書籍『戦略ごっこ』(日経BP刊)の著者でありEBMI研究主幹の芹澤連さんをホストに、パネリストにはエーザイ コンシューマーhhc事業部ブランドマネジメント部アジャイルマーケティンググループ グループ長の樋口慎司さん、タイミーのマーケティング本部に所属する増尾速哉さんが参加し、カテゴリー成長に関して議論を深めました。
カテゴリー成長に最も寄与する要素は何か
今回のテーマとなったのは「カテゴリー成長」だ。カテゴリーの研究はそもそも非常に難しく、貴重である。というのも、自社の顧客や購買に関するデータを入手することは、事業会社であれば比較的容易だが、カテゴリーの研究となると1社だけでなく競合他社も含めたデータが何年分も必要となる。それも分析可能な質のものを収集するのは相当骨が折れる。
今回取り上げた論文では、474カテゴリー、13年分のデータを分析している。「これは非常に貴重な研究です。カテゴリー成長に関する経験的一般化という面で信頼のおける発見があるのではないかと考えています」と、芹澤さんは期待を寄せた。
本題に入り、まずは研究の概要を明らかにする問いが投げられた。本論文が突き止めた最も重要な発見をカテゴリーの「成長」と「縮小」という両面から考えてみようというものだ。本論文では、「カテゴリー浸透率」「カテゴリー購入頻度」「1回の買い物あたりの購入数量」「ボリュームあたりの価格」の4変数のうち、どれが最もカテゴリーの成長や縮小への影響が大きいのかを調べている。
「論文では浸透率が40%以下の小~中規模のカテゴリーでは、浸透率の増加がカテゴリー成長に大きく寄与するとされていました。一方、浸透率が40%以上の大規模・成熟したカテゴリーでは、ボリュームあたりの価格の上昇が成長ドライバーになるようです」(樋口さん)
「大規模カテゴリーでは価格と成長の相関性が高いということが、大きな発見でした」(増尾さん)
それを受けて芹澤さんが解説を加え、「カテゴリーサイズによって成長要因が異なるという点は興味深いですね。特にカテゴリー浸透率が20%以下の場合は明らかに浸透率が成長ドライバーになるようです。逆に、歯磨き粉のようにほぼ全人口が利用しているような高浸透のカテゴリーであれば、価格がより重要なファクターとして機能するわけです。一方、カテゴリー縮小の原因は常に浸透率の減少です」と話した。
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