パーソル総合研究所が分析。営業戦略定着のカギは“行動への落とし込み”

宣伝会議では、2025年9月に「第5回 営業戦略会議」を開催。多くの企業が抱える「営業戦略を策定しても、現場での実行や成果に結びつかない」という悩みに対し、パーソル総合研究所で企業の営業力強化をサポートしている坂口陽一氏が登壇。

1万人規模の営業実態調査をもとに、戦略と現場の乖離を埋めるためのプロセス標準化や分業化、AI活用のポイントを解説した。

写真 人物 坂口陽一氏

顧客が求めるものと、営業現場の「ズレ」

なぜ戦略は現場で定着しないのか。講演ではその要因として以下の5点が挙げられた。

  • 顧客情報から課題やニーズの仮説が立てられていない
  • SFAやCRMといったツールの活用が進んでいない
  • 戦略が具体的な活動・行動・KPIに落とし込まれていない
  • ノウハウが共有されず「属人化」してしまっている
  • リーダーシップと仕組みが融合できていない

坂口氏は、これらの課題を解決し、戦略を実践へとつなげる条件として「①顧客情報の理解とターゲティング」「②営業プロセスの標準化と定着」「③行動を促すリーダーシップ」の3つが不可欠だと述べた。

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実際に、パーソル総合研究所が実施した調査からは、顧客が営業に期待する点と、営業側が評価している点との間に決定的な「ズレ」があることが判明。顧客ニーズの把握や課題に合わせた提案といった基本的な項目は、双方で共通認識が取れているものの、顧客がより重要視しているのは、「自分たちが気づいていない視点の提供」であった。これについて坂口氏は「3年後にお客様がどうなるか、どんなリスクがあるかを予測できる営業が今求められている」と指摘する。

成約率12%アップの鍵は“プロセス10以内”

戦略実践の土台となるのが、「営業プロセスの標準化」だ。営業プロセスを可視化し、営業がどのように行動していくべきかが明確になっていなければ、営業戦略は機能しない。プロセスができたら、トレーニングやフィードバックを行い、改善の仕組みを作っていく。営業プロセスが可視化・定着することで、教育体系の確立やSFAの設計・運営、営業の実態調査など多くの効果が得られる。

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坂口氏は、真に機能する営業プロセスを構築するポイントとして、「プロセス数を10以内に抑制すること」、「各プロセスの定義と目的を明確にすること」、そして「顧客が各プロセスで何を期待しているかを設計に組み込むこと」 の重要性を強調した。さらに、2017年の米ミラーハイマン社の調査に触れ、営業プロセスが定着している企業は、そうでない企業に比べて成約率が12%高いという結果が出ていることを紹介した。

人手不足時代の最適解は「人とAIの協働」

講演では、人とAIの役割分担も重要なテーマとして取り上げられた。坂口氏は分業が成果に寄与することを踏まえ、これからの分業は「人とAIの協働」であると強調した。人からAIへの一方的な置き換えではなく、プロセスごとに両者が連携し、バトンタッチしていくモデルが鍵となる。特にコンプライアンス対応などではAIの活用が必須になる一方で、個人情報の取り扱いなど、企業としての明確なAI導入ルールを策定する必要性も指摘された。

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また、戦略を現場で実践するためには、マネージャーのリーダーシップが欠かせないとも指摘。調査では「仕事とプライベートのバランス」「優れたリーダーシップ」「成果に対する称賛」が働く幸せに直結していることが明らかになった。

坂口氏は「Should(すべき)」と「Will(したい)」を橋渡しし、メンバーが自ら動きたくなる状態を作ることがマネージャーの役割と語る。「戦略と感情をつなぎ、行動変容を促すリーダーシップが成果を左右する」と結び、講演を締めくくった。

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