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【CES2023】コネクテッドホームでも環境負荷を意識 オープンイノベーションで目指す、SUMSUNGのサスティナブル戦略(森直樹)

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2023年のテクノロジートレンドを占う最初のイベント、世界最大規模のテクノロジーカンファレンスであるCESが、米国はラスベガスで今年も始まった。CESには「Fourtune 500」の企業のうち、323社が登録し、3,100以上の企業が世界中から出展。会期中には270を超えるセッションが行われる。

毎年、約173カ国から参加する巨大なイベントだが、もともとCESは家電ショーとしてスタートした。しかし今日ではテクノロジーとイノベーションのイベントに変化を遂げている。CESでは、スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XR、そしてWeb3や環境に至るまで、先端的な取り組みに触れることができる。ここで触れることができるテクノロジーは、産業からビジネスモデル、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても注目すべきイベントだと言える。

コロナ禍を超えて久しぶりに、現地より「アドタイ」視点で、森直樹氏が最新情報をレポートする。

SUMSUNGは”接続体験”を向上させる

私が「アドタイ」向けに寄稿するCES現地レポートで毎年、欠かせないのがSUMSUNG Electronics(以下、サムスン)なのだが、今年は基調講演がなかったため、代わりにプレスカンファレンスからサムスン発表をお届けしたい。昨年のCESでは、サスティナビリティを全面的に打ち出したサムスンは今年、何を発信したのか?

プレスカンファレンスでは同社CEOのJH Han氏が登壇、“Improving the connected experience”を掲げ、「世界では140億台以上のデバイスがコネクテッド(接続)され、生活の中で重要な全ての場所で接続し始めている。それは、家、車、職場に至っている」と、接続された現在の世界とサムスンの関係に触れるところからプレゼンテーションが始まった。また、今年のプレスカンファレンスのテーマを、接続体験の向上と、より持続的な未来に貢献するためのコミットメントだと説明した。

Vice Chairman, CEO & Head of Device experience Divijon JH Han氏。現在、世界中の生活者は140億台以上のデバイスが接続されていると説明。

持続可能な社会の実現でもオープンイノベーションを標ぼう

サムスンはサスティナブルな社会の実現について、エネルギー効率、サービス、パートナーシップにより達成させることを目指しており、これは技術革新ならびに世界中のパートナーとの共創により実現されるものであると話した。そして、すでにその取り組みは進んでいるという。持続可能な未来のための行動においても、技術革新に加えて共創やオープンイノベーションの視点を前提にしていることは、同社の主要事業がオープンイノベーションのプラットフォームを前提にしている点とも共通している。

2027年までに「再生可能エネルギー100%」に移行

続いて、具体的な環境アクションにおける目標についても触れ、「昨年の9月に、地球に対する新たな、そして大胆なコミットメントとして、2050年までに全ての事業所で必要な電力を再生可能エネルギーでまかない、2027年までに再生可能エネルギー100%に移行。2030年までに炭素排出量ゼロを達成することを目指す」と宣言した。

同社のCorporate Sustainability Centar, Inhee Chung氏は、私たちの多くが日々享受しているテクノロジーの利用をサスティナブルなものにすることを目指しており、人々の日々の小さな変化の集積が大きな変化を生み出す「デイリーサスティナビリティ」によって実現するとしている。

Vice President, Corporate Sustainability Centar, Inhee Chung氏

環境を意識したコネクテッドホーム「SmartThings Energy」

サスティナビリティに対する取り組みの説明は続き、同社のテレビやスマートフォンの多くは、リサイクル素材を取り入れており、例えば昨年、販売されたギャラクシーのほとんどに、再生プラスチックが使用されているという。今後も、多くの製品に再生プラスチックが採用され、エネルギー効率を向上させるという。さらに、メモリや5G無線ネットワーク、チップセットが、その利用者であるお客さまの省エネに貢献しており、サムスンのこうした製品群が広がることが、より良い未来に向けた変化をもたらすと主張した。

またサスティナビリティの目標を達成するためには、特にコネクテッド・ホームにおけるイノベーションが重要な役割を果たす、とも話す。
サムスンのコネクテッド・ホーム・プラットフォームは、すでに何百万もの人々が、家をよりスマートで効率的に運営するために活用されており、8000万台以上のデバイスがこのサムスンのプラットフォームに接続されているという。サムスンは、AIを活用したプラットフォームのエネルギーマネジメントにより、消費者がエネルギーコストを節約しながら、気候変動への影響を低減することができると強調した。

これは、同社のコネクテッドホームの中核を担う「Smart Things」というプラットフォームに“Energy”を加え、「SmartThings Energy」として統合され、他のテクノロジーリーダー数社と共同で、コネクテッドデバイスの使用中の排出量の測定と脱炭素化を目的とした業界初の規格を開発したという。サムスンは、パートナーシップとSmartThings Energyを通じて、より良い明日を形作ることができると訴え、多くのパートナーが参加することを訴えた。

昨年発表したパタゴニアとの共創事業をアップデート

サムスンは、昨年のCESでの基調講演で紹介した、パタゴニアとの共創の取り組み成果について触れ、パタゴニアからのゲストスピーカーとして、同社のDirector of PhilosophyであるVincent Stanley氏を招き、洗濯からマイクロプラスティック汚染を54%削減するフィルターの実現を紹介した。

パタゴニアのDirector of PhilosophyであるVincent Stanley氏によるゲスト講演。

SmatThings HUBの新製品は超小型。

サムスンは、コネクテッドホームの統一規格「Matter」に対応した、小型のスマートホームハブ「SmartThings Staiton」を発表した。これは、同社のコネクテッドホームのプラットフォームSmartThingsの新製品で、非常に小型で、ワイヤレス充電器と一体型となっている。家庭内の他社製品を含めたコネクテッドホームのハブとして様々な機能を提供するという。

今年のサムスンの発表は、昨年同様にサスティナビリティを意識しつつもSmartThingsの新製品の発表や、パタゴニアと共創によるマイクロプラスティック対策の成果発表など、同社の製品群とサスティナブルな社会の実現、共創による環境領域でもエコシステムの中核となり、スケーラビリティを持つ可能性など示唆に富むプレスカンファレンスとなった。

展示はサスティナビリティとSmartThingsを中心に展開

サムスンはコンベンションセンターのメイン会場に展示スペースを出展社の中では最大規模で設けている。プレスカンファレンスでの発信を踏襲して、サステナビリティとSmartThingsによるエコシステムを中心にスマートテレビから白物家電、Galaxy端末などをサムスン電子の新製品が展示されていた。展示全体は、コネクテッドホームやスマートワークなどのシーンに応じて展示さている。特にSmartThingsによるコネクテッドホームや、ネットゼロを目指す住宅コンセプト展示が目を引いた。

サスティナビリティをテーマに大きなエリアを割いた展示を行っている。どれも製品に落とされており、サムスンの製品を使うと環境への貢献に寄与できることがアピールされている。

昨年発表された、電池を使わないリモコンの展示など。

SmartThings Energyの概念がパネルと映像で説明されている。写真はパネルのみ。

SmartThingsが接続可能なプロダクトを俯瞰で説明しながら、映像で具体的なシーンやベネフィットを紹介している。

SmartThingsのエコシステム全体像を物理展示と映像で紹介している。多くの企業との連携したスマートホーム体験を可能にすることが一目でわかる。サムスンは、SmartThingsを買収した当時から、CESでオープンイノベーションによるエコシステムの拡大によるビジネスの広がりと消費者の便益拡大を主張している。

森 直樹氏
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター
エクスペリエンスデザイン部長/クリエーティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。

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