慣れを、リセットするみたいに。(文・片岡良子)

東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。今回は、2018年度のTCC新人賞を受賞した片岡良子さんです。

まだコピーライターになっていない頃、宣伝会議の色んなクラスを通い尽くしてしまった私は、なにか「がんばっている感じがすること」がしたくて、コピー年鑑を写経してみることにした。10年分。週末、都立中央図書館に通って、がんばったりサボったりしていたら、丸1年近くかかってしまった。最後のほうは、もう意地だけで書き写していたから、ちゃんと力になっているかどうかは怪しい。

コピーライターになってからも、年鑑が発行されたら、なるべくしっかり時間を取って一気に読む。もしくは、写経するようにしている。空いている時間にパラパラめくるだけでは、何ヶ月経っても読み終われないほど私が遅読だというのもあるが、一気にまとまった容量を浴びることで、身についてしまった自分の書き癖や、慣れみたいなものをリセットできる気がしている。
「こんな書き方もあるんだ!」と気付かされたり、「ここまでジャンプできるのか…」と憧れたり。コピーの頂と向き合うことで、狭まっていた自分の視界がぱぁっと開けていく感覚があって、ありがたい。そして、中途半端に慣れている場合ではないぞと、焦り始める。

〆切や業務に追われると、つい行き慣れた道へ進みたくなる私の思考回路には、年に一度このぶ厚い荒治療が必要なのだと思う。

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片岡良子

CHERRY コピーライター
(2018年TCC入会)

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE新聞広告「キミは、いたほうがいいよ。」、ブルドックソース「ガッツリだって、ヘルシーじゃん!」、明治 エッセル スーパーカップ「ふつうの日、スーパー最高では?」、サントリー やさしいルイボスWEB MOVIE「夏、ごくごく、ゴキゲン。」など。広告されない、ちいさなモノゴトマガジン『ちい告』共同編集長。


東京コピーライターズクラブ(TCC)
東京コピーライターズクラブ(TCC)

東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。2024年度の編集委員長は、尾形真理子氏。『コピー年鑑2024』の詳細はこちら

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東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。2024年度の編集委員長は、尾形真理子氏。『コピー年鑑2024』の詳細はこちら

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