生活者の意識・行動の変化が激しい時代。生活者の支持を得るブランドになるためには市場の動向に合わせてスピーディーな意思決定も必要です。こうした市場で顧客を増やし成長を遂げるスタートアップ企業では、どのようなマーケティング戦略が企画され、また実行されているのでしょうか。新興企業の戦略から新しいマーケティングの方法論を導き出します。
※本記事は月刊『宣伝会議』4月号の連載「急成長スタートアップ企業に聞く!『わが社のマーケティング戦略』」に掲載されています。
AG1 Japan
設立年 2024年10月
従業員数 3名
事業概要 The Daily Health Drink「AG1」の開発・販売
創業者の体験を基に開発 健康を突き詰めた商品
健康志向の高まりを受けて、日常的にサプリメントを飲用する人も多い。そんなヘルスケア領域で、日本に新たなブランドが上陸した。腸内環境の改善を通じて心身の健康に寄与するAG1社のウエルネス・ドリンク「AG1」だ。販売するのはAG1で、2010年に米国で誕生し、現在は世界48カ国で販売、2024年度にはグローバルで約900億円の売上を達成した。2024年、AG1 Japanを設立し、2025年1月より、日本での一般販売を開始した。
ウェルカムキットの内容。コンパクトかつスタイリッシュなデザインが特徴。届いた時のワクワク感も、重視している要素のひとつだ。
AG1開発の発端は、創業者のクリス・アッシェンドン氏自身の実体験にある。幼少期から体が弱かった同氏は、アメリカの大学病院で免疫不全と診断され、栄養素やサプリメントを投与された。体調は改善したものの、医療保険制度の充実していないアメリカでは、毎月数百万円にも及ぶ多額の医療費がかかった。サプリメントの量も多く、長期的な服用は現実的でなかった。サプリメントを飲んでいても病気になってしまった彼は、検査の結果、腸が正常に機能していないことが分かったという。そこで、栄養素と腸の健康の両方にアプローチする解決策を医者と共に考案。日常的なサポート飲料として誕生したのが「AG1」だ。
こうした想いのもと開発された「AG1」は、75種類の成分が配合されている。さらに多種多様な成分が入っているだけではなく、最大限効果を発揮できるバランスでブレンドした点にも特徴がある。2010年の創業以来、商品改良の回数はすでに52回にのぼる、“健康”を考えつくして生まれた商品だ。
米国ではPodcastを活用 コロナ禍の時流を受けて売上拡大
「AG1」の特徴のひとつは、不足しがちな栄養素を一気に摂れるオールインワン・サプリメントであること。通常、サプリメントは基本的に「ビタミンC」「亜鉛」など個別の栄養素に特化したものが多く、本社のあるアメリカにおいても、オールインワン・サプリメントの市場は確立していなかった。この状況下で、認知拡大の施策の肝となったのがPodcastだ。アメリカでは、2024年時点でリスナー数が1億人を超え、その発信内容に信頼を寄せる消費者も多くいる。
「数百万人規模のリスナーを抱える影響力のあるポッドキャスターに製品を試してもらったところ、彼らは『AG1』のことを心から『良い商品』と言ってくれたのです」とAG1 Japan ゼネラル・マネージャー キム・フーン氏は説明する。
同社はまず、バラエティ番組司会者、脳神経科学者、ライフスタイルコーチと、それぞれ異なる専門性を持つ3名へ、商品の紹介を依頼。その後、コロナ禍で免疫力向上への関心が高まったことを機に、多くの消費者に「AG1」の存在が認知され、売上も飛躍的に向上したという。
日本でのマーケティングはマスではなくニッチに向けた戦略に
一方で、日本のマーケットはアメリカとは大きく異なっていたとキム氏は話す。
…この続きは3月1日発売の月刊『宣伝会議』4月号で読むことができます。
