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ヤングスパイクスGOLDを勝ち取るために、やったことぜんぶ。(本戦篇)

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ADKクリエイティブ・ワンでコピーライターをしている有田(右)です。アジア太平洋地域の広告アワード「スパイクスアジア」。この中で行われる30歳以下のコンペ「ヤングスパイクス」に日本代表としてペアの中村心くん(左)と参加してきました。

結果はGOLD。各国代表17チームの中で、一番に選ばれました。

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前回に続いて、本戦での体験、やったほうがいいこと、気をつけたほうがいいことなどについてお話しします。デジタル部門の本選は、初のオンライン開催。過去の情報がない分、私たちも、手探りでした。

1日目 18:00 ブリーフィング

18:00ブリーフィング、と書きましたが、さっそく予想外の展開に。当日朝にメールがきて、ブリーフィングの1時間前に資料を送りますと言い渡されました。慌てて時間を確保。17:00〜ブリーフ資料の読み込みと、質問の整理をしました。

クライアントは、予防接種プログラムに取り組む、Gavi The Vaccine Alliance。「新型コロナワクチンについて、どのようにデジタルプラットフォームやソーシャルメディアにおける誤情報を解明し、ワクチン接種を推奨すれば良いか」という課題でした。

ちなみにブリーフ資料は全部で7ページ(なっっっっが。)。相方の中村も私も英語はそれなりにできるので、各々で読み、重要だと思ったポイントの擦り合わせや、疑問点の洗い出しなどを行いました。

ブリーフィングはZoomで開催。クライアントの方からの説明のあと質問タイムが設けられていました。緊張していた私でしたが、審査員の一人が「僕もヤングスパイクスに出たことあるんだけど、大したことないよね!だってもうみんなすでに各国の代表にはなれてるわけだし!でもやっぱ勝つと嬉しくて負けると悔しかった。思いっきりやろうぜ!」(こんな陽キャじゃなかったらすみません)的なことを言ってくださり、ただただ思いっきりやればいいや!というマインドに。ここではカメラオフ&ミュートだった参加者のみんなも顔を出し、雄叫びを上げ出す人も。笑 オンライン開催ながら、“海外広告コンペ”を感じられた瞬間でした。

 

1日目 19:00 キックオフ
審査員、クライテリア、そして何より「本能的な感覚」を大切に。

ブリーフィング後、私たちは、お互いが素直に思ったことを話すようにしています。ここにアイデアのヒントが詰まっているような気がするからです。

このとき話し合ったのは、以下の3つ。

・デマを信じ込んでいる人に耳を貸してもらうってハードル高そう。強力なフックが必要かも。

・ワクチンを打つか打たないかは、やっぱり個人の自由であってほしい。「ワクチンを打つことが絶対に正しい」といったスタンスのコミュニケーションや強制させるようなアイデアはやめよう。

・クライテリアは50%が“CREATIVE IDEA” 。審査員も、全員が広告会社の方。今回は「コア・アイデア」が勝負になるかも。

これは結果論かもしれないですが、ブリーフに「ワクチンの安全や科学的根拠の訴求を」という話がかなりページを割いて書かれていたこともあり、「安全性や科学的根拠」をどう言い換えるか?というアイデアを出したチームが多かったです。

それだけでは耳を貸してもらえないかも?という、最初の感覚を大事に企画できたのがひとつ抜けられたポイントになったように思います。

1日目 19:05  5分で見つけた、GOLDのアイデア。

目指すアイデアの方向性が上記の通りすぐ決まったので、実はGOLDを獲ったアイデアは、ブレスト開始5分で出すことができました。

ワクチンの科学的根拠や安全性を訴えても響かなさそう→どんな風に言えば響くのだろう?→ワクチンを打てずコロナで亡くなった人から言ったとしたら?という思考で、AIで故人を復活させよう、と。すると相方の中村が、「だったら、亡くなってしまった人のSNSがいきなり動き出したら話題になりそうですね!」と言ってくれて、「お?もうできたのでは?」となりました。

しかし、あまりに早く思いついてしまったが故に不安に。各々で考えたり、ディスカッションしたり。ここからなんと10時間も他のアイデアを探り続けました……。

広めの会議室を終日押さえ、夜通し企画していました。

2日目 10:30 震えたアイデア選び。

ついに、そろそろボードをつくりはじめなければさすがにまずい!という時間。私たちは、アイデア選びは必ず二人でディスカッションして決めることにしています。いろんな意見を交わしながらも、最終的に中村が「有田さんはもってるんで、有田さんがいいと思う方にしましょう!」と言ってくれました(なにその理由!!!!!)。

中村は必ずいい絵をつくってくれるので、私が判断をミスるわけにはいきません。思えば、年末年始は追い込みすぎて、中村の家族にまで迷惑をかけました(その節は大変申し訳ございませんでした)。

そんなことを反芻し震えながら、「絶対に後悔させない」と心に誓い、結局、最初に出たアイデアに決めました。

最終的に重視したのは、「このアイデアで、本当に気持ちが動くのか?」ということ。ワクチンの開発が間に合っていれば、今も生きていた人がいるかもしれないということ。打つという選択肢がある今を生きる私たちは、恵まれているということ。見過ごしがちですが、だからこそ人々のパーセプションを変え得る強い事実なのではと思いました。
 


 

2日目 11:00 アイデアブラッシュアップ。

震えた企画決定を経て、ようやくエグゼキューションを詰める段階に。実は、ここに3時間ほどかかりました。笑(笑えない)

「死者の復活」というナイーブなコミュニケーション方法である分、配慮に欠けたコミュニケーションになってはならないと思っていました。「ワクチンの開発が間に合えば打ちたかったに違いない(とご遺族が思っている)人に限る」といったことや、勝手に復活させていると見えないよう、「ご遺族と一緒にプロジェクトを進行する」など細かいアジャストを行いました。

また、これは本戦ならではですが、「Googleアドの予算が約2000万ある」など押さえるべき細かい点がいくつもあるので、そういった部分をすべて回収しながらアイデアを膨らませていく必要があります。予選よりも、エグゼキューションの詰めに時間がかかりやすい点は、要注意だと思います。

2日目 14:00 ボードづくり

そんなこんなで残り5時間……。ここからは分業で、中村は絵に、私は原稿に取りかかりました。
とはいっても中村のほうが企画をロジカルに説明することが得意なので、私が相談しまくった結果、中村が絵づくりに使えた時間は実質3時間ほどだったと思います……。
(それでこのビジュアルって、最強かよ。)

いま振り返ると、ボードづくりに時間を割けなかったことがいちばんの後悔です。
中村の絵力はこんなもんじゃないのに……と思ったり、私自身も、もっとコピーを考え尽くしたかった……という気持ちが残りました。

こうして完成したボード「#GetVaccineForTheirSake(#彼らのためにワクチンを打とう)」。

ある日突然、亡くなった著名人のSNSが「言い残したことがある」と再開するところからはじまり、AIで本人が復活。遺族の方々とともに、動画でワクチン接種を呼びかけます。

Facebookの「1年前の今日」の機能を使い、生前親しかった人を巻き込んだり、AIで復活した著名人のビジュアルをバナーに活用したり。さらには、一般人にもこのフォーマットを広めていくという展開にしました。

締め切り時間ぴったりに提出。家に帰るための体力がなく、中村はしばらく動かなくなっていました。

 

結果発表

デジタル部門の本戦はプレゼンがないので、提出して終わりです。たくさん準備をしてきた分、勝たなければならないという気持ちが強かったので、GOLDと発表され、とにかく安堵したことを覚えています。

ちなみに、全5部門の結果発表がなんと16分で終了……。早くリアル開催できる世の中になることを、願うばかりです……。

 

感想

有田絢音(ありた・あやね)
ADKクリエイティブ・ワン コピーライター

1995年兵庫県生まれ。2017年ADK入社。3年半のタイム局担を経て、2020年より現職。
受賞歴:2022年ヤングスパイクス デジタル部門日本代表 /本戦GOLD / 2021年NEW STARS クリスタル。

 
「ヤングコンペってやる意味あるの?」と思ったことが何度もあります。しんどいし、眠いし、どんなに頑張ったって、負けたら参加していたことさえ知られない。正直、「二度とやらなくていいように、今、勝ち切ろう」。それが、いちばんの底力になっていたかもしれません。

だけどやっぱり、参加してよかったと私は思いました。自分の強みや弱みを知って、向き合うことができました。成長させてくれるペアや、応援してくれるかっこいい先輩に出会えました。この仕事、どうしようもなく好きだな、と思える瞬間がたくさんありました。

私は、もともとタイム局担という、テレビメディアを営業する職種だったところから全く畑違いのクリエイティブに社内試験で転局しました。タイム局担だった頃は、こんなところに手が届くわけがないと思っていました。だけど、本気でやってみたら、意外とできた。仕事でチャンスをもらえるようになりましたし、「有田をもっと成長させよう!」と言ってくれる大先輩まで現れました。

今どんな仕事をしていても、もしそれが、クリエイティブから縁遠くても。自分をあきらめられない人は、ぜひ挑戦してチャンスを掴んでほしいです。こんなにもしんどいと分かっていることを、やりたいと思うのは、きっとすでに才能です。
 

中村 心(なかむら・しん)
FACT アートディレクター

1994年福岡県生まれ。2019年ADK クリエイティブ・ワン 入社。2021年よりFACTへ参画。
受賞歴:2022年ヤングスパイクス デジタル部門日本代表 / 本戦GOLD。

 
まずはアジアで一番強い若手になれて、素直にうれしい気持ちでいます。頼もしい相方さん、いつでも優しく手を差し伸べてくださる先輩・ヤングコンペティストの皆さま、厳しくも温かく見守ってくださった審査員の方々。たくさんの方の支えがあってこそのGOLDでした。

発表時、両手が震えていました。こんなにも「うれしい」と思った経験は社会人になって初めてでした。

ただ、あくまでコンペはコンペ。何か大きなことを成し遂げてやったぞ!という感覚は正直なところあまりありません。今後はこの経験をコンペの思い出に留めることなく、人を動かす、世間を騒がす、そんな仕事に繋げていきたいです。まだまだ半人前。これからも、素直に、謙虚に、愚直に、精進いたします。

ヤングコンペって本気で取り組むと、本当に、めちゃくちゃに、しんどいです。それには変わりありません。ヤングコンペにおける今後の進退についてはこれからゆっくり考えたいと思います。笑
ありがとうございました。