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キューサイ社長・みんなの銀行副頭取が対談「事業を進化させるリブランディング」

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既存事業の資産を活用しながらブランドを拡張するには、何がポイントになるのか?ウェルエイジングを支援する「キューサイ」と、ふくおかフィナンシャルグループの国内初デジタルバンク「みんなの銀行」、福岡に拠点を置く2社による対談を行った。

※本稿は広報会議2022年3月号特別企画「組織を強くする企業ブランディング」(2月1日発売)に収録の内容を転載しています。対談は「宣伝会議リージョナルサミット」にて実施しました。

(写真左から)

キューサイ代表取締役社長 神戸聡氏(かんべ・さとし)

広告会社、化粧品会社を経て、2015年キューサイ入社。2017年代表取締役に就任。青汁の原料であるケールの魅力を伝えるために、イベント実施、ポップアップショップ展示等、認知普及に力を入れる。

 

みんなの銀行取締役副頭取 永吉健一氏(ながよし・けんいち)

1995年福岡銀行入行。2007年のふくおかフィナンシャルグループ設立等に注力。2016年企業内ベンチャーとしてiBankマーケティングを起業。その後、デジタルバンク「みんなの銀行」の立ち上げをリード。

 

未来の顧客を見据える

─事業やブランディングの取り組みについて教えて下さい。

神戸:キューサイといえば青汁のイメージが強いと思いますが、実は売上のほとんどは、スキンケア事業(コラリッチ)とヘルスケア事業(ひざサポートコラーゲン等)で構成されています。健康寿命の延伸に向け、医薬品事業にも参入しました。古臭いイメージが付いてしまっていたロゴは2019年に刷新。リブランディングの結果、信頼度、先進度、技術に強いイメージを獲得できています。

2019年にロゴ変更。2020年に商品名やパッケージの変更を行いリブランディング。

 
永吉:みんなの銀行は、銀行そのものをゼロから設計したデジタルバンクで、2021年に開業しました。銀行をデジタルで再デザイン、再定義し、デジタルネイティブなアプローチでサービスの向上を行っています。ふくおかフィナンシャルグループの各銀行でもデジタル化を推進していますが、銀行のビジネスモデル“そのもの”を変える新しいチャレンジであるため、既存の銀行とは別ブランドとして立ち上げました。

従来の銀行らしからぬ、UI/UXを提供しているみんなの銀行。

 
─ブランドを進化させるために取り組んでいることは?

永吉:銀行の未来の顧客は誰か。そう考えると、UI・UXを重視するデジタルネイティブ世代とつながっていかなければ、という危機感がありました。この世代の行動の特徴をふまえ、フリクションレスの徹底(面倒くささを排除)、ハイパーパーソナライズ(自身に適した情報や体験を求める)、成果主義へのシフト(適正なリターンが得られるサービスには対価を支払う)、コミュニティの重視(つながりを軸に行動する)、に着目したサービスをつくりました。みんなの銀行には、店舗もキャッシュカードもありません。

神戸:私が2015年にキューサイに入ってから行った調査では「青汁は認知されているけれど、原料や栄養素は理解されていない」という実態が見えてきました。シェアが下がっていた青汁事業を復活させるには、青汁の原料である、無農薬で体に優しいスーパーフードの「ケール」のパワーをきちんと知らせる必要を感じました。そこでケールを飲むだけでなく、食べる、肌に塗るなど、日々の生活に取り入れてもらう「ケールワーク」を2019年から提唱しています。若い人にも受け入れてもらえるよう、青汁の商品名やパッケージのリニューアルも2020年に行いました。お客様との接点は、通販から拡大し、店舗販売やホテルの朝食への導入、SNSでの発信なども進んでいます。
 


 

既存のイメージの脱却

─新しいブランドをつくる上でのインターナルコミュニケーションは?

神戸:社内向けのブランディング、コミュニケーションは非常に大切だと考えています。健康をお届けする会社ですから、社員の体と心の健康を推進し、健康経営優良法人の認定も得ています。社内には、給青汁機を設置し、健康ランチを導入。禁煙サポートも行っています。また自己理解、他者理解を深めるために、1on1のミーティングの浸透や、Five Factors & Stress理論の活用も積極的に行っています。

キューサイは、ウェルエイジングを支援する会社として、健康経営を実践する。

永吉:みんなの銀行は、エンジニア、デザイナー、データサイエンティスト、マーケターなど、銀行員とは異なるスキルセットを持つ人が全体の6割を占めています。従来の銀行と同じマネジメントはできませんから、ふくおかフィナンシャルグループのものとは異なる価値観や行動指針を決め、採用や社内活性化施策もそれに基づいて行っています。顧客起点のサービス提供をコンセプトにしているので、会議体も、お客様の声に皆が触れ、意見ができるようなものにしています。またnoteで、プロダクトや働く人たちについて外部発信をしているのですが、そこにはインターナルコミュニケーションの役割も担わせています。例えば「銀行トップの対外呼称が決まるまで」をつづった記事では、議論の経緯や社内選挙の様子をオープンにしています。

みんなの銀行の公式noteでは「銀行トップの対外呼称」が決まる様子をつづった。

 
─新たな企業風土の醸成に向けて目指していること、これからのビジョンは?

神戸:いまに満足せず、より高次なことを求めていこうと思います。ケール青汁で健康になる、ひざサポートコラーゲンで健康寿命を延伸する、コラリッチで生活の質を良くするといったことを、さらに高次なものにするために、前向きに年を重ねる「ウェルエイジング」の価値観を世の中に広め、その中心にキューサイがあるように、ブランディングを進めていきたいと考えています。

永吉:コアバリューのひとつに「銀行らしさからの脱却」を掲げています。銀行らしさとは、まじめ、安心など、いろいろありますが、かたい、面倒くさい、わずらわしいといったマイナスのイメージからは大いに脱却して、新しいチャレンジをしていこうとしています。銀行には約150年の歴史がありますが、金融仲介、信用創造、決済という機能は変わっていません。しかしデジタルを活用する人自体が変化していますので、新しい機能を生み出して提供価値として届けていきたいと考えています。
 

広報会議3月号

広報会議3月号特別企画「組織を強くする企業ブランディング」では、「企業の資産を活用しながら、いかにブランドを継続して成長させるか?」という先を見通した経営視点と、「社会の文脈に沿った共感をいかに生み出し、人の心を動かすか?」 というクリエイティブ視点の両方から、ステークホルダーから選ばれ、 組織を強くする企業ブランディングについて、実務家や専門家に取材しました。
 
 
 
CONTENTS
・生活者インサイトをつかんだ発信で企業ブランドをアップデートするには?
・共感が高まるメッセージを多言語で設計するには?
・ブランデッドコンテンツの制作を支援する補助金制度とは?
・企業ブランドを体現する「人」を描くブランド実感ドキュメンタリーとは?