【関西万博】藤本壮介と巡る大屋根リング「160の国々が目の前に開かれる感覚を」

4月13日に開幕する大阪・関西万博。9日にはメディアデーとして報道陣約4500人が集まり、会場内やパビリオンの内容がお披露目となった。

イメージ 全長2キロメートルのスカイウォーク。心地よい風を感じられ、海の向こうの風景も見渡せる。
イメージ 全長2キロメートルのスカイウォーク。心地よい風を感じられ、海の向こうの風景も見渡せる。

全長2キロメートルのスカイウォーク。心地よい風を感じられ、海の向こうの風景も見渡せる。

本万博の象徴となるのが、約2キロにわたり会場中央を取り囲む円形の大屋根リングだ。3月には世界最大の木造建築物として認定された。リング内のエリアには約160の国・地域の海外パビリオンや8人のプロデューサーが手がけるシグネチャーパビリオンなどが内包されている。

今回のメディアデーでは設計を手がけた建築家の藤本壮介氏によるツアーが企画され、ともに大屋根リングを巡りながら見どころが明かされた。

イメージ 大屋根リングの下で取材に応じる藤本壮介氏。

大屋根リングの下で取材に応じる藤本壮介氏。

「森林資源が豊かな日本で、その資産を活かさない手はない」

写真 人物 藤本氏

大屋根リングは全長2キロ、世界最大規模の木造建築となる。資材は国産にこだわり、約7割が国産の杉やひのきなど、3割がヨーロッパのレッドシダー(アカマツ)が用いられている。

パリに事務所があり、現地でも活動する藤本氏は「世界的に木造建築が推進されている現在、サステナブルな社会を目指す上で日本は少しその流れから乗り遅れている現状がある」と指摘する。「森林資源が豊かな日本で、その資産を活かさない手はない。伝統と最先端技術を組み合わせて、世界最大規模の木造建築を発信することは意義深いと考えました」(藤本氏)。

日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫(ぬき)接合に現代の工法を加え、耐震基準を満たした。木のくさびをそのまま使うと、建築基準法をクリアできないため金属を組み合わせている。

イメージ 方向感覚を見失った時は、大屋根リングに記されたサインが現在地の手がかりになる。

方向感覚を見失った時は、大屋根リングに記されたサインが現在地の手がかりになる。

柱にはサインを付けることで、会場全体の案内表示の役割も果たしている。大屋根の下には無数の木のベンチが並べられ、風が吹き抜ける日陰の休憩スペースとしても大いに機能している。忙しなく会場内を移動する合間に腰をかけ、日差しを避けてほっと一息つく場所が多く設けることができた。

イメージ 柱にはサインを付けることで、会場全体の案内表示の役割も果たしている

「多様性ある人たちを迎え入れるリングに」

藤本氏が最も体感してほしいと話すのが、屋上の回遊路から見渡す円形リング内部の会場の光景だ。階段やエスカレーターで誰でも大屋根リングの屋上に上がることができ、ゆったりと散歩をするのも楽しみ方のひとつだ。

世界各国のパビリオンをずらりと見渡すことができ、世界の約8割にあたる160の国・地域が集まる万博ならではの一体感を体感できる。

イメージ 世界各国のパビリオンをずらりと見渡すことができ、世界の約8割にあたる160の国・地域が集まる万博ならではの一体感を体感できる
イメージ 世界各国のパビリオンをずらりと見渡すことができ、世界の約8割にあたる160の国・地域が集まる万博ならではの一体感を体感できる
イメージ 「リングの上から見える多様なパビリオンのデザインの数々にも注目してほしい」と藤本氏。

「リングの上から見える多様なパビリオンのデザインの数々にも注目してほしい」と藤本氏。

「最先端技術が集まる見本市としての万博であること以上に、今回は大切な意味合いがあります。分断が続く世界情勢の中で160の国・地域がひとつの場所に集まり、半年過ごすというのはとても価値のあること。混雑を回避する流れをつくるという機能性以上に、その一堂に介したさまをぜひ、大屋根リングの上部から感じてほしいです」(藤本氏)。

現地へ来場できない人たちにとってもこのリングの存在が力強いメッセージになると考える。

「円というシンプルな形は循環を意味すると世界共通でイメージできる。一方で円の中に留まるという閉鎖的な印象もあるかもしれませんが、このリングは会場内のサインの役割を果たしているように開かれた円であり、多様性ある人たちを迎え入れる円。開放感を感じていただけるはずです」(藤本氏)。

写真 人物 藤本氏

大屋根リングから見えるパビリオンのデザインにも注目

一方、各パビリオンやイベントと大屋根リングのデザインが織りなす相互作用も見どころのひとつ。「リングの上から見える、多様なパビリオンのデザインの数々にも注目してほしい」と藤本氏も話す。

たとえば海外パビリオンのひとつ、「ルクセンブルク館」を手がけたドイツの空間デザイン会社 jangled nerves代表のトーマス・フント氏も「大屋根リングの上部から見た時にパビリオンがどう見えるかという部分や、日没後のライトアップの演出など協創となるようこだわりました」と明かす。

イメージ 大屋根リングから見たルクセンブルク館(撮影/青山航)。パビリオン自体は分解を考慮した設計で、のちに再利用される予定。
イメージ 大屋根リングから見たルクセンブルク館(撮影/青山航)。パビリオン自体は分解を考慮した設計で、のちに再利用される予定。

大屋根リングから見たルクセンブルク館(撮影/青山航)。パビリオン自体は分解を考慮した設計で、のちに再利用される予定。

夜には大屋根リング全体もライトアップされ、また違う顔つきを見せる。リング越しにもドローンショーを楽しむことができる。

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スタッフリスト

基本設計・実施設計・工事監理 藤本壮介
基本設計 東畑・梓設計共同企業体
実施設計・施工・監理 (北東工区)大林組・大鉄工業・TSUCHIYA共同企業体・安井建築設計事務所
(南東工区)清水・東急・村本・青木あすなろ共同企業体
(西工区)竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木共同企業体・株式会社昭和設計




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