生成AIがもたらす、新時代のマーケティング実践事例

生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と人の接点の作り方をも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に活かしていけばいいのでしょうか。今回は、生成AIの活用事例を社会応用・実装の観点から富士通の山根宏彰氏が解説します。
 
※本記事は月刊『宣伝会議』4月号の連載「AI×マーケティングで未来を拓く」に掲載されています。

山根宏彰氏

富士通
研究本部 人工知能研究所 研究員

マーケティングの世界に押し寄せる生成AIの波

わずか数年前まで、マーケティングにおけるAI活用といえば統計モデルの高度化など限られた分野へ関心にとどまっていた側面があったように思う。しかし生成AIの登場で、いまや画像やテキストを自在に生成し、広告や商品開発のプロセスに画期的な変化をもたらしている。

企業はこの変化を先取りしようと競うように新サービスや実証実験を進めており、既存の顧客接点やクリエイティブ制作を根本的に刷新する可能性も見えてきた。今回は、国内主要企業が取り組む生成AI事例を紹介し、AIを活用した新たな価値創出の方法を検証してみたい。

伊藤園、メルカリ、電通など国内企業のAI活用事例

まずは、飲料メーカーの伊藤園。「AIタレントを用いたCM制作とデザイン開発」の事例が非常に興味深い。2023年9月、伊藤園は「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMにバーチャルタレントを起用し、日本初のAIタレントを起用したテレビCMとして話題を集めた。約30年後の未来の自分と現在の自分を一人二役で演じる架空の女性キャラクターをAIで創出。容姿や雰囲気も「誰もが健康的・意志的と感じる」ように無数の生成パターンから選定・デザインされている。さらに2024年4月には、このAIタレントCM第2弾「食事の脂肪をスルー」篇を放映した。

同社は同時に、生成AIによる新パッケージデザインを実際の製品リニューアルに採用している。デザイン会社と協業し、パッケージデザイン用に改良された生成AIサービスで多数案を生み出したうえで、最終的な仕上げをデザイナーが行う仕組みだ。こうした「AIと人間の協働」がマーケティング活動のスピードや多様性を大きく高めることが期待されている。

次に取り上げたいのが、フリマアプリ大手のメルカリ。2024年9月に開始した新機能「AI出品サポート」では、ユーザーが商品写真をアップロードし、カテゴリーを選ぶだけで、商品タイトルや説明文、商品の状態、価格などが自動生成されるため、出品の手間が格段に減った。要するに「最短3タップで出品完了」という仕組みで、初めて出品をするユーザーにも敷居が低い。

生成AIによる自動生成の内容はあくまでもユーザー側で調整でき、安全性にも配慮して段階的に展開されている。データの活用によって出品作業は、ほぼ自動化されているが、価格設定などの最終決定はユーザーであるため、安心感と自由度を両立することができているのだ。

利用者数の多いメルカリには、膨大な商品データがある。この商品データをAIで分析し、最適な出品内容を提示することで出品者・購入者双方の利便性を向上させているのである。

広告の世界では電通グループが、2023年10月に立ち上げた新AIサービスブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」の一環として「∞AI Ads」を発表している。これはデジタル広告のクリエイティブ制作プロセスを高度化させるもの。多様なコピーやビジュアルを自動生成しながら、広告効果を最大化できるのが売りだ。東京大学というアカデミアと共同研究を進めている点も興味深い。

企業の発想力を刺激する生成AIの活用事例

こうした大型プロジェクトのみならず、企業の発想力を刺激する事例としてサントリーやパルコの事例にも触れておきたい。サントリー食品インターナショナルは2023年6月、ChatGPTを活用してWeb CMを制作。「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」のCM企画段階からAIに助言を仰いだ結果、“やさしい麦茶宣伝部のAI部長”という架空キャラクターを誕生させた。

 

…この続きは3月1日発売の月刊『宣伝会議』4月号で読むことができます。

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