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「ものづくりは上手なのに、伝え下手」を解消したい――『地域の課題を解決するクリエイティブディレクション術』(田中淳一)より

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「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。

今回は、1月7日に発売した新刊『地域の課題を解決するクリエイティブディレクション術』(田中淳一著)の「はじめに」の一部を紹介します。

日本のクリエイティブ格差をなくしたい!

今、地域に必要な重要な人材のひとつが、クリエイティブディレクターであるのは間違いありません。

そもそもなぜ本書をまとめたいと思ったのかの理由のひとつに、日本のクリエイティブ格差をなくしたい! がありました。ひとことで言うとそういうことになります。

定価:1,980円(本体1,800円+税)
四六判 273ページ
ISBN978-4-88335-529-7

 
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日本において都市部と地域には、教育、賃金、交通機関、文化施設などいろんな格差があるのが現実だと思います。その中で僕が感じるのが情報発信におけるクリエイティブ格差。情報発信と言うと堅苦しく感じるかもしれませんが、伝えること全般だと理解してもらえるといいかと思います。

観光や移住情報などの地域のこと、地域にある企業や商品のこと、地域のものづくりのこと、地域産品のことなどに関わる伝える技術が都市部に比べるとまだまだ伸びしろがある。逆の言い方をすると、ものづくりは上手なのに、伝え下手。都市部は地域に比べればある程度は伝え上手。ですが、世界で見ると日本は相対的に伝え下手な気がします。

日本各地に行くと、いいものはたくさんあるし、いいものをつくる技術も愛情も哲学もホントにほれぼれするくらい。でも、商品や企業コンセプト、ロゴやパッケージデザイン、サイト、紹介動画などにおいては、いいものもあるのですがもったいないと思うことがたくさんあります。ものづくりと伝え方が分断されていて、いいものをつくることにはあんなに必死なのに、いい伝え方をするということにあまりにも無頓着すぎるのです。

「食べてみればわかる!」
「使ってもらえばわかる!」
「来てもらえれば好きになる!」

そういう気持ちもわからなくもないのですが、食べてみなければわからない、使わなければわからない、来てもらえなければ好きになれない、では届かない人が多数いるということ。闘わずして可能性を自ら放棄している状態。

結果的にものすごく損をしていることを、もっと敏感に意識してほしいのです。食べる前に、使う前に、来てもらう前に、とっくに勝負は始まっているのだと……。

その点において、大きな企業や都市部は伝わることの重要性をある程度、理解していて、だからこそ伝えるためのアイデアを含むクリエイティブに投資をするのです。

これが世界的な企業であればなおさらです。確かに日本のものづくり、特に地域色豊かなものには個性も技術もあり、素晴らしいと思いますが、それは世界中の地域、どこも同じです。
 


 

情報発信の重要性に気づくことから始めよう

よく、日本人は日本のことをものづくりやおもてなしが素晴らしいと特別視しがちですが、どの国の人たちもそれぞれに日々、切磋琢磨しているのが現実です。

世界のそれぞれの国における地域も同様です。そして今、世の中の情報のインフラはSNSがメイン。そこで話題になれば地域から日本中、世界中へと広がっていく可能性がある。極端な言い方をすれば、SNSで取り上げてもらえなければ存在さえ知られないまま、時ばかりが過ぎていくのです。

地域のものづくり現場も、観光や移住定住を見すえた地域プロモーションももっと情報発信の重要性、その伝え方が勝負を大きく左右することを知ってほしいと思っています。

「中身はうちのほうがいいのに」
「言いたいことすべて伝えたはずなのに」
そんなボヤキを仲間内で言い合ったところでモノも人も動いてくれません。

情報発信におけるクリエイティブの効力を知って、その力を十分に使いこなしてほしいと切に願います。クリエイティブの効力に気づいている企業や地域だけが得をしている状況も不公平な感じがして個人的には嫌なことです。

気づかないほうが悪い、と言えばそれまでなのですが、地域の未来を大きく左右していく視点であることは間違いないと思います。

日本のクリエイティブ格差をなくして、地域が地域自身の力を思う存分に発揮していくためにも、ぜひこの本を活用してほしいのです。本書は地域からの情報発信のポイントを各章にわたって何度も書いています。

予算も限られている、地域からの情報発信がなかなかうまくいかない、何から手をつけていいかわからない、そんな悩みをお持ちの方にヒントをつかんでいただければと思います。

そして、地域からの情報発信のテクニック。クリエイティブディレクションという職能に沿って、体系的かつ段階に沿って必要な思考テクニックや留意する点を網羅しました。

「SNSの使い方がいまいちわからない」

という方などは、該当する章から読んでいただくなど、自身の足りない部分や弱いと感じているところから読み進めていただくのもいいと思います。

本書を読んでほしい方

本書は、地域で活躍する、
・クリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクター、デザイナー
・映像制作会社やフリーのプロデューサーやカメラマン、演出家
・観光DMOなどの地域プロデューサーや地域おこし協力隊の方
・広報や地域・産業振興などを担当する自治体職員
・企業の経営者や広報、宣伝、商品開発担当者
・地域産品を内外に広めたいと考えている生産者
・マーケティングやクリエイティブ関連を教える教育関係者

など、地域を対外的に情報発信していきたい、地域の情報発信をなりわいとする方たちに読んでいただきたいと思い、まとめてみました。

ほかには、都市部に住みながら、
・ 地域の仕事に関わりたいと考えているクリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクター、デザイナー
・映像制作会社やフリーのプロデューサーやカメラマン、演出家
・物産、観光などの地域振興に関わる省庁職員
・マーケティングやクリエイティブ関連を教える教育関係者

など、これから地域に関わっていきたい人たち、もしくは現在、都市部から地域振興に関わっている方たちにもぜひ読んでほしいです。

そして、地域、都市部関係なく、
・クリエイティブディレクターを目指す人たち

クリエイティブディレクション術というのは、クリエイティブディレクターによって人それぞれで、僕自身も体系立てて教えてもらった記憶はありません。観光や移住定住などの地域のシティプロモーションも、地域企業のブランディングも、どのクリエイティブディレクターとプロジェクトを進めるかを決めるかで、その良しあしはほぼ決まると僕は思います。

そのためにも、クリエイティブディレクションという職能をなるべく体系立てて、その思考技術をわかりやすく解説することを心がけました。予算のことなど地域のクリエイティブワークにおける事情を考慮しながら書いていますが、結果的にはクリエイティブディレクターを目指す人にとっても、ひとつの指針となる本になったのではと思っています。

もちろん、僕のクリエイティブディレクション術がすべての人にとっての正解ではないのですが、ひとつのベンチマークにしていただいて、使えるものは取り入れてもらうとよいのではと考えています。

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田中 淳一
POPS クリエイティブ・ディレクター/東北芸術工科大学客員教授

宮崎県延岡市出身、早稲田大学卒業後、旭通信社(現ADK)入社、営業本部を経て制作本部(コピーライター)に転属。38歳でクリエイティブ・ディレクターに就任。2014年にCreativity for Local, Social, Globalを掲げPOPS設立。松山市、鳥取市、今帰仁村、登米市、高知県など38都道府県以上でシティプロモーション、観光PR、移住定住施策などの自治体案件や地域企業、NPO団体のクリエイティブ・コンサルティング、企業ブランディング、プロモーション、商品開発などを手がける。