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ステレオタイプに対する行動を喚起せよ:ヤングカンヌ参戦記(前編)

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はじめまして。電通デジタル(出向中)&Dentsu Lab Tokyoの中山桃歌と電通4CRPの鎌田明里です。私たちは入社6年目の同期ペアで、2022年ヤングライオンズコンペティション(ヤングカンヌ)デジタル部門日本代表として本戦に参加しました。

残念ながら入賞はできなかったのですが、少しでも次の方のお役にたてるように、反省や学びを書いていきたいと思います。

本戦終了直後の写真。右が中山、左が鎌田です。寝不足と疲労でdigitalのスペルを間違えています

 

24時間でアイデア出しから企画書作成まで

ヤングカンヌは、30歳以下の若手クリエイターが2人1組となって参加する広告アイデアコンペティションです。プリント、PR、デザイン、デジタル、メディア、マーケティング、フィルムの7つの部門があります。私たちはデジタル部門で世界の代表と戦ってきました。

聞いた話によると、去年の本戦優勝者はゴールドに選ばれたことで昇進したり、それによって仕事が入ってきたりしたそうで、日本より影響力は大きそうでした。ちなみに今年デジタル部門は46カ国が参加。これはどの部門よりも一番多い参加国数でした。

毎年、国際的な社会問題1つとWWFのようなクライアント団体が指定され、その問題を解決するアイデアを英語の企画書にして24時間以内に提出します。翌日に、英語でアイデアを審査員にプレゼンし、質疑応答などが行われて順位がつけられます。もちろんオリエンも質疑応答もすべて英語です。

スケジュールはこんな感じでした。
5月25日 20時にオリエン@zoom
5月26日 20時までにA3のプレゼンボード提出
5月27日 17時半からプレゼン。5分のプレゼント5分の質疑応答
6月15日 全部門一緒に結果発表@zoom
7月 6日 審査員からの10分間のフィードバック会@zoom

本来は各国の参加者がカンヌに渡航し、現地で顔を合わせて競い合うイベントなのですが、2022年はコロナの関係で完全リモート開催。泣く泣く汐留会議室から参加しました。

本戦の前に国内予選もあります。2022年は孤独問題が課題で、私たちはインスタントヌードルを食べているときに、世界中の同じように孤独な誰かとつながり一緒に食べることができるアプリを考え、代表に選んでいただきました

予選時のプレゼン原稿。モックもつくりました(引用元:Google社「Google マップ、Google Earth」)

4つの事前対策で本戦に備える

昨年12月に国内予選の結果が出たため、代表に決まってから6月の本戦まで、半年間の猶予がありました。長いようで短かった半年間。通常業務の傍ら、週末に定例を設けて、主に3つの準備を行いました。めんどうくさいなと思う瞬間も多々ありましたが、今振り返るとどれもやってよかったなと感じています。

⑴ 24時間の模擬実践
⑵ 過去受賞作の分析
⑶ 使えそうな技術や視点のストック
⑷ 当日のタイムライン整理

⑴ 24時間の模擬実践

他国の予選などからお題を拾ってきて、土日の24時間で本番と同じようにアイデアをブレストしボードまで落とすという模擬実践を4回ほど行いました。リアルで会ってやった回もあれば、リモートで休み休みやった回もありました。

かなり気力と時間を消耗するのですが、アイデアやボードの作り込みなど、模擬形式で一回つくりきることによって初めてわかる課題点やコツがありました。いつまでに案の骨子が決まっていたらいいか、どれくらいまで別案に戻れるかなどが体感値でわかるようになったのがよかったなと思っています。模擬の後、実際の受賞作をネタばらし的に見ると解像度高く分析できた気もします。

模擬実践の時のボード

⑵ 過去受賞作の分析

評価指標や良いアイデアの定義をそろえるために、過去の受賞作を見て、何が良かったのか、どうやったら思いつくのかなどを書き出していきました。運良く全世界の応募ボードが手に入った年度は、結果を見ずに自分たちが審査員だったらどれを入賞させるかを推理してから分析しました。やってみて感じたのは予選と本戦は結構毛色が違うということです。ジャンプがあっておもしろいアイデアよりも、ちゃんと効きそうで否定しにくいアイデアが評価されている印象がありました。

大体の受賞作にはこの3つの要素が入っていました

過去のお題も分類。ブレスト練習するときはこれまでやってないジャンルのお題にしました

⑶ 使えそうな技術や視点のストック

当日思いつかなかった時に眺める用として、使えそうな技術や視点出しなどもしました。テクノロジーはただ書き留めておくだけでなく、実際にやってみることも心がけていました。

視点出しメモ

本戦に関する事務局からの事前連絡は全てSlackとzoomで行われました。Slackには世界中の参加者が好きな音楽や飼っているペット、自分のSNSなどを投稿するチャネルがあったり、参加者同士で話し合うだけのzoomが設けられたりと、リモートでも薄く交流は持てました。

交流セッション。5人ずつに分けられ世界中の代表とお話できました

(4) 当日のタイムライン整理

事前に理想のタイムラインを整理しました。また、1カ月前にはホテルや会議室を予約したりして、どの場所で資料を作るか、どこで寝るかなども準備していました。

20:00~21:00 zoomでオリエン説明
21:00~21:15 オリエン咀嚼
21:15-21:30 なんで問題発生しちゃうかの深掘り
21:30~21:45 お試しブレスト
21:45~22:15 ゴール(ターゲット)設定
22:15~23:00 個別ブレスト①
23:00~23:20 話し合い(視点決定)
23:20~23:50 個別ブレスト②
23:50~00:20 話し合い(アイデア決定)
00:20~00:50 デジタル周りのやり方リサーチ
00:50~01:30 落とし方個別ブレスト(アイデアのコアを明確に、モチーフなどクリエイティブジャンプどうするか)
01:30~03:00 資料作ってみる、企画内容整理
03:00~06:00 タイトルとメインビジュアルの構図どうするか決める
06:00-07:00 メインビジュアルの画像探し
07:00-08:00 画像集めたやつ見せあいながらメインビジュアルどうデザインするか、トンマナ等詳細詰める
08:00-11:30 メインビジュアル作り
12:30-15:30 STEP1,2,3の画像作り
15:30-17:30 メインビジュアルブラッシュアップ
17:30-20:30 タイトルロゴ/背景作り/仕上げ

デジタル部門の課題は「ステレオタイプ」

余裕を持って16:00から会議室入り。20:00オリエン開始と聞いていたので、それまでに紙やモニターなどを準備して場所を整えたり、悠長に食料など買いに行っていたのですが、なんと予定より1時間早く19:00にはオリエンPDFが送られてきました。

お題は
「デジタルを活用して、ステレオタイプに対するアクションを活性化するにはどうしたらいいか?ステレオタイプの有害性について認識させ、行動を促すキャンペーンを考えよう」というものでした。

クライアントはUN WOMEN(国連女性機関)、キーメッセージはSay nothing, change nothing。

1問題の認識→2自分ごと化→3行動という3STEP構造にせよ、というストラテジーも指定されていました。

長文ですが、なんだかんだ一番上にボールドで書いてある1文が最も大事です。焦って読み込むとうっかり見逃してしまうこともあるのでご注意を。

今年、他の部門は「人種差別」のお題が多かったのですが、ステレオタイプはデジタル部門だけに出されたお題でした。

また、ドネーションを促す、既定のアプリダウンロードを増やすといった過去のお題に比べて具体的なゴール設定やKPIはなく、“ステレオタイプに対する何らかのアクション”を活性化するなら何を提案してもいいフワッとしたものでした。

審査の流れとしては、翌日までにボードを提出。翌々日夕方ごろにzoomプレゼンと質疑応答タイムがあります。11~12カ国くらいずつブロックに別れ、4人の審査員が審査。各ブロックの上位2チームが入賞、録画されたプレゼンを見て審査員全員が話し合い、入賞者の中からゴールド以下が決まるというシステムでした。

同ブロックの他国のアイデアは、zoomに自由に入って審査員と一緒に聞くことができましたが、私たちはブロックの最後だったので、ギリギリまでプレゼン準備に時間を割きました。

4つのブロックに分かれて審査されました

ステレオタイプという国によって問題の深度やインサイトが異なるお題だったからか、近い時間帯にアジアが多く、ざっくり地域別に分けたような印象でした。審査員側は、国は偏っておらず、白人の方、黒人の方、アジア人の方、様々な国の方がいました。

プレゼンはボードを映して喋るのみのシンプルなものでした。私たちは英語力に自信がなかったのでプレゼン用にサービスのモックや小道具などをつくって披露しようとしましたが、持ち込み禁止とかなり厳格に注意されました。今思うとせっかくの機会なので、準備に時間を割かず、他国のプレゼンを聞けばよかったです。

質疑応答はかなりあっさり。各国1、2問くらいしか質問されませんでした。プレゼン前にボードはちゃんと読み込まれていて、ボードで大方結果が決まっているのだろうなという雰囲気でした。

結果発表は2、3週間した後に全部門一斉にzoomで行われました。なんとも淡々と発表されていきドキドキが追いつきませんでした。参加者としては現地に行って発表されたわけでもないので本当にあっけなくて、え、これで終わったの?と拍子抜けするような感じでした。

上位の受賞結果と気づきや反省については、後編で紹介しています。