メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

セリフは「みんなのイメージ」のままで言うのがちょうど良い(ダウ90000・蓮見翔)【前編】

share

【前回コラム】どんなポジションにいても「輝いている人」でありたい(櫻坂46・山﨑天)

今週のゲストは、コントユニット「ダウ90000(きゅうまん)」の蓮見翔さん。お笑い芸人でもなければ、演劇集団でもない。そんな不思議な8人組が、どんな経緯で舞台やテレビでブレイクするに至ったのか? 興味津々で聞き出してみました。

今回の登場人物紹介

左から、中村洋基、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、蓮見翔

※本記事は2022年10月9日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

あなたなら「5分間の自己紹介」にどう臨む?

澤本:皆さんこんばんは、CMプランナーの澤本です。

中村:こんばんは~! Web野郎こと、中村洋基です。権八さんが今回もいない、と。心なしかスタジオが広い(笑)。

澤本:ね。

中村:そしてまた、嬉しいことにお便りが来ています。なんかうちの番組、お便りが来る「流れ」がキテますね。

澤本:でも、流れとは言っても、一通でしょ?

中村:いやいやいや。一通でも大事にやっていきたいな、と思っております!(笑)。え~、「ケンタッキーの倦怠期」さんから。「火曜日に会社の内定式があります。余興で一人5分の自己紹介をしなくてはいけません。爪痕を残す感じで行くか、無難に行くべきか、どっちにしようか迷っています。皆さんは、入社当初はどんな自己紹介をしましたか? どっちがいいでしょうか?」。これ、結構難しいですね!

澤本:ホント、難しいですよね。だからまずは、その会社にどれだけ勤めたいのか、によらない?(笑)。

中村:それは、「超・激マジレス」すればそうですよね(笑)。一番初めに自己紹介の時に「どうも~!」と言って入るのか、「皆さま、初めまして。よろしくお願いします」と言って入るのか。澤本さんはどっち派なんですか?

澤本:僕は、そういう時にそういうところでウケを取る人がむちゃむちゃキライなタイプなんですけど(笑)。

中村:まあ、そういうタイプっぽいですよね(笑)

澤本:でも「ウケを取れなかった自分」に悶々とするタイプでもあるので。新入社員の時がどうだったかは忘れたけど、大学生の頃にテニスサークルに一回申し込んだことがあって。その新歓(新入生歓迎会)に行ったら、急に「自己PRしろ」って言われて。で、何も考えていなかったんですね。大学の時は先輩が怖いからどうしようかと思ったけど、することが何も思いつかなくて。それで、目の前にあったスパゲッティを一気食いしました。

中村:(笑)。

澤本:まあ、めっちゃ喜んでくれた人がいたんですけど、そもそもそういうことで喜ぶ人が僕、そんなに好きじゃないので(笑)。

中村:あはははは!

澤本:このサークルは、こういうのを喜ぶ人たちなんだな、と。

中村:ムリしましたねぇ~!

澤本:頑張りましたね。スゲー気持ち悪くなって。

中村:いやぁ~! これはちょっと、この後お呼びするゲストにも聞いてみたいですね。私もめちゃくちゃ悩むところです。

澤本:え、学生の時何かやった?

中村:いや、あんまり最初に飛ばしすぎると……って。

澤本:そう、だってあだ名が付くんだよ。「スパゲッティの人」って。

中村:そうですよね(笑)。これは今日のゲストが、一番勘所のいい答えをご存知なんじゃないかと思います。

澤本:僕のはもう何十年も前の話だから。ゲストに聞きたいです。

中村:そうですね! という引っ張り方をしてですね。今夜もめちゃくちゃ素敵なゲストにお越しいただいています。8人組「ダウ90000」の蓮見翔さんです、よろしくお願いします!

蓮見:お願いします、「ダウ90000」の蓮見翔です!

一同:拍手

劇団とコントグループの”いいとこ取り”

中村:今、絶賛大ブレイク中ですね。澤本さんも大ファンだということで。

澤本:凄いですよね。

蓮見:ありがとうございます! いや、嬉しいなあ~。

澤本:でも、「凄いですよね」って、僕らが発見したみたいに言ってますけど、みんな知っていますよね。

蓮見:いや、そんなことないです(笑)。まだまだホントに途中なので。どうなっていくかがわからない状態なんですけど。おかげさまで最近は忙しくさせていただいていますね。

中村:まずは「ダウ90000」の説明ですが、8人組と。あえて演劇集団とかコントグループということでもない、と? この辺は結構こだわりがあるんですか?

蓮見:そうですね。最初に「ダウ90000」という名前をつけた時に、コントをやることは決めていたんですが、劇団とつけてしまうと「劇団がやっているコント」として見られるのがちょっとイヤで。そういうのにちょっと「ウッ!」となる人もいるだろうなと。あとは、ぼくはコントをいっぱいやれればよかったんですけど、他のメンバー7人が役者志望なので。

中村:あ~、なるほど、なるほど!(笑)。

蓮見:だから、「芸人」って言っちゃうと、メンバーがやりたいことが出来なくなっちゃうし、劇団って言うと、ちょっとコントがやりにくくなる、と。やっぱり演劇から入るよりもコントから入った方が絶対に「身近さ」という意味で見てもらいやすいだろうな、というのがあったので。極力そこは言わないようにして、ぼやかして始めた感じですね。

中村:それが今、きっと功を奏していますよね。演劇的な部分のおいしいところと、コント的なね。そこをうまく形容できないんだけど、ただ言えるのは“面白い8人組”「ダウ90000」みたいな。

蓮見:結果、いいとこ取りをさせてもらった感じがありますね(笑)。

中村:イイですね。ご自分で言うあたりが(笑)。いろいろ聞きたいんですが、はじめに毎回ゲストの方にお願いしている「20秒自己紹介」というコーナーがございまして。この「すぐおわ」は、一応広告の番組ということでして。ご自身の自己紹介をラジオCMの秒数 20秒に合わせてやっていただけないか、という、やや無茶ぶりなコーナーです。蓮見さん、いいですか?

蓮見:はい。ちょっとやってみます。

中村:では、お願いいたします。どうぞ!

カーン♫

蓮見:どうも、「ダウ90000」の蓮見翔です。元々は脚本家になりたくて入った大学で出会ったメンバーと、今「ダウ90000」というのをやらせていただいているんですけど。コントと演劇をやっていまして。コントをやったら演劇だと言われ、演劇をやったらコントだと言われるので、今はもう、好きなように見ていただければな、と思っています。よろしくお願いします!

カンカンカン♫

一同:拍手

澤本:上手い!

蓮見:あはははは! 大丈夫でした?

中村:さすがですね。

澤本:喋れるんですね、羨ましいな。

蓮見:いやいや、そんなことないです(笑)

自己紹介は「打順」が大事

蓮見:今、僕もここ(TOKYO FM)でラジオをやらせてもらっているんですけど。4月からなのでまだ始まったばかりで、毎回バタバタでやっている状態です(笑)。

中村:番組タイトルはなんですか?

蓮見:僕と、紗倉まなさんとふたりでやっていて。『蓮見翔、紗倉まなのAudee CONNECT』っていう番組を、深夜2時~4時で水曜日にやらせてもらっていまして。

中村:おおー。紗倉まなさんというと、相当緊張というか、色んな思いが去来しませんでした?

蓮見:そうですね。そもそも、ラジオの初回が初対面だったんです。でもラジオとかを抜きにしても、そういう姿を見たことがある人と喋るのが人生初めてだったので。そこを抜きにして喋るのもダサいし、でも毎週やっていくことを考えた時に、その話ばっかりするのもずっとは続かないな、と。

中村:そうですね、その距離感というか。

蓮見:はい。それで、どういうスタンスでやったらいいんだろうな、というので最初に入ったんですけど。紗倉さんはめちゃくちゃ頭の回転が早い人だったので、全然大丈夫でした。でも、最初は「どうやろうかな?」っていうのはだいぶありましたね。

中村:そうですよね。さっきのお便りじゃないけど、初めのひと言が「いつも拝見しています」ていうのは、ダメじゃないですか。

蓮見:そうなんです。それを言っても紗倉さんにしたら「カマされたな!」としか思わない気がするんですよ(笑)。

中村:でも、そこを隠すわけにもいかないし、というか。

蓮見:う~ん……。

中村:ちなみに、さっきのお便りはどう思いますか?

蓮見:「5分の自己紹介」ですね。ホンっとに僕もキライですね。5分の自己紹介を嫌がるということが一番自分の性格がわかる方法だとは思うんですけど。でも、そうも言ってられないですし、そこで「僕はやりません」っていう性格でもないからやらなきゃいけない。その中で、「逃げ道を見つけたんだな」と思ってもらえる人とだけ仲良くなりたいじゃないですか?

澤本・中村:あはははは!

蓮見:さっきのスパゲッティの話で言うなら、「スパゲッティの早食いをやるしかない」と思ったからやったんだな、と、一個抜けて見てくれる人を探すためにその場に挑むしかないですよね。そもそも「こういうのってサムいじゃないですか?」っていうスタンスで入って、ちゃんと向こうを沸かせるのって、なかなか難しいことだと思うんですよ。かといって、スカすのも違う気がしていて。

中村:はいはい。

蓮見:「こんなん、ムリですよ、やらないですよ!」というのもダサいな、と思っちゃうので。やるならまっすぐやりたいし、僕は割と、自分が面白いと思うことをバカ正直にぶつけて、全然ウケていない人とかも結構好きなので……(笑)。そういう場を見ていたいんですけどね。自分の時は、トップバッターをやるようにしています。

澤本:なるほど。「行きまーす!」って言って?

蓮見:はい。「行きまーす!」って言って、トップバッターの軽いボケを笑わない空気なら、それはもう、絶対に集団の方が悪いので。

澤本:たしかに。

中村:なるほど!

蓮見:自分的には絶対にトップがいいな、と。あとは、次の人にヤジを飛ばす奴として見てもらう、というのが自分のことが一番伝わると思うので。

澤本:頭いいね。打順が大事なんだ。

蓮見:絶対にそうですね。トップバッターがムリだったら、一つ前の人がスベったのをもう一回言うとかをやるようにしていますね。

中村:なるほど、これはけだし名言、じゃないですか。

澤本:さすがだわ。

中村:なので、「ケンタッキーの倦怠期」さん。まあ、爪痕は残したほうがいいが、トップバッターをやれ、と。これはいいアドバイスでした。

「身内がスタバで話してるような」セリフ

中村:澤本さんは結構昔から「ダウ90000」がお好きだったんですか?

澤本:元々は、よくこの番組にも出ていただいている元テレビ東京の佐久間宣行さんから、去年の秋ぐらいに「ダウ90000って、澤本さんがめっちゃ好きだと思うから、見たほうがいいですよ」って言われて。年末に舞台があったんですよね?

蓮見:そうです!

澤本:その配信を見たら、もう、すっごい面白くて。

蓮見:いや~、ありがとうございます!

澤本:その次の新宿で開催していた回から、実際に観に行くようになったという。

蓮見:来ていただいていたんですね、ありがとうございます!

澤本:行きました。ビックリしました。

蓮見:ええ~?

澤本:面白くて。というのは、こんなに「身内がスタバで話しているような話」を……。

蓮見:ああ~! ありがとうございます(笑)

澤本:ユーミンが昔、ファミレスの横の人の話を盗み聞きしていたって言ってたけど。そんな状態を舞台に対して感じていて。しかもめっちゃ面白いっていう。これを書けるのは凄いな、と思ったんだよね。

蓮見:あはははは!

澤本:だから、すごく質問したいことがいっぱいあって。つい最近の例で言うと、フジテレビの『深夜1時の内風呂で』(フジテレビ)っていうドラマの脚本を書かれていたじゃないですか。

蓮見:はい。

澤本:あれは1時間ドラマですよね。あれって、最初にどこから考えるんですか?

蓮見:あれは、最初にお話をいただいた時に「8人でやりたいです」と言ったら「じゃあ、お願いします」と言っていただいて。そうすると、普段の公演と出来る設定は同じになるんですよね。で、それをどう分けようかな、となった時に、舞台上ではやりづらいシチュエーションでやりたいな、と。

澤本:はいはい。

蓮見:それで、舞台上での再現も、裸になるという状況的にも、なかなか難しいなと思っていた「お風呂場もの」をやってみたいな、と。内容は、誰かと誰かは初対面でという話の方が広がりやすいなと思っていて、普段から全員が知り合いの話というのは書かないので、そこからあんまり人気がない旅館のお風呂場がいいな、と考えていきました。

澤本:はい。

蓮見:あとは、風呂場だと普段人に隠しているものが出ている、というのがお客さんにも伝わるかな、とも思って場所の設定を決めました。

澤本:男湯と女湯をわける衝立というんですかね。あれを隔てて男女で告白するじゃないですか?

蓮見:はい。

澤本:あれって、最初からやりたいと思っていたんですか?

蓮見:最初は、風呂場で泳いでいる人を見かける、というのをやりたいな、と。多分、最初の頃にメモにあったやつなんですけど。でも、それが好きな人のお父さんだったらイヤだな、というのが会議の時に出て。あ、これはひとつ乗っかれば1時間いけるだろうな、と思ったんですね。

澤本:なるほど。

蓮見:その次ぐらいに、壁を隔てて喋っているぐらいのほうが、本当のことを言いやすいかな、と思って。だからあの場所はアリだな、と考えていきました。

澤本:あれがすごく好きで。

蓮見:わあ~、ありがとうございます!

澤本:演劇とコントの両方っておっしゃっていたけど。最後の方はすごくドラマ的じゃないですか?

蓮見:そうですね。ドラマってこうなのかな? みたいな感じで。

澤本:いやいや、素晴らしいと思いました。面白いと思って見ていると、最後にきちんとエモくなっていくじゃないですか?あれは、ご自分としてそういうものが好き、とかなんですか?

蓮見:コントの場合は、一応「最後のオチ」は笑いが来るようにしていて。そのフリとして、ドラマを使うということに今、面白みを感じているというか。みんなが役者志望なので、凄いイイ話みたいなシーンがあったほうがいいだろうな、と最初の頃に思っていたのが、今でもクセで残っているんですよね。尺で考えた時に、そろそろ終わったほうが良いな、というタイミングでイイ話をしだすという。急いでコントを書いている時は、たぶん無意識にそうしちゃっていると思います。

澤本:なるほど。

蓮見:で、演劇の場合は、やっぱり90分から100分せっかく見てもらうわけだから、何か印象に残るシーン、目で見て覚えていられるものがひとつあるといいな、と思って考えるのはありますね。

あれよという間に大ブレイクへ!

澤本:そもそも、演劇は見ていたんですか?

蓮見:いや、演劇は全く見たことがなくて。高校の文化祭の時に、クラスで劇をやったんですね。その脚本を全部書いたんですけど、それを友だちがYouTubeに上げていて。たまたまそれを見た大学の友だちが面白いと思ってくれて、それが始まりだったので。一切、演劇はやっていなかったんですよ。

澤本:へえ~。

蓮見:ホント、自分ひとりで書いているのはここ2年ぐらいなので。なんというか、まだ「書きたて」なんですけど。

澤本:それでこの状況は凄いですね。

蓮見:いや、ありがたいことです。全然初歩的なことがわかっていないので、スタッフさんに助けてもらいながらなんですけど。セリフの言い方なんかは自分のやり方があるんですけど、演出の方はまだまだ自分の中にないので、毎回つくるたびに結構困りますね。

中村:今開催してるのは、第4回なんですね。公演『いちおう捨てるけどとっておく』が、新宿シアタートップスで開催中(10月19日まで、現在は終了)。16ステージがわずか10分で完売した、と……。

蓮見:ありがとうございます! おかげさまで。

中村:これ、凄いんだけど。凄いのは「まだ第4回なのか」っていうところですよね。

蓮見:あはははは! そうですね(笑)。一応、コントの公演と分けています。

中村:ああ、コントはもっとやっているんですね?

蓮見:コントも……。まだ1回ですね(笑)。トータルでもまだ5回しかやっていなくて。

中村:おお~! じゃあ、超大ブレイクですね!

蓮見:いや、ホント急なんですけど、ありがたいですね。それこそ、「岸田國士戯曲賞」にノミネートさせてもらったり、「M-1 グランプリ」の予選に出たりとかがあって。その辺から、見てくれる人数が一気に増えた気がしますね。自分たちもビックリしています。こんな感じではなかったので、全然。

澤本:元々、YouTubeで配信しようと思っていたんですか?

蓮見:はい。僕は友だちの前で何かを発表するのが恥ずかしいタイプなので、YouTubeにコントをのせれば友だち以外の人に一番早く見てもらえるかな、と思って。最初の予定では、毎月コントライブをやって毎月ネタを12本ぐらい書こうと思っていたんです。コンビとかトリオのネタをいっぱい書いて、それをYouTubeで面白いと思ってもらえたら、お笑いライブに呼んでもらったりして露出が増えるだろうな、と。コンビでもトリオでも、全部に「ダウ90000」ていう名前で出ておけば、誰が行ってもいいし、そのまま出続ければ面白がってもらえるかな、と思ったんですね。

澤本:ほう。

蓮見:そしたら、最初にライブに呼んでくれた方が、「8人でどうぞ」って言ってくれたので。それで、ライブシーンにも8人で出られるようになって。思っていたよりも8人でネタをやることをスッと受け入れてもらえたんですよね。それがこの「速さ」につながった気がします。

セリフにどこまで「同時代性」を取り入れるか?

中村:改めて、この『いちおう捨てるけどとっておく』は、演劇公演という建て付けですが。いつものコントライブとはちょっと装いが違うんですか?

蓮見:そうですね。この間のコント公演では、60分でコントを6本やったんですけど、今回は100分で一本のお話ですね。いつもワンシチュエーションでやっているので、8人で何かを喋ってます、って感じですね。毎回そうなんですけど(笑)。

中村:あはははは!

澤本:それとセリフに同時代性が高いというか、これは見ていないとわかんないだろう、っていう言葉が含まれているじゃないですか?

蓮見:ああ~、はい!

澤本:たとえば、「花束かよ!」って言った時に、映画の『花束みたいな恋をした』(2021、土井裕泰監督)を見ていない人にはまったくわからないのに、会場がウケるじゃないですか?あれって、「ウケるだろうな」と自信を持って書いているんですか?

蓮見:そうですね~。書いていて、何かの例えとしてのフレーズが必要だな、と思った時はだいぶ考えますね。今はテレビでもやらせてもらえるようになったので、さらに幅広く例えを選んでいかなきゃいけないな、と思っていて。

「ピーク」というコントをやった時は、最初はぼくらのお客さんの前でやったネタだったので、「同世代で知っていれば大丈夫だろう」と。ただ、見ていない人でも『花束〜』が、どんな映画だったのかはなんとなく分かると思うんですよ。それはもう、作品が持っているパワーですけど。

澤本:はいはい。

蓮見:恋愛映画であれだけヒットしたということは、おそらく男女の機微を描いた映画なんだろうな、というのは頭の中にあると思うんですね。だから、正直言ってお客さんが見ていなくても、あれだけ有名なら使ってもいいだろうな、という。

澤本:なるほど。

蓮見:あとは時期ですね。あのタイミングだったから使ってよかった。YouTubeに上げちゃっているのは、今やってもたぶんあそこまでウケないからなんですよ。なので、早めにYouTubeに出しちゃおう、と。そういう意識はしていますね。ただ、僕がそんなにたくさん作品を見るようになったら、お客さんの感覚とちょっとズレていっちゃうんじゃないかな、と思っていて。それがちょっと怖いんですよ。お客さんが知らないことを言い出すんじゃないかな、と。

澤本:面白い脚本を書かれる方、三谷幸喜さんや宮藤官九郎さんもそうですよね。特に宮藤さんは商品名まで出すじゃないですか? しかも、それがそこそこコアな商品なんだけど、みんながそれを聞いてわかる、と。そういうのを前提に出していくじゃないですか?

蓮見:そうですね。

澤本:で。そんな宮藤さんでも、蓮見さんよりちょいメジャーなものを出している。

蓮見:ああー、なるほど!

澤本:僕もたまにセリフに商品名を書いたりしますけど、どれぐらい認知があるのかを考えたら、すごく怖いんですよ。

蓮見:ああ〜、そうですね。僕もたしかに、怖いは怖いんですけど。でも、雰囲気で笑っている人がいるのなら、それが一番ありがたい気がしていますね。「知らないけど、後々調べたらこれだったのか!」とか。それでも別にいいかな、と思っている部分もありますね。

ただ、自分ではあえて調べないようにはしています。調べちゃったらもうひとつ奥の知名度になっちゃう気がするので。ぼんやり知っているぐらいが丁度いいですね。

時々、台本を呼んだメンバーから「これ、例えとしてホントは違いますよ」みたいなことを言われるんだけど、ホントは違うぐらいがイイんだって!と(笑)。「みんなのイメージ」で言うことこそが大事なんだから。ホントは違うんだけど、なんかここでは当てはまっているな、だったら、そっちの方がいいんだよ、って言うことはありますね。

「伝えたいもの」がなくちゃ、ダメなのか

澤本:コントや舞台を書くときって、「今回はこれが書きたい」と思って書き始めるのか、「面白いものが書きたい!」と思って書くのか。どっちですか?

蓮見:いや~、「面白いものを書きたい」と思ってずっ~と探してますかね。でも、自分から「これをめちゃくちゃ書きたい!」と思って書いたことはないかもしれないです。今はありがたいことにお仕事をいただけているので、その都度考えて出していますけど。でも、あんまり伝えたいことってないですね……。それって、いつか出てくるんですかね?

澤本:僕が以前、映画の脚本をつくる作業をしていた時に、「澤本さんさ、これで何を伝えたいの?」って言われたんですよ。

蓮見:う〜ん!

澤本:でも、特にないんですよ。

蓮見:いやあ~、そうですよね!

澤本:それで僕、「面白ければいいな、と思って」と言ったら、「ダメだよ!」って言われて。

中村:あら!?

蓮見:ええ~!?

澤本:映画をつくることって、ある程度「出資」じゃないですか?

蓮見:まあ、それはそうですね。

澤本:巨額の出資をして、タレントを集めて一本やるというのに、伝えたいことがないなんてダメだろ、ってことなのかなと思ったんだけど。でも、そう言われたことに凄くビックリして。面白ければいいと思ってやっていたけど、やっぱり、世の中に伝えたいことがないといけないのかな? って、その時に初めて意識したんですよ。

蓮見:う〜ん。僕はちょっとだけ、それは傲慢な気がしちゃいますね。何が伝わるかなんて、絶対に見た人によって違うじゃないですか? 「感動した」と言っても、どのセリフに一番感動したかは人によって違うのに「感動させるために、つくっています」って、順番的に逆なんじゃないかと。

商売のことを考えたら「ダメ」っていうのはわからなくもないですけど、作品として「ダメだよ」って言われるものは、たぶんひとつもないはずなんですね。そういうことでつくっているわけじゃないんだけどな、って言いたいなと思いますね(笑)。

澤本:なるほど……、僕がちょっとそういう恥ずかしい思いをした、というご報告です(笑)。

一同:あはははは!

〈END〉後編に続く