米国の3人に1人が観戦!? スーパーボウルとは何か?
米国・ニューヨーク時間2月9日の午後6時半(日本時間10日午前8時半)、スーパーボウル2025がキックオフした。今年はカンザスシティー・チーフスとフィラデルフィア・イーグルスの対戦が行われた。試合はイーグルスが前半からチーフスを圧倒し、そのままイーグルスが勝利を収めた。
スーパーボウルとはアメリカンフットボールのプロリーグの優勝決定戦のこと。アメリカンフットボールはアメリカで最も人気とも言われるスポーツであり、2位の野球を大きく引き離す。その頂上決戦となるスーパーボウルは全米で最も視聴されるスポーツイベントと言われている。観戦者数は年々増えており、今年は1億2千7百万人が観戦したとの試算も出ている。アメリカの人口が3億4千万人であることを考えれば、3人に1人以上が観戦していることになる。
30秒のスポットで最高800万ドル スーパーボウルの広告枠
スーパーボウル観戦のお目当ては試合だけではない。試合の合間にオンエアされる広告も楽しみのひとつになっている。それだけに米国の広告業界では、スーパーボウルで流される趣向を凝らした広告は大きな注目を集めてきた。
ちなみに、今年のスーパーボウルの広告料金は30秒間のスポットが最高800万ドル(約12億円)と、昨年の約700万ドルを上回る。それでも多くの広告主が出稿を望んでいる。なぜなら、スーパーボウルのCMは一般枠のCMと比較して、ブランドパーセプションの効果が20倍に及ぶという調査結果もあるからだ。
昨年の大統領選挙を受け、政治的な広告メッセージは増えたのか?
今年は、キックオフ後に最初に流れたCMはダンキンドーナツだった。俳優のベンアフレックが昨年に続き出演。アメリカのウェブメディアでも注目CMとして取り上げられていた。
今年は昨年の大統領選挙の影響もあり、政治的なメッセージを発する企業が多いのではないかという一部の予想もあったが、実際にはそうした広告はほとんど見当たらなかった。唯一目立ったものとしては、Foundation to Combat Antisemitismの広告。二人の男性が向き合い、違う地域から来たから嫌いだ、理解できないから嫌いだ、見た目が違うから嫌いだ、話す言葉が違うから嫌いだ、他の人が嫌っているから嫌いだ、といった言葉を交わし合う。お互いを嫌い合うという憎悪に反対する広告を展開した。
2025年のスーパーボウルCMは、ノスタルジーに向かう?
こうした広告の代わりに、今年のスーパーボウル内で流されたCMで目立ったのが、ノスタルジーを謳う広告だ。アメリカメディアでも注目されたノスタルジー広告を紹介したい。
Häagen-Dazs
ハーゲンダッツは、今回初めてスーパーボウルのCMに出稿した。ヒット映画シリーズである「ワイルド・スピード」のキャラクターを起用。ワイルド・スピードの原題「Fast and Furious」をパロディ化したCMタイトルの「Not So Fast. Not So Furious」では、ヴィン・ディーゼル演じるドミニクとミシェル・ロドリゲス演じるレティが、ハーゲンダッツのアイスクリームを楽しみながら海沿いをドライブする。
冒頭でドミニクが猛スピードで車を走らせるが、レティがハーゲンダッツのアイスクリームバーを食べ始めると、リラックスしたスローな雰囲気に一転。後方から追いかけてきたテズがまったり走るドミニクに「スピード最優先の生活はどうした?」と声をかけると、ドミニクは「今日はやめとく」と答える。
最後に「SLOW LIFE」と書かれた車のナンバープレートが映し出されて幕を閉じるというCMだ。映画「ワイルド・スピード」の初公開は2001年。24年前から続くコンテンツを活用し、ファンはもちろん、ファンでなくてもハーゲンダッツのブランド価値が分かりやすく伝わる内容だ。初登場にして十分にブランドメッセージを伝えられたCMになったと言える。