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【CES2023】サスティナビリティへの取り組みをどう発信? BOSCH、Panasonicのプレスカンファレンスをレポート(森直樹)

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2023年のテクノロジートレンドを占う最初のイベント、世界最大規模のテクノロジーカンファレンスであるCESが、米国はラスベガスで今年も始まった。CESには「Fourtune 500」の企業のうち、323社が登録し、3,100以上の企業が世界中から出展。会期中には270を超えるセッションが行われる。

毎年、約173カ国から参加する巨大なイベントだが、もともとCESは家電ショーとしてスタートした。しかし今日ではテクノロジーとイノベーションのイベントに変化を遂げている。CESでは、スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XR、そしてWeb3や環境に至るまで、先端的な取り組みに触れることができる。ここで触れることができるテクノロジーは、産業からビジネスモデル、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても注目すべきイベントだと言える。

コロナ禍を超えて久しぶりに、現地より「アドタイ」視点で、森直樹氏が最新情報をレポートする。

CES2023現地レポート第2弾は、1月4日に行われたプレスカンファレンスの様子をお届けする。昨年のCESから各社が大きく取り上げるようになったサスティナビリティ。今回は、脱炭素をはじめとする、環境への取り組みを中心に、BOSCH、パナソニックのプレスカンファレンスを現地からレポートしたい。

BOSCHのテーマは「すべての人の安全保障」

まずはBOSCHを取り上げたい。登壇したMember of board of mannegement of Robert Bosch GmbhのDr. Tanja氏は、世界はパンデミックに加えて、戦争、インフレ、エネルギー不足、天災など新たな課題に直面していることに触れ、「すべての人の安全保障」というテーマを選んだと解説した。BOSCHはセキュリティ、ウェルビーイング、そして地球の健康を守り、向上させるために、テクノロジーが果たすべき重要な役割を認識しているという。

主役はセンサー、市場規模は2030年に4000億ドル超と予測

カンファレンスの冒頭で、「私たちの生活の中で特に大きな役割を担っているテクノロジーについて話したい」と切り出し、センサーの技術に言及した。Tanja氏はセンサーがなければ、IoT(Internet of Things)も実現しないと、その重要性を強調し、さらにセンサーの機能は増え続け、重要性も日々増していると指摘した。そして、2019年から2030年の間に、世界のセンサー市場規模が2倍以上の4000億ドル超になると予測されるという。

Member of board of mannegement of Robert Bosch GmbhのDr. Tanja Ruckert氏と、President of Bosch in North AmericaのMike Mansuetti氏。新製品のセンサー、世界最小・最軽量の粒子状物質センサーを発表。市販の同クラスのセンサーの最大450分の1の大きさで、あらゆるタイプの家電製品に搭載して、どこへでも持ち運ぶことができるという。

サーキュラー・エコノミーへの対応はIBMとの提携で実現させる

BOSCHは、デジタル化とソフトウェアを活用して、サーキュラー・エコノミーを実現するため、ブロックチェーン技術を活用するという。製造業や自動車分野部品の出所、二酸化炭素排出量、懸念の高い材料など、サプライチェーンを監視することで、全体でサーキュラー・エコノミーを実現するという。
また量子コンピューティングの分野におけるIBMとのパートナーシップ締結に触れ、超強力なコンピュータを活用することで、パワートレインに使用されている貴金属やレアアース代替品の探索を目指すという。さらに同社は、事業活動における二酸化炭素排出量や、ソリューションが人々や地球に与える影響に関して、特別な責任を負っていると説明し、正しい道を歩めば、収益性と持続可能性という2つの時代が両立できることを示したいとのことだ。

BOSCHの調査によれば、世界の5人に4人以上の人が、持続可能な技術を開発・使用する企業を、地震の購買活動で支持するという。

2050年までに地球全体の二酸化炭素排出量の1%削減を目標「Panasonic GREEN IMPACT」

「持続可能なイノベーションを追求することは、世界に貢献するというパナソニックの長年の使命の中で、自然な進化である」。
パナソニックのプレスカンファレンスは、サスティナビリティへの取り組みを深めることが同社にとって単なる宣言ではなく、日々実践していることの理由であると、とオーディエンスに説明するところから始まった。

冒頭では、Z世代の3分の2は、来たるべき次の世代のために持続可能な未来を確保するため、気候変動の問題への対応を最優先すべきと考えているという調査結果に触れ、北京オリンピック フィギアスケートの金メダリストであるネイサン・チェン氏をゲストに、気候変動への対応は今すぐに取り組む緊急の課題であり、目標を達成するために全力を尽くす必要性を訴えた。

北京オリンピック、フィギアスケート金メダリストのネイサン・チェン氏。

コンシューマ向けプロダクトでも排出量削減に挑戦

続いて、Vice President, Branding and Strategic Communications · Panasonic North AmericaのMegan Pollock氏と、執行役員 グループCTOの小川 立夫氏が登壇、パナソニックはサスティナビリティへの取り組みを深めて、気候変動が地球に与える影響を食い止めるための直接的な行動を起こしていると訴えた。
具体的には、2030年までに製造とオペレーションでネットゼロを達成するため、再生可能エネルギーの新技術やソリューション開発に多額の投資を行っているという。パナソニックは、このコミットメントを「Panasonic GREEN IMPACT」と呼び、長期での計画を立てているという。

同社は、2050年までに地球全体の二酸化炭素排出量から現在の総排出量の1%削減することが目標だという。それは、3億トンの二酸化炭素排出という野心的な数字だが達成可能だと説明。その実現のためにはバリューチェーン全体で排出量を削減する必要があるという。パナソニックは、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)に参加し、世界をリードする200の持続可能な企業とともに、ネットゼロの未来を実現するために取り組んでいること。また国際的な機関を支援し、バリューチェーン全体での削減の活動で回避された排出量の定義と、その計算方法の標準化に取り組んでいるということだ。

Vice President, Branding and Strategic Communications · Panasonic North AmericaのMegan Pollock氏と、執行役員 グループCTOの小川 立夫氏。

パナソニックが提唱する「Panasonic GREEN IMPACT」の概念。2050年には自社の排出削減、バリューチェーン全体の排出削減、技術革新や新しいビジネスによる削減により、約3億トンの二酸化炭素削減を目指すという。

パナソニックが新たに発表したオーディオシステムは、最適化された素晴らしいサウンドを提供するだけでなく、消費電力を最大67%削減するという。

ひとつの充電池、ひとつのモーター、ひとつのアダプター、複数のヘッドで構成されているパーソナルケア製品。このモジュール設計により、従来のパーソナルケア製品と比べて約60%の資源を節約できるという。

パナソニックは、EVのバッテリー開発と製造、20年以上前から取り組む水素燃料電池技術開発など、エンタープライズの取り組みに加えて、コンシューマプロダクトでも排出量削減への取り組みを行っており、同社の環境への取り組みが経営と製品戦略の中核に位置していることを窺わせていた。

発表されたサスティナビリティ・ESGでCESが注目している技術・領域。

 

森 直樹氏
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター
エクスペリエンスデザイン部長/クリエーティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。