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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

語彙力を失わせるほどの「いい」映画はどう生まれたのか(ゲスト:今泉力哉・志田彩良)【後編】

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【前回コラム】舞台でセリフを飛ばしても……女優が実践する緊張しない秘訣(ゲスト:今泉力哉・志田彩良)【前編】

今週のゲストは、先週に引き続き、映画監督の今泉力哉さんと女優の志田彩良さん。今回はそれぞれ監督と主演を務めた、公開中の映画『かそけきサンカヨウ』の撮影秘話などをうかがいました。

今回の登場人物紹介

左から、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、今泉力哉、志田彩良、中村洋基(すぐおわレギュラーゲスト)。

※本記事は10月24日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

共演した鈴鹿央士はほんわかした不思議系

中村:実際に完成した映画をご覧になって、志田さんはいかがでした?

志田:今泉監督の作品って、やっぱり一言では表せないんですよね。

中村:そうですよね。

志田:「こうでした!」って言える作品があまりないんですけど、私はそこが本当にすごく好きです。今泉さんの作品に限らずですけど、一言で誰かに感想を言える作品より、見た人にしか分からない感想が持てる作品がすごく好き。この『かそけきサンカヨウ』もそういう作品になっているなっていうのを感じています。温かさだったりがすごく良かったなって(笑)。

澤本:僕も同じ感想だった。

今泉:みんな語彙を失っていくっていう(笑)。

中村:思春期の子どもにも見せたいんですよね。あとは、逆に奥さんや恋人みたいな、一緒に共感してくれる大人にも見せたい。その時に何て言って口説こうかなとか(笑)。「ちょっといいから見ようよ!」「見たらいいからさ!」みたいな。そんな良さなんですよね。じんわりくる。

今泉:あと、原作のどこに惹かれたのかをいろいろ話してたりね。

中村:はいはい。

今泉:ただの憎悪じゃなくて愛情があったり、感情が2つあったりもするんですけど、やっぱり大人たちがすごく素直なんです。「あのときはそれが正しかったと思うけど、今でも分からない」とか。その「分からない」「未だに自分にできないことがある」みたいなことを、高校生と向き合って話すときに上からじゃなく、対等な目線で話してる場面がいっぱいあるんです。それは脚本や役者さんが演じて出来上がった映画を見て、「あっ、こういう風になってんだ!」みたいな。本当はそんなことじゃ、監督ダメなんすけど……。

一同:ははは。

今泉:あとから、「こういう話だったんだ!」って全然気付けてなかったりするんですよね。それは生身の人間が実際に声に出して、表情も含めて演じてくれたとき、「そっか、大人と子どもがめちゃめちゃ対等に向き合って、ちゃんと真面目に喋ったりしてる場面がこんなにいっぱいあるんだ」って分かったから。それは、この作品の魅力かもなって思いました。

中村:ヒロインの相手になる、同級生の陸くん役の鈴鹿央士さんは、監督的にはどうでしたか。最近出演していた『ドラゴン桜』では、憎まれっ子キャラだったので、かなりギャップを感じる視聴者もいるんじゃないかなと思いました。

今泉:この作品は『ドラゴン桜』より前に撮っていたんで、自分はそのことを知らずにいたんです。逆に完成して公開まで時間があるなか、『ドラゴン桜』のキャストがシルエット調でひとりずつ連日発表されて、志田さんが決まったのを聞いて「すごい!」と思ったら、翌日に鈴鹿さん発表されて(笑)。「これ、どうなってんの?」みたいな。

一同:ははは。

今泉:鈴鹿さんは作品で見てはいましたけど、志田さんとはまたちょっと違ったタイプの役者さんですね。なんかほんわかしてるもんね。

志田:そうですね、のんびりとはちょっとまた違うかもしれない。

今泉:不思議なんですよ。

志田:独特な雰囲気がありますね。

今泉:集中してるときと、たまに「大丈夫?」みたいに抜けてるときもあるんです。でも、その幼さや素直さは、陸っていう役にすごくあってて、ともすると真面目で、重苦しい空気になる作品で明るさや軽さを保っていたのは、鈴鹿さんのおかげだなと思います。

役者としての経験や経歴の年数もそんなにないから、全然技術タイプじゃないですけど、その方が自分は好きなんですよね。ただ、何回か本当に、「ちょっと集中しよう!」みたいなときはあったんですけどね(笑)。

一同:ははは。

今泉:何か違うことが気になっちゃったりね。何ですかね、あれは……。でも、役者さんとしてはすごく魅力的でした。特に母親役の西田尚美さんとのシーンだったり、菊池亜希子さんと2人で喋ってるシーンは、相手の芝居が明らかに届いたんだなっていうのが、鈴鹿さんのリアクションで分かる。ああいうシーンを見ると、「鈴鹿さんでよかったな」と思いますね。

それこそキャスティングのとき、19歳20歳の鈴鹿さんが高校1年生の役をできるかなっていうのがあったんです。『MEN’S NON-NO』のモデルもされているんで、『愛がなんだ』(2018)で出ていただいた成田凌さんが仲良かったりしたので、「鈴鹿さんって高校生いける?」って相談したら、「いけるんじゃないですか~」って言われた(笑)。

一同:へえ~。

中村:陸くんもすごく難しい役どころですよね。自分がこれでいいのかっていう悩みもあって、明確なことも言えなかったり……。ウジウジ悩んでるんだけど、根っこはすごくいいやつ。

今泉:根っこはいいやつ(笑)。そうですね。彼はバスケットボールをずっとやっていこうと思ってたのに、激しい運動ができなくなっちゃって……。やっぱり学校と家がほぼ世界の全てだったりする中学校、高校ぐらいで、やりたい部活が無くなるって結構なことだと思うんです。だけど周りの人に当たったりするわけじゃなく、そこの部分がみんな本当にいい人。必ずひとりに2つ以上の感情があるんで、それは原作に惹かれた部分だったし、鈴鹿さんはそれをいいバランスで演じてくれたと思います。

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