この記事は僕のような凡人──特にクリエイティブな才能に恵まれなかった人に残された最後の武器「企画力」について、出版プロデューサーという仕事を通じて考えていきたいと思います。
こんにちは。出版プロデューサーの西浦孝次です。「出版プロデューサー」と言われてもよく分からない人の方が多いですよね。ひとことで言えば「企画者として本を作る人」です。企画の最初から最後まで、著者と一緒に本を作るパートナーであり、編集者はもちろんライター、デザイナー、版元の営業まで多くのプロフェッショナルと協創していく、とてもやりがいのある仕事です。
クリエイティブな才能に恵まれなかったとしても、自分で企画さえ生み出せれば「はじまりの一人」としてクリエイターたちと一緒にものづくりはできるんです。そんな出版プロデューサーの仕事やキャリアについて全3回にわたって書いていきます。特に著者、編集者との本づくりの面白さについてお伝えできればと。
まずは、どういう経緯で出版プロデューサーになったのか、僕の出版業界におけるキャリアのスタートからお話します。
編集・ライター養成講座に、全くついていけなかった
僕が出版業界を志したのは大学生のころでした。「本に携わる仕事がしたい」と思って、自分で踏み出した最初の一歩が「編集・ライター養成講座」の大阪1期です。
そう、僕も「編集・ライター養成講座」の卒業生の一人です。
ただ残念ながら、優秀な生徒ではありませんでした。「ここで何かをつかんでみせる」と意気込んで参加したものの、企画も文章もまったくついていけなかったんです。特に、企画がひどかった。講座のおかげで、文章はある程度読めるものにはなりましたが、企画は本当にかすりもしない。毎回低評価なうえ、ダメ出しの意味も理解できていないし、ほめられている人の企画についても、何が良いのか、よくわかっていませんでした。
正直つらくて、恥ずかしくて、辞めたかったけれど「ここで何かをつかまないと」と必死でした。ここで逃げたら、本当に何にも残らないという恐れがあったから、踏みとどまれたのだと思います。何もないままの自分はもっと不安で、嫌でしたから。
講座で学んだのはスキルより肌感覚
そんな状況だったからか、印象に残っていたのは企画の立て方のようなノウハウではなくて例えば
・プロのクリエイターがどんな時間の使い方をしているのか
・流行りの映画や本をどれくらいチェックしているのか
そういった肌感覚でした。
自分より断然忙しいはずのプロの方が、より多くのエンタメに触れているという事実は、当時けっこうな衝撃でした。「2時間急に時間が空いたから、映画を観てくる」このフットワークの軽さが大事なんだなと思いましたね。映画を観るために時間を作っている自分とは、時間への貪欲さが違うのだなと。
自分より何倍も忙しい人こそ、無理やり「読む、見る、聞く、味わう」ための時間を絞り出しているのです。「流行りを知らないなんてヤバイ」という強迫観念を持てたことが実は一番の収穫です。
そして、散々打ちのめされて認めざるを得なかった「自分の企画はつまらない」という認識もすごく大きな財産になりました。苦手と知っているからこそ、自分の企画を徹底的に疑うようになったのです。きっともっと面白くできる、何か別の切り口があるはずと思えます。
「自分はセンスがある人間だ」なんて勘違いしていたら、本当にそこで終わっていたと思います。だから今、宣伝会議の講座を受講して「才能ないのかな」と思っている方がいれば、あまり気にしないでほしいです。生徒の時に褒められてその後通用しない人より、生徒としてしっかりダメ出しされて、その後活躍できる人の方が良いと思いませんか?
出版社を辞めて出版プロデューサーになる
その後、出版社アルバイトと就職活動を経て、学研(当時の学習研究社)に入社しました。その頃は「企画力がないのは、きっとマーケティングに向いているからだ」と、妙にポジティブに考え「出版界最強のマーケター」を目指していました。書店営業を一年経験し、僕は望み通り書籍マーケティングの部署に配属されます。
それなりに挫折も経験しながら、新人をベストセラー作家に育て上げることにも成功し、「お前がいちばん楽しんで仕事している」と他部署の上長からも言われるほど、楽しそうに働いていたようです。実際に仕事はやりがいに満ちて、楽しかったです。
にもかかわらず僕は、出版社を辞めました。
理由はシンプルです。本のマーケティングを極めるには、本づくりから携わらないといけないと感じたから。実は書籍のマーケティングを担当して「売るため」に編集部とアイデアを戦わせるようになると視点が変化していきました。「作った本をどう売るか」から「どう作れば売れる本になるか」に、そして「何を作れば売れるか」へと深化していったのです。しかしそんな「企画から販促まで」を担当する職種は、出版社には存在しません。会社の中に無いのなら、外に出て、自分で作るしかない。そういう経緯があって、企画から販促まで携わる出版プロデューサーになったのです。
あれだけダメダメだった、企画の世界で勝負することにした瞬間でした。
最後までご覧いただき誠にありがとうございました。次回は「出版プロデューサーとして、著者と企画をつくること」について書いていきます。

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