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「古河気合筋肉」って何?伝統企業の電車内広告が経営ビジョンに拡張

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創業145年の伝統ある企業、古河機械金属の広告展開はユニークだ。社名を2文字変えただけの「古河気合筋肉」というフレーズで、2011年からプロモーションを展開。ステークホルダーにも広く浸透し、経営ビジョンにも反映されている。

※本記事は月刊『ブレーン』2020年9月号(7月31日発売)の特集「BtoB企業のパーパスドリブンなメッセージ開発」にも掲載されます。

「斬新すぎる」「社風と合わない」

1875年に創業したBtoB機械・素材メーカー、古河機械金属。2011年から、社名をもじった「古河気合筋肉」というコピーを基軸にした広告コミュニケーションを継続して実施している。銅山経営から事業を始めたというルーツを持ち、自他ともに保守的なイメージが強い企業が「気合」「筋肉」をうたうというギャップと語呂の良さはインパクト抜群だ。コロナ禍においても広告の掲出を続けており、特に採用エントリー層への訴求では重要な接点となっている。

2020年4月にリニューアルしたブランディングサイト。

「古河気合筋肉」の始まりは電車内のドア上ステッカー広告で、京成線や小田急線、京王線など首都圏の私鉄を中心に毎年同じシーズンに1カ月にわたり掲出してきた。

クイズ形式で2011年から展開している電車内のドア上ステッカー。

当時から担当する経営企画部 広報・IR課長の芥川良平さんによれば、このコピーを導入した当初はとにかく社名の認知拡大が課題となっていた。

「先にドア上のステッカー広告という枠が決まっていて、このスペースに適した表現を考えていきました。社名を当てるクイズ形式はどうかとなり、広告会社の方々とのブレストで出てきたのが『気合』『筋肉』というワード。そこで私がふと『古河気合筋肉』と口にしたところ、語感も社名と似ているし何より字面のインパクトが絶妙だった。社内では“斬新すぎる”“社風と合わない”と反対の声も多くありましたが、“ここまで振り切らないと広く認知は獲得できない”というトップの後押しもあり、採用されることになりました」。

今では「広告を見て採用試験を受けました」と面接で話す世代が社員として入社するケースもあるほか、取引先でも話題に上るなどすっかりおなじみのフレーズに。予算の都合上、テレビCMや新聞広告など大々的な展開はできないものの、電車内広告の出稿は地道に継続してきた。

「熱量ある社員像」への期待の広がり

潮目が変わったのは2015年。創業140年を迎え、新たな経営理念と行動指針を制定するとともに、10年先にあたる2025年度に向けたビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」が策定された。経営側から「Power(力強さ・スピード)」「Passion(熱意・情熱)」をもってビジョン達成に邁進しようという呼びかけがあり、「古河気合筋肉」が表現する方向性と見事に重なった。

「古河機械金属で働く社員の意識を変えていきたいという意志表明でもあります。伝統ある保守的な企業ですが、より熱量をもって仕事に当たっていこうという社内の機運づくりになりました。とはいえ、社内の意識を変えるのはそんなに簡単ではありません。でも社外から『気合筋肉の会社』として認知されることで、さらに情熱を持って働く社員像が期待されているという認識を持つことができたと思います」。

ちなみに古河機械金属の宮川尚久社長は2018年9月3日付の日刊産業新聞で、「古河気合筋肉」について次のように語っている。

「当社は平成元年に『古河鉱業』から今の社名に変更したが、私は、いつの日かチャンスがあれば、元に戻すことも含めて再度の社名変更をしたいと密かに思い続けてきた。しかし『気合筋肉』の想定外の好評、そして自分自身で『Power&Passion』を命名し、名刺等のロゴの毛筆まで書いてしまったので、当分の間、社名変更は難しくなった。私の『夢の社名変更』は諦めるしかないか」。

次ページ 「「金属」ゆえにメタルバンドが応援歌」へ続く