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【Webサービス改善会議②】ソーシャルメディアは「人と人のつながり」って本当?

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広告会社発のメディア事業としてサービスを開始した「キタコレ!」をめぐって、事業を運営する小林パウロ篤史さん、糸永洋三さんが、博報堂時代の先輩でもある高広伯彦さんからアドバイスを受ける形で始まった今回の鼎談。2回目は、いよいよ具体的なサービス内容に入っていきます。そこで高広さんの口から出た言葉は……。

※第1回はこちら

このサービスをもっと使ってもらうには?

高広伯彦さん

高広伯彦
コミュニケーションプランナー/広告ビジネスコンサルタント


小林パウロ篤史さん

小林パウロ篤史
MediaJUMP代表取締役共同経営責任者


糸永洋三さん

糸永洋三
MediaJUMP代表取締役共同経営責任者

小林 「キタコレ!」が8月にスタートして3カ月が経ちました。順調といえば順調なのですが、実はいま、サービスについていろいろ悩んでいます。もう少しソーシャル寄りにした方がいいのではないかとか、もっとシンプルにすべきだろうか、といったことです。考えすぎてつくり込んでしまったのかも知れません。ユーザーのログを見てみると、そんなにヘビーな使い方は誰もしていないんですよ。実際、僕ら自身もよく使うサービスとあまり使わないサービスがあります。いまサイトの改修を進めていますが、もっとシンプルに、詰め込みすぎないということを心がけています。

高広 シンプルとは、例えば?

小林 イベント情報をPC版ではいろいろな切り口で出していますが、それをやめて1本のタイムラインで出した方がいいのではないか、といったことです。複数の切り口で出さないと、このサービスの良さを分かってもらえないと思っていたからですが、みんなそこまでヒマじゃないのかも、とも考えていて……。やはり考えすぎかも知れないですね。

高広 キタコレ!を最初に見たとき、正直なところ「このサービス、うまくいかないかも」と漠然と感じてしまったんだよね。それはなぜかと考えると、今のインターネット環境下では、以前と比べてユーザーが生み出す情報の価値と量が以前と比べて格段に増えている。にもかかわらず、いまのキタコレ!のモデルは、テレビや雑誌などマスメディアのモデルに近い。ユーザーが生み出す情報は大事だという視点で情報が加工されてないと思ったわけ。

糸永 それはよくわかります。

高広 「エキスパートやプロフェッショナルの提供する情報が素晴らしい」という前提に立たないようにするというところまで戻らないといけないのかも。フェイスブックなどを見ると、ユーザー自身がイベント情報を立ち上げて、それがどんどん送られて来るよね?

小林 来ますよね。

高広 ユーザーがつくったものを取り込むという発想が弱い。すると、「ブロードキャスト」とまではいかないけど、登録した人に情報を投げ込むという、「マルチキャスト」以外の何ものでもない。
見せ方をシンプルにしようということだけど、「イベント」というカテゴリーではそもそもうまくいかないのかも知れない。コンテンツをつくるのもユーザーであり、イベントをつくるのもユーザー、それを分類するのもユーザーというところまで発想を変えるべきかも知れない。

ユーザーにコンテンツを「つくる」余地を残す

高広 最近僕は「コンテクストプランニング」が重要とよく言っている。コンテクスト(文脈・背景)は、世の中のあらゆるものをどう解釈するかという判断のもとになっている。例えば、「キタコレ!」に最近掲載された情報にどんなものがあるかな?

小林 横浜の赤レンガ倉庫でビアフェスをやっている情報が出ていましたね。

高広 ビアフェスに興味を持った人がビールに関心があるのか、赤レンガなのか、横浜なのか、ポイントは人によって違うはず。現在のソーシャルメディアによって実現した情報環境では、「ビール」「横浜」などそれぞれのカテゴリーごとに集まりやすくなったことが大きい。それが、デモグラフィックな分類であったり、プロフェッショナルが決めたカテゴリーに基づいてつくってしまうと、ユーザーの感覚と離れてしまう。

別の例を挙げると、現象学的地理学という面白い学問があって、地理的な情報、たとえば地図というのは、客観的に書かれた情報のように思うじゃない? でも、「ある地点までの地図を書いてください」と言った場合に、みんな違うものを書いてくる。それぞれ自分の経験に基づいている。例えばケーキ屋を目印に描く人は、ケーキ屋が普段から気になっているわけ。

あらゆるものは解釈によって成り立っているという前提のもとで情報提供の設計ができるかどうかが、いま重要ではないかな。これまでのマスメディア中心の情報環境では、情報の伝わり方が一方通行だったので、エキスパートの解釈だけで良かった。今は様々な人の解釈によって情報が広められる時代で、それらの情報をどう整理・編集していくかをよく考えなければならない。

「ソーシャルメディアは人と人とのつながり」とよく言われるけども、最近僕は、そこが本質ではないのではないかと感じている。実は「コンテンツとコンテンツのつながり」がソーシャルメディアを成立させているのではないかと。スライドシェアでも、ユーチューブでも、類似しているコンテンツが導かれるわけじゃない? ツイッターについても、フェイスブックでも、ツイートされている内容に対して導かれる。

もちろん人と人とがつながっているのは事実だけど、直接つながるのではなくて、コンテンツを介してつながっている。

糸永 確かに「いいね!」というのは何かに対して言っている。

高広 ブログに書いたり、ユーチューブに動画をアップしたりとか、「つくる」行為があって初めてつながるという考え方もある。僕がこれまで手がけた仕事で、東芝「20XC」や、花王「ヘルシア緑茶」の「12週間健康チャレンジ」などもそうだけど、企画の際にはどんなツイートがされるのか、どんなことがウォールに書き込まれるのかというのは結構こだわっている。それが「つながり」のもとになるから。

小林 実際にそうですよね。

高広 「人と人」と考えてしまうと、フェイスブックに「いいね!」を押したファンを集めればそれでOKとなってしまう。でも、そこで人が集まっていても、みんなつながってない、ということが起こりうる。
それに対する違和感を通して僕が考えたのは、例えばフェイスブック上で「いいね!」を押してくれた人は、「いいね!を押せばコンテンツが見られます」という動機に過ぎないわけで、ブランドに対して「いいね!」を押したわけじゃない。ここにおいてもコンテンツを通じて人はつながっているわけであって、今の時代において重要な視点だと考えている。ユーザー自身が「つくる」ことも含めて、つながりを作り出していないことにはうまくいかないと考えている。

(次回は12月8日に掲載します)

続きはこちら

「宣伝会議」12月1日発売号にも鼎談の一部を掲載しています。こちらもご覧ください。

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