プロセス、従業員のバリュープロポジション、ブランド、環境。言い換えるとその企業の全ての中心にパーパスがおかれている組織

・部署も役職も横断したすべての従業員に対して、アドボカシー、クリエイティビティ、イノベーション、魅力、リテンションが感じられるようにインスパイアされている組織

・価値を創造し、エンゲージメントを強め、変化を起こすパーパスを世の中に示せているような組織

Takuo Fukuda氏(以下TF):パーパスドリブンな企業で働いている方と話すと、彼らの言葉からそれが感じられます。「自分はより大きなインパクトのあることに取り組んでいる」と話すのです。こうした方々は、個人のミッションと、企業のパーパスを重ね合わせることができています。自分の仕事について説明するとき、人それぞれ言い方が異なったとしても、こうした方々からは、共通の大きな目標に向かって働いているということをひしひしと感じます。

一方で、まるでそう言うように指示をされているかのように、全従業員が全く同じ言い回しで会社のことだけを話していると、本当にパーパス・ドリブンな状態なのか疑わしく感じるかもしれません。

AS:パーパスが行動に結びついていなければ、壁に掲げられた標語と変わらず、効果がないと考えます。パーパスは、地図のない時代の航海における道しるべのごとく、個人にとっても、企業にとっても、より良い意思決定を促します。

次回は、Quesiton3(自社のパーパスを導き出すには?)、Quesiton4(競合との差別化ではなく自社の本質的な価値に立脚するには?)の回答を公開予定です。

講座の詳細・お申込はこちら
 
本連載のもとになり、より実践的にパーパス・ドリブンな企業変革のアプローチ方法を学べるオンライン特別講座『Becoming a purpose-driven organization』を9/25(金)に開催します。あわせてご活用ください。

Q1.Could you teach us the latest trend around “Purpose” in the US? (I would like to know how other companies approach and work on their purpose.

JT:
In the US, the idea that companies need a purpose has become mainstream in recent years. Unfortunately, some are using purpose as a mask for toxic cultures or ethically questionable activities. As you know, for over 25 years, SYPartners has been helping organizations find their purpose, share it with the world, and put it at the core of their business—in order to transform their culture, augment their brand, and shape their strategy. Purpose works when held with integrity, and when connected to all aspects of an organization.

AS:
I agree with Jarin on how companies in the US use ‘purpose’ to mask toxic culture or as a marketing tool like a company tagline, part of rebranding to put the nice wrapping paper around everything. This approach might have worked before social media, but as everything becomes transparent these days and employees more vocal, you can’t pretend about who you are if your internal culture doesn’t match. For example, look at what happened to Uber or WeWork.

Q2.From SYPartners’ perspective, how does it look to be in the state of purpose-driven or to be a purpose-driven organization. (I would like to understand the definition of “the state of purpose-driven” or “a purpose-drive organization.”)

JT:
A purpose-driven organization:

—Views its purpose as an expression of why the organization exists in the world.
—Places its purpose directly at the center of its culture, its business strategy, its systems and processes, its employee value proposition, its brand, its environment…in other words, everything.
—Uses its purpose to inspire and guide its people at all levels and across all divisions of the organization, leading to greater advocacy, creativity, innovation, attraction and retention.
—Shares its purpose with the world to create value, deepen engagement, and spark change.

TF:
When you talk with people who work at a purpose-driven organization, you can naturally feel it. They say they are working toward something larger and impactful. They find a nice intersection between their personal calling and their organization’s purpose. Each employee might use different language and expression when they describe their job, but you will get a feeling that they are all working toward a common goal. On the other hand, if you find all employees use exactly the same language or keywords, and only talk about their corporate brand, you might want to spend more time with them to see if they are really driven by purpose.

AS:
We believe that when purpose is not connected to behaviour, purpose is just words on the wall. Purpose should be like a North Star to help guide everything you do and help make decisions both internally and externally.