「目指すはエンタメブランド」PAPABUBBLE社長が明かすV字回復の裏側

物価高の影響を受けながらもPAPABUBBLE(パパブブレ)はV字回復を遂げ、売上高を倍増させている。その成長の鍵を握ったのは、単なる飴販売ではなく、職人によるライブパフォーマンスを軸にした体験価値の提供。さらに売上は店舗でのキッチンパフォーマンスの有無で大きく変わるという。目指すは「飴店」ではなく「エンターテインメントブランド」だと話す代表取締役CEOの越智大志氏にその成功の背景に迫った。
※本記事は『販促会議』2025年4月号特集「買い物の楽しさを最大化させる店舗づくり」への掲載内容から再編集してお届けします。

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越智大志氏

PAPABUBBLE JAPAN
代表取締役CEO

新卒で電通に入社し、20年間にわたって広告ビジネスの第一線で実績を積んだ後、台湾発祥のグローバルなティーブランドである株式会社ゴンチャジャパンに入社。CMOとしてブランド改革とデジタルを中心とした高度なマーケティング導入をリード。PAPABUBBLE JAPANのCEOは2023年4月に就任。

商品力×技術×パフォーマンス なぜPAPABUBBLEは好調なのか

飴専門店のPAPABUBBLEパパブブレが、V字回復を遂げている。売上高は2022年から2025年で約2倍。利益も右肩上がりで推移している。しかし、2023年~2024年の新店オープンはゼロ。出店を拡大したわけではなければ、資金調達を行ったわけでもない。さらに市販のキャンディと比較しても高価格帯に位置するのにもかかわらず、この物価高の中でも成長を遂げているのだ。

PAPABUBBLEは、スペインで創業したキャンディ専門店。日本には2005年に上陸し、中野に1号店をオープンした。その後、大丸東京に旗艦店を設置。全世界で32店舗あるPAPABUBBLE店舗の中で、現在22店舗が日本に存在している。

PAPABUBBLEの特徴は、店舗に設置された飴づくり専用のキッチン。飴職人が消費者の目の前で実際に飴をつくり、出来立ての商品を買うことができる。さらに、ただ製造するのではなく、まるでエンターテインメントや劇場にいるかのようなパフォーマンスに力を入れているのもポイントだ。

写真 店舗・商業施設 PAPABUBBLE中野店

中野店。店舗にはキッチンを設置。実際に職人がつくる様子を見ることができる(一部、キッチンがない店舗もある)。

代表取締役CEOの越智大志氏によると、V字回復の要因がまさに「店舗での飴づくりパフォーマンスを見てもらう」体験にあったと話す。

「PAPABUBBLEは、これまでも職人がつくるキャンディで人気を集めてきました。とはいえキャンディ市場は流行の波が激しく、一過性のブームで終わる可能性もあるカテゴリです。さらにキャンディはコンビニやスーパーに行けば100円で買えてしまいます。しかし我々が提供しているのは高価格のキャンディ。それでも、わざわざ私たちのお店に来てくれる理由があるわけです。それは何かと考えたときに、着目したのが店舗にあるキッチンと飴職人の存在でした。お客さまの目の前で職人がつくり上げるライブパフォーマンスや、そこでしか味わえない体験の提供はPAPABUBBLEならではの価値だと考えました」(越智氏)。

飴職人によるハンドメイドとキッチンを使ったライブパフォーマンスに着目したことにより、ブランドコンセプトを「ワクワクしなくちゃ、お菓子じゃない」に策定。単なる「飴小売店」から脱却し、職人の技術とエンターテインメントを融合させたブランドを目指し始めたという。

「憧れは、エンターテインメント施設のようなパフォーマンスを提供することです。ただの菓子店ではなく、体験で付加価値を生み出し、高価格帯のキャンディを売ることを、成長戦略に据えました」(越智氏)。

キッチンパフォーマンスの有無で売上が±50%変化する

伝統的な飴細工という確かな商品価値と、“飴職人によってつくられた”付加価値、そしてパフォーマンスという3つの軸を掛け合わせることによって、売上高は倍増。2022年時点で10億円規模だったが、2025年度には20億円に到達する見込みだ。そして、2030年には売上40億円、純利益10億円を目標に掲げている。

しかし、店舗に設置されているキッチンはフル稼働されることなく、”飾り”のようになってしまっている店舗もあったと越智氏は続ける。コア価値になり得る存在であるにもかかわらず、有効活用していない店舗も多かったのだという。

そこでPAPABUBBLEが推進したのが「社員の意識改革」。キッチンを使用してパフォーマンスを披露することの重要性を伝えることに注力したと話す。

「店舗のキッチンでの飴づくりが、当社の価値であると理解を得られるまでには、正直時間を要しました。飴職人たちに『キッチンは何のためにあるのか』と聞いたところ、『単なる製造のため』という回答が多かったのです。だからこそ、まずはパフォーマンスの重要性を理解してもらうことから始めました。工場としての製造ではなく、お客さまとの接点を重視する『エンターテインメント』としての価値を提供する意識への転換を図りました」(越智氏)。

写真 店舗・商業施設 PAPABUBBLE店舗

飴職人によるキッチンパフォーマンス。体験で付加価値を生み出し、高価格帯のキャンディを売ることを成長戦略に据えた。

意識変革のために、越智氏が行ったのは「パフォーマンス実施時の売上」と「未実施時の売上」の比較。売上への貢献度を数値として可視化することによって、パフォーマンスが価値になることを示したという。

「実際に数値を分析してみると、驚くべき事実が明らかになりました。羽田空港店では、キッチンでのパフォーマンスを実施した日としなかった日を比較して、実施日の売上は184%。また、大丸心斎橋店でも149%と、大幅に伸長していることがわかったのです。ただの『製造』ではなく、パフォーマンスとしての飴づくりが売上に貢献することを示すことができたことは、PAPABUBBLEとしても大きな進歩だったと捉えています」(越智氏)。

写真 店舗・商業施設 PAPABUBBLE店舗

店舗でのキッチンパフォーマンスには、人だかりができる。パフォーマンスを実施した日としなかった日を比較すると、売上にも影響が出ていることがわかった。体験の提供が事業成長に貢献していることは、飴職人やスタッフにも共有。パフォーマンスが価値になっていることを示したという。

社員の成長が売上をつくる 好循環を生むブランドへ

また、越智氏によると、売上が倍に増えた理由にはパフォーマンスの提供だけではなく、社員のモチベーションアップも大きく関係していたと続ける。そこで鍵になったのが「ブランドとしての好循環」を生みだすという考え方だ――

 

本記事の全文は、月刊『販促会議』4月号本誌、もしくはデジタル版(ご購読が必要です)にてお読みいただけます。

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